【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

475話 遠距離攻撃

 ラーグの街に向けて移動中だ。
 街道の進行方向から少し外れた森の中に、ゴブリンを2匹だけ見つけた。
 あちらはまだこっちに気づいていない。

「ふふん。いくわよ」

 ユナが揺れる馬車の上で弓を構える。

「え? この状態で弓を撃つつもりなの?」

「ムリだよ~。揺れているし、まだ遠いし~」

「……無謀だと思う……」

 ”雪月花”のツキ、ハナ、ユキがそう言う。
 確かに、常人であればこのような不安定な足場では狙いが定まらないだろう。
 しかし、ユナならきっとやってくれるはずだ。

「…………」

 ユナがキリッとした表情で狙いを定めている。
 不安定な足場の上でも、見事に体のバランスを取って立っている。
 見事だ。

「…………せいっ!」

 ユナが弓を射る。
 矢は吸い込まれるようにゴブリンへ向かっていく。

「ぎっ!?」

 弓は見事にゴブリンの脳天に直撃した。
 まさに、針の穴を通すようなコントロールである。

「ま、まさか当てるなんて! しかも頭を狙い撃ち!?」

「とんでもない腕だね~。すごおい」

「……ハイブリッジ騎士爵ばかり注目していたけど……。パーティメンバーもヤバすぎる……」

 ツキ、ハナ、ユキが驚きに目を見開く。

 ユナはベテラン冒険者だ。
 冒険者歴がミリオンズ内で最も長い。

 彼女は少し前にBランクに昇格し、特別表彰者となった。
 ミリオンズ内でのギルド貢献値は、高い順に俺、アイリス、ミティ、モニカ、そしてユナとなっている。
 単純に考えて、総合力で5位を誇ると言っていいだろう。
 
 抜群の弓の腕に加えて、火魔法レベル5、テイム術レベル5、獣化術レベル4などのスキルを持つ。
 ファイアードラゴンと一時的に融合する『豪炎爆華』という独自の技は驚異的だ。
 ラスターレイン伯爵家当主のリールバッハを一蹴したこともある。

「わたくしもいきますわよ」

 お次はリーゼロッテだ。
 彼女が水魔法の詠唱を開始する。

「水魔法? この距離では、討伐は難しいでしょ」

 ツキがそう言う。
 水魔法は、火魔法に比べるとやや攻撃力に欠ける魔法である。
 かなりの腕がない限り、たかがゴブリンとはいえ離れたところから一撃で討伐するのは難しい。

「でもでも~。ハイブリッジさんのお仲間だし、何かあるかも~」

「……しっ。黙って見ていよう……」

 ハナとユキがそうつぶやく。
 そんな彼女たちの声には惑わされず、リーゼロッテは集中して水魔法の詠唱を進めている。

「……慈しむ水の精霊よ。我が求めに応じ、水の一閃を走らせよ。レインレーザー!!!」

 ピュンッ。
 水魔法の一閃がゴブリンを襲う。

「ぎいっ!?」

 ゴブリンは脳天を貫かれ、絶命した。
 見事な威力だ。

「こ、これはリカルロイゼさんたちが使っていた水魔法ですかい?」

「あれよりも、さらに威力は上のようだが……」

 トミーたちが驚きの声を上げる。
 アヴァロン迷宮の最奥部にて、俺たちミリオンズとトミーたちは、ラスターレイン伯爵家と戦ったことがある。
 ファイアードラゴン戦後で俺たちが消耗していたことに加え、大雨が降りしきる環境下という悪条件が重なり、惨敗してしまった。

 そのときにリカルロイゼが得意げに連発していたのが”レインレーザー”という魔法である。
 かなりの連射性能と威力に、大苦戦を強いられた。
 しかし、今のリーゼロッテのレインレーザーの威力は当時のリカルロイゼのそれよりも上である。

「わたくしも日々成長しているのです。もうお兄様たちに負けることはありませんわ。まあ、そもそも戦う機会もないでしょうが……」

 リーゼロッテがそう言う。
 現時点で彼女の力量はリカルロイゼやリルクヴィストを明確に超えているだろう。
 さすがに当主であるリールバッハと比べてどうかは微妙なところだが。
 彼は武闘も修めているし、まだまだ実力の底が見えない。

 とはいえ、リーゼロッテが今後も順調にレベルを上げてスキルを強化していけば、いずれはリールバッハすら抜くことができるだろう。
 彼女の今後の活躍にも期待したい。

「これは……。私たちの実力を見せてパーティに潜り込む作戦を見直さなければならないわね……」

「パーティメンバーが強すぎるよ~。ハナちゃん自信喪失~」

「……ボクたちの実力ではまだ厳しい……」

 ツキ、ハナ、ユキがそう言う。
 彼女たちはCランク冒険者であり、実力は確かだ。
 しかし、ステータス操作というチートの恩恵を受けている俺たちミリオンズの前では霞んでしまう。

 可能であれば、彼女たちにも加護を付与してあげたいところではある。
 しかし、いかんせん忠義度がまだ20台である。
 慰労会のときよりも微増はしているので、今後も付き合っていけば少しずつ増えていくだろう。

「ミリオンズに加入してもらうかはともかくとして、以前伝えた通りラーグの街は人手不足だ。新たに開発している西の森や鉱山がある。雪月花やトミーたちの力は活用させてもらうぞ。報酬もちゃんと出す」

 俺はそう声を掛ける。
 俺に直接的に取り入る作戦が失敗したと判断されて、他の街に行かれてしまってはラーグの街にとって損失となる。
 彼女たちをそうやすやすと手放すわけにはいかない。

 とはいえ、俺には他にもやることが多々あるし、雪月花にばかりは構っていられない。
 街の内政、マリアやサリエの親御さんへの結婚のあいさつなどで忙しいのだ。
 雪月花とはムリのない範囲で接しつつ、忠義度が少しずつでも稼げていければラッキーぐらいに思っておこう。

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