【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

476話 風魔法と治療魔法で移動速度アップ!

 ルクアージュを出発して1週間ほどが経過した。
 馬車に揺られつつ、のんびりと進んでいる。
 たまにゴブリンの近くを通るが、ユナやリーゼロッテにより撃破されている。

 一度だけリトルベアと遭遇したが、アイリスとニムにより簡単に撃破された。
 今の俺たちなら、ゴブリンキングやミドルベアですら一蹴できる。
 こんなただの街道でピンチに陥ることはまずない。

「ふあぁ…………。平和に馬車に揺られているのもいいが、少し飽きてきたなあ……」

 俺はそうつぶやく。
 見知らぬ土地を馬車で移動するのは、なかなか興味深い体験だ。
 この異世界を十分に満喫させてもらっている。
 とはいえ、さすがに一週間ずっと馬車の上では飽きる。

「そうですね。馬車の上では、できる筋トレも限られていますし……」

 ミティがそうつぶやく。
 彼女は暇つぶしとして筋トレをときどきしている。

「今のペースだと、あと2週間ぐらいかなー。先は長いね」

 アイリスがそう言う。
 この世界は食文化や法体制は整っているのだが、交通機関だけはなぜか発展していない。
 馬車や徒歩に限られる。
 街から街への移動に時間がかかってしまうのが悩みどころだ。

 今さらだが、俺の転移魔法陣を使えばラーグの街への移動時間を短縮できただろうな。
 ルクアージュからラーグの街まで、今の俺のMPと魔力なら3~4人ぐらいは同時に転移できるはずだ。
 ミリオンズの構成員はティーナとドラちゃんを入れて12人なので、4~6回往復ほどすれば転移魔法のみで全員がラーグの街に帰還できる。
 MPの自然回復に2日かかるとしても、最大で12日程度あれば全員が帰還できる計算になる。

「へへっ。暇ですかい? なら、あっしが一発芸をしやしょうか?」

 隣の馬車に乗っているトミーがそう言う。

「そんなのいらないわよ!」

「……ボクも興味ない……」

「ハナちゃんはゆっくりするだけで幸せだよ~」

 ツキ、ユキ、ハナがそう言う。
 俺が転移魔法陣で帰還する手段を取らなかったのは、彼らの存在が大きい。
 転移魔法陣のことを彼らに話すのは、まだ時期尚早だと判断したのだ。

 俺たちミリオンズだけがこっそりと転移魔法陣で帰還し、彼らには自前の馬車でラーグの街に向かってもらうという選択肢もあった。
 しかしその場合、彼らの気が途中で変わってしまうリスクがある。
 せっかく有能な人材をラーグの街に招待することに成功したのだから、俺が直々に案内して逃さないようにすることに意味はあるだろう。

「ふむ。速度向上でござるか。拙者に考えがある。ここは任されよ」

 蓮華がそう言って、馬車の後方に立つ。
 何をする気だ?
 彼女が魔力を練り始める。

「風の精霊よ。拙者の呼びかけに応じて、突風を起こし給え。神風!」

 ブオンッ!
 馬車の後方から、強烈な突風が吹く。

「おお?」

 馬車の速度が気持ち程度速くなった気がする。
 追い風による速度アップだ。

「なるほど……。風魔法にはこういう使い方もありましたか。思いつきませんでした」

 ミティがそう言う。
 彼女の風魔法も、レベル3にまでは伸ばしている。
 これまでの旅でこの技を使っていれば、移動時間を短縮できていたかもしれない。

「……弾けろ。エアバースト!」

 ミティが発動したのは最初級の風魔法だ。
 風魔法レベル2の”エアリアルスラッシュ”は斬撃系の攻撃魔法だし、レベル3の”ジェットストーム”は竜巻状に風を発生させる魔法である。
 馬車に追い風を起こす目的は達成できない。
 レベル1のエアバーストを選択したミティの判断は間違っていない。

「おお~! いいねー」

「は、速いですね」

 モニカとニムがそう言う。
 馬車の速度アップに、彼女たちもご満悦だ。
 しかし、しばらくしてまた馬車の速度はもとに戻った。

「風が止んだでござる。もう一度……」

「ちょっと待って、蓮華さん。スピードダウンはそれだけが理由じゃないよ」

 アイリスがそう言う。

「ふむ。いったいどうしたでござる」

「見てください。馬が少し疲弊気味のようです。3匹に増やしたとはいえ、この人数は少し厳しいようですね」

 サリエがそう言う。
 この馬車の乗車人数は15人だ。
 俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニム。
 ユナ、マリア、サリエ、リーゼロッテ、蓮華。
 ティーナとドラちゃん。
 そして、ユキ、ツキ、ハナである。

 それに対して、馬車を引く馬は3頭。
 確かに、やや厳しいか。
 体力に自信のありそうな馬を選定していたのだが……。

「ピピッ! 当機の重量が負担になっていると推測します」

 ティーナが無機質な声でそう言う。
 そうだ。
 彼女の重量を忘れていた。

 彼女の外見は10歳前後の少女である。
 しかし、中身は高性能ゴーレムであり、超重量を持つ。
 おそらく、200キロは超えているだろう。
 今の乗車人数は15人だが、彼女の超重量を考慮すると実質的にはもう少し多くなる。
 これでは、さしもの体力自慢の馬とはいえ厳しい。

「ムリをさせすぎたか。休憩しよう」

 あまりムチャをさせすぎて馬が潰れたら元も子もない。

「いえ、だいじょうぶです。私とアイリスさんにお任せを」

 サリエがそう言って、アイリスとともに魔法の詠唱を開始する。

「「神の御業にてかの者たちを癒やし給え。エリアヒール」」

 なぜ治療魔法を?
 俺たちにケガ人などいないが。
 そう思ったが——。

「ふふん。なるほど、馬を回復させたわけね」

 ユナがそう言う。
 サリエとアイリスの治療魔法の光が、3頭の馬を包んでいく。
 そして、馬は持ち直して移動速度が上がった。
 治療魔法には、外傷や病を治療する効果の他、体力を回復させる効果もあるのだ。

「馬の健康のためにも、定期的に治療魔法を掛けてあげるのはありだな」

「そうですわね。治療魔法はわたくしも使えますし、交代で致しましょう」

 リーゼロッテがそう言う。
 ミリオンズには、治療魔法の使い手が多い。
 最も腕が立つのは治療魔法レベル5のサリエだが、治療魔法レベル4の俺とアイリスも相当に上位の腕を持つ。
 また、治療魔法レベル3のリーゼロッテとマリアも、一般的には十分な腕前だ。

「おう。俺も交代で参加するぞ。治療魔法と言えば、マリアもだな」

「そうだね! でも、マリアは他にちょっと試してみたいことがあるんだ! やってみてもいいかな?」

「ん? 危ないことじゃなければ、気軽にやってみるといい。何をする気なんだ?」

 マリアのやってみたいこと、か。
 この流れで言うということは、もちろん治療魔法ではないだろう。
 どんなことをしてくれるのか、期待して見守ることにしよう。

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