【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

516話 ヴィルナvsナオン

 ハイブリッジ家騎士爵家のトーナメントが行われている。

「さあ! 次の試合に移ります! 前評判を跳ね除けて準決勝まで駒を進めました、ヴィルナ選手! 対するは、本大会のきっかけをつくりましたナオン選手です!!」

「「おおおおぉっ!!」」

 観客の歓声が上がる。

「ヴィルナさん! がんばってください!」

「応援してるぞ! ヴィルナ!」

 選手控え席のヒナやキリヤがそう声援を送る。

「はい! 全力を出します!」

 ヴィルナは気合充分だ。

「ナオン隊長! 我ら騎士団の意地を見せつけてやってください!」

「この街で我らの力を活かしていくためにも、まずは隊長のお力を存分に知らしめましょう!!」

 ナオンの部下たちがそう激励する。

「ああ。任せておいてくれ。騎士の誇りにかけて、勝利を掴んでくる!」

 彼女がそう言う。
 こちらも試合に向けて集中力は高まっているようだ。

「では、両者準備はよろしいでしょうか?  …………始めぇ!!!」

 盛り上がりを見せる観客の空気に包まれつつ、ついに戦いの火蓋が切られた。

「やあやあ! 我こそはナオン! いざ尋常に勝負せよ!」

 彼女がそう名乗りを上げる。
 懲りないな。
 一回戦ではオリビアに、二回戦ではクリスティに無視されていたのに。

「あ、これはご丁寧にありがとうございます。私はヴィルナと申します。よろしくお願いしますね」

 ヴィルナは律儀だ。
 ちゃんと挨拶を返している。

「ほう。礼儀正しいではないか。気に入ったぞ」

「いえ、そんなことはありません。当然のマナーですから」

「謙遜はいらん。さあ、早く始めるとしよう」

「そうですね。観客の皆さんも待ってくれているようですし」

 二人が構える。
 この二人は礼儀正しいし、結構相性がいいかもしれないな。

「いくぞ!  はああぁっ!」

 先に仕掛けたのはナオンだ。
 闘気による肉体の強化を済ませ、一気に間合いを詰める。
 そして、その勢いのまま剣を振り下ろす。
 しかし、それは読まれていたようで、ヴィルナにより躱されてしまった。
 そして、ヴィルナが反撃に出る。

「負けませんっ! 閃光連突!!」

 細剣による連続突きが、ナオンを襲う。

「ぐっ……。なかなかやるな……」

 彼女の鎧には小さな傷がいくつか付いている。
 ダメージはあるようだが、まだ致命的ではない。

「だが、まだまだこれからだ!!」

 ナオンが気合を入れる。
 その後も、一進一退の攻防が繰り広げられる。
 ナオンが強いのはわかっていたが、ヴィルナも奮闘している。

「やっ! はあっ!!」

「くっ。しぶとい奴め……。そろそろ決めるか」

 ナオンが闘気の出力を上げる。

「これが我が奥義! 受けてみろ!!」

 そして、彼女はそれを放った。

「亜空斬撃!!!」

 なんという威力だろうか。
 衝撃波が地を駆け抜け、土煙を巻き上げる。

「はあ、はあ、はあ……。やったか!?」

 ナオンの息が上がっている。
 相当に闘気を消耗する技だったらしい。

「あ、危ないところでした。どうにか獣化が間に合ってよかったです……」

 ヴィルナは間一髪回避に成功していたようだ。
 『銀兎族獣化』の状態になっている。

「バ、バカな……。私の奥義を避けるとは……」

 ナオンが愕然としている。

「はあっ、はあっ……! キ、キツイですね……。連続の獣化は……」

 ヴィルナはヴィルナで、息がとても上がっている。
 獣化術は、闘気や体力の消耗が激しい。
 彼女は前の試合でも獣化の技を使っていたし、もはや体力は風前の灯火か。

「両者、体力を著しく消耗しているぞーっ! 根性を見せるのは、今しかない!!」

 ネリーが叫ぶ。

「ぐぬぬぬぬ。騎士として、ここで負けるわけにはいかないのだ! 疲れが何だ!! フルパワー! 気合いだ!!!」

 ナオンが必死に自分を鼓舞する。
 足がプルプルしている。

「私だって、最後まであきらめません!! ハイブリッジ騎士爵に願いを叶えてもらうために!!」

 ヴィルナの瞳にも、闘志がみなぎっている。
 俺の褒美が目的なのか。
 いったい何をお願いされるんだろう?
 ちょっと怖いな。

「行くぞ! うおおおぉっ!!!」

「はあああぁっ!!!」

 二人がぶつかり合う。
 ここまで来たら、もはや小手先の技術など関係ない。
 ただただ、力の限りぶつかるのみだ。
 しばらくは、ただの殴り合いが続く。
 そして……。

「ぜえ、ぜえ、ぜえ……。くそっ! 限界か……」

「はぁ、はぁ、はぁ……。わ、私も、もう力が……」

 バタッ。
 二人が同時に倒れ込む。

「おおっと、これは!? 両者ダウンです!」

 ネリーがそう叫ぶ。
 彼女がカウントを進めていく。

「……10カウント! 引き分け……と言いたいところですが、この大会に引き分けの規定はありません! ハイブリッジ騎士爵様、どうしましょうか?」

 ネリーがそう聞いてくる。
 普段の彼女は俺のことを”タカシさん”と呼ぶのだが、公の場では”ハイブリッジ騎士爵様”と呼ぶ。
 少し距離を感じるので、あまり好きな呼ばれ方ではない。

「ふむ。では、単純に考えよう。先に立ち上がった方を勝ちとする」

 俺はそう言う。

「承知しました! さあ、ヴィルナ選手とナオン選手、今のお言葉を聞いておられましたでしょうか!? 先に立ち上がり、”私の勝ちだもんねー”と言った方が勝ちとなります!!」

 ネリーがそう言う。
 条件が勝手に付け加えられているな?
 まあいいけど。

「うう……」

「ぐぬぬ……」

 ヴィルナとナオンが、それぞれ最後の力を振り絞って立ち上がろうとしている。
 両者、片膝をついた状態まで体を起こしている。
 そして……。

「ずあああぁっ!!!」

 ナオンが大きな叫び声を上げ、立ち上がった。
 ヴィルナはまだ立ち上がれていない。

「わ……」

 ナオンが口を開く。
 これは彼女の勝ちで決まったか。

「私の勝ちだもんn……」

 彼女がそこまで言ったところで、言葉は途切れた。
 ふらっ。
 バターン!
 彼女がステージ上に倒れ込んだ。
 全ての力を使い尽くして、気絶してしまったようだ。
 そうこうしているうちに、ヴィルナが何とか立ち上がった。

「わ、私の勝ちだもんねー! です!!」

 彼女が大声でそう宣言する。

「そこまで! 勝者、ヴィルナ選手!!!」

「「「うおおおおおっ!!!!」」」

 会場中から歓声が巻き起こる。
 彼女が疲れ切った様子で控え席にまで戻ってくる。

「ふっ。がんばったな。ヴィルナ」

「はい……。相手の体力がギリギリでなくなって、助かりました。それに、キリヤくんの応援も力になりましたよ」

 ヴィルナがキリヤとそんな会話をしている。
 一方の気絶したナオンには、サリエが治療魔法を掛けてくれている。
 彼女も相当に強力な戦闘能力を持つし、根性がある。
 性格も悪くはなさそうだ。
 今後の活躍に期待できるな。

 さあ。
 次が決勝だ。
 はたして願いを叶える権利を得るのは、どちらになるだろうか。
 見守ることにしよう。

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