【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

506話 ニムvsヒナ

 ハイブリッジ家のトーナメントが行われている。

「続きまして第二試合! ハイブリッジ騎士爵家第四夫人内定のニム様対、ハイブリッジ家警備兵のヒナ選手です!」

「「わぁ~!!」」

 観客が大盛り上がりだ。
 第一試合に続き、ミリオンズの試合が見れるわけだからな。
 二人がステージに上がる。

「それでは試合開始!」

「胸をお借りします! ニムさん!」

 ヒナが元気よくそう挨拶をする。
 年齢はヒナの方が上なのだが、立場や戦闘能力はニムの方が上だ。
 しっかりと敬語を使っている。
 ヒナは村出身の元気っ子で礼儀はやや適当だが、敬おうという心構えは持っている。
 キリヤやクリスティあたりの礼儀とは比べるべくもない。

「え、遠慮なく来てください。わたしは兎を狩るのに全力を出す愚かな獅子とは違います。手加減してあげましょう」

 ニムはなかなかの上から目線だ。
 まあ、実際に立場も戦闘能力も上なのでこれで正しいのだが。

「いきます! はあぁ! 裂空脚!!」

 ヒナの回し蹴りがニムを襲う。
 彼女は武闘家だ。
 本格的に鍛錬していたわけではなく、あくまで村で大人たちに軽く教わっていた程度だそうだが。
 最近では、アイリスやクリスティに混ざって鍛錬していることもある。
 徐々に強くなってきてはいる。
 しかし……

「剛拳流、動かざること山の如し」

 ニムが闘気を開放し、防御を固める。
 その状態でヒナの攻撃を完璧に受けきる。

「まだまだ!」

 ヒナは諦めず、さらに攻撃を繰り出していく。

「む、無駄です。その程度の攻撃ではわたしの防御は破れません」

 ニムがそう言う。
 彼女はミリオンズ内でも随一の防御力を持つ。
 土魔法のロックアーマーの強度は折り紙付きだ。
 それがなくとも、今回のように闘気を纏えば破格の肉体強度となる。
 生半可な攻撃では、彼女にダメージを与えることはできない。

「せいっ!!」

 ニムがどっしりとした構えから、正拳を放つ。

「ぐっ!」

 ヒナはかろうじてガードしたようだが、ダメージはかなりのものだろう。

「とっさに闘気で防御しましたか。反応速度はなかなかですね」

「もちろんです。わたしの長所は索敵能力と攻撃察知能力……。警備兵として、これらだけは自信を持っています!」

 ヒナがそう言う。
 純粋な戦闘能力ではキリヤやクリスティに一歩劣る彼女だが、索敵能力や攻撃察知能力では負けていないのだ。

「い、いいでしょう。次は回避能力を見てあげます」

 ニムが呪文の詠唱を始める。

「母なる大地の精霊よ。我が敵を貫き給え……」

 地面から岩弾が生成され、空中に浮かんでいく。
 上空20メートルぐらいにまばらに浮いている。

「ロック・レイン!」

 ニムが最後の文言を口にすると同時に、それらの岩弾がヒナに向けて射出された。

「天眼!! はぁっ!!」

 ヒナが必死に岩弾をかわしていく。

「は、速い……! あれほどの土魔法は初めて見るわ!」

「うおおぉ! しかし、かわしている方もすげぇぞ!!」

 観客たちが騒ぎ出す。
 確かに、ヒナの回避能力はかなりのものだ。
 身のこなしに優れているのもあるだろうが、一番の要因はあの”天眼”だろうな。
 上空から俯瞰するような視界により、空間を把握する特殊な技術だ。
 そんなヒナが岩弾の回避に専念している、その時。

「ブリリアント・パンク!!!」

 ニムがロックアーマーを纏った状態で、ヒナに向けて高速でタックルを仕掛けた。
 ミリオンズ内でもトップクラスの身体能力を持つニムから繰り出されるタックルは驚異的だ。
 アヴァロン迷宮にて千に大ダメージを与えたこともある。

「きゃああぁ!」

 ヒナはなんとか避けようとしたが、間に合わなかった。
 そのままステージ上に弾き飛ばされる。
 起き上がってこない。

「そこまで! 勝者ニム様!!」

 実況のネリーが勝敗を宣言する。

「おっしゃあぁ! 賭けた方が勝ったぜ!!」

「ニム様素敵ぃー! 抱いて!」

 観客がそう歓声が飛ぶ。
 ニムにも女性ファンがついているな?
 確かに、戦闘時の彼女はキリッとしていてカッコいい。
 普段のやや気弱な印象とは対照的だ。

 ヒナはまだ場外で倒れ込んでいる。
 そこに、1人の少年が近づいていく。

「ヒナ、お疲れ様」

 そう言って手を差し出すのは、文官のトリスタだ。
 ヒナと同じ村の出身である。

「うう……。負けちゃったよ、トリスタ……」

 ヒナが彼の手を取りながらそう言う。
 ションボリしている様子だ。

「仕方ないよ。ニムさんに勝つのは厳しすぎる。一回戦で当たったのは、抽選の運が悪かったね」

 トリスタがそう言う。
 確かに、万全な状態同士であればニムに勝てる者などこの場にほとんどいないだろう。
 しかし、多少の損耗をさせられる者であれば何人かいる。
 試合の組み合わせ次第では、ニムがいずれ負けることもあり得る。

「まあ、それもそうだけどさ……。あーあ……。優勝して、賞金をもらおうと思っていたのになあ……」

「賞金? ハイブリッジ騎士爵からは、十分な給金をもらっているだろ?」

「んーん……。トリスタに本を買ってあげようと思ってね……」

 ヒナは、優勝賞金を自分じゃなくてトリスタのために使うつもりだったのか。
 健気なことだ。

「ヒナ……。ありがとう。気持ちだけでもありがたいよ」

 トリスタがそう返す。
 うん。
 なんだかずいぶんといい雰囲気だな?
 ここ最近で、多少の進展があったようだ。
 配下の者たちが幸せな関係を築きつつあるのはいいことだ。
 しかし、彼らは1つだけ忘れていることがある。
 それは……。

「おおーっと! 敗北したヒナ選手、謎の少年といい雰囲気だーっ!!」

 実況のネリーがそう叫ぶ。
 そう。
 今は、トーナメントの進行中なのである。
 試合終了後にこのやり取りをしていたため、この場にいる者の多くの視線が彼女たちに向けれている。

「ええと……。彼は、ハイブリッジ騎士爵家の配下であるトリスタさんですね。文官として働いています」

「ふふん。ヒナちゃんとは同郷だし、お似合いの夫婦になるわね」

 解説のサリエとユナがそう言う。
 試合内容じゃなくて色恋沙汰の解説をしてどうする。
 だがまあ、せっかくだし俺も祝福の言葉を言っておくか。

「結婚ならいつでもするがいい。この俺、タカシ=ハイブリッジ騎士爵の名において祝福させてもらおう。結婚費用も本代とやらも、不足しているのであれば相談に乗る」

 俺はビシッとそう宣言する。

「ひゅーっ! 領主様のお墨付きかよ! おめでとさん!!」

「お幸せになーっ!」

 観客席からそう声が上がる。

「ありがとう。ハイブリッジ騎士爵様」

 トリスタがそう言って頭を下げる。

「うぅ……恥ずかしいよぉ……」

「ほら、行くよ」

 顔を赤くした2人が、ステージ裏へと撤収していった。

「えー、なんとも微笑ましい光景が繰り広げられましたが、次の試合に移ります。次は……」

 さて、次はどんな熱戦が繰り広げられるかな?

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