【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

449話 雪月花の陰謀

 海水浴場でのんびりしているところだ。
 俺は心地よくまどろんでいる。
 そこへーー。

「タカシさん。ちょっといいですか?」

「ん? だれだ?」

 あまり聞き覚えのない声だ。
 ミリオンズで、俺のことをさん付けで呼ぶのは3人。
 ニム、サリエ、リーゼロッテだ。
 しかし、この3人の声色ではない。

 ちなみに、ミティは”タカシ様”。
 アイリス、モニカ、ユナは”タカシ”。
 マリアは”タカシお兄ちゃん”。
 蓮華は”たかし殿”。
 ティーナは”マスター”と呼ぶ。

 俺は目を開け、体を起こす。
 俺の側に、美少女が3人立っていた。

「ええっと。お前たちは、確か”雪月花”の3人だな」

 有望な若手冒険者パーティである。
 Cランクパーティだったか。
 トミーたちと同じで、なかなかの高ランクだ。

 ただし、彼女たちは若い女性だけの3人パーティでCランク認定を得ている。
 希少性や将来への期待値は上だろう。
 見目も良く、一般市民からも一定の人気があるらしい。

「そうですね。私は次女のツキです!」

「長女のハナちゃんだよ~」

「ボクは三女のユキ……」

 3人がそう自己紹介する。
 年が若い順に、”雪・月・花”だ。
 逆のほうが覚えやすかったのに。

「それで、何か用か?」

「えへへ。タカシさんに、ちょっとしたプレゼントがあるんです。あっちの岩陰にまで来てくれますか?」

 ツキがそう言う。
 なんだか、今までの彼女と印象が違う気がする。
 もっと勝ち気そうな雰囲気だったが。
 今はずいぶんと愛想がいい。

 そういえば、俺がさっきまどろんでいるときに、何やら不穏なことをつぶやいていた気がする。
 何か企んでいるのかもしれない。

「付いていくぐらいはいいが……。ユナ、いっしょに来るか?」

 俺は騎士爵を持つ貴族である。
 さらに、アヴァロン迷宮では金銀財宝を手に入れた。
 俺を暗殺しようとする者がいてもおかしくない。
 高ランク冒険者3人に囲まれて1人で岩陰まで付いていくのは避けたい。

「ふふん。別に、行くのはいいけど……」

「まあまあ~。ユナ先輩はここで待っていてよ~。後で冒険譚を聞かせて~」

 ハナがそう言って、ユナを押し止める。
 ”雪月花”の冒険者歴もそれなりに長いはずだが、ユナのほうが若干先輩のようだ。
 彼女は”赤き大牙”の一員として、昔から活動していたからな。

「ファイアードラゴンをテイムしたと聞いてる……。とんでもなくすごいこと……。尊敬してる……」

 ユキがおだてる。

「そ、そう? なら、私はここで待っているわ」

 ユナがあっさりと陥落した。
 彼女はしっかり者のイメージがあったが、おだてには弱いようだ。

 今この場にいるのは、ユナ以外に3人。
 サリエ、リーゼロッテ、千だ。

 サリエとリーゼロッテは魔法使いなので、いざというときの護衛としてはやや心もとない。
 そもそも、彼女たちはまだまどろみの中だし。
 そして千は、まだ心の底が見えないので気を許すには早い。

 ここは、俺がしっかりして自分の身を守る必要がある。
 まずは、ビシッと言ってやろう。

「雪月花よ。何を企んでいるか知らんが、この俺に小細工は……」

 通用しない。
 そう言おうと思ったがーー。

「えへへ。そう言わずに、付いてきてくださいよ!」

 むにゅんっ。
 俺の右腕を柔らかい感触が襲う。

「ハナちゃんからもとっても素敵なプレゼントがあるよ~」

 むにゅんっ。
 俺の左腕を柔らかい感触が襲う。

「……ん。おとなしく付いてきてほしい」

 むにゅんっ。
 ……とはならなかった。
 ユキの胸が俺の体の正面に押し付けられているが、ツキとハナの胸の感触に比べるとおとなしい。
 彼女の胸はずいぶんと慎ましいのだ。
 まあ、これはこれで悪くはないが。

 いや、こんなことを考えている場合ではない。
 思わぬ色仕掛けにぐらついたが、ここは毅然と対応しないと。

「でへへ。じゃあ、付いていっちゃおうかな~」

 俺の口が勝手に動いた。
 なぜだ。
 ビシッと言うつもりだったのに。

 まさか、千の闇魔法か!?
 この土壇場で俺の思考を誘導して、雪月花とともに何かを企んでいる……?

 ギロッ!
 俺は千をにらむ。

「……? どうかしましたか?」

 千がとぼけた顔をして首をかしげる。
 いや、とぼけているのではなくて本当に心当たりがないのか?

「ああ、いや。何でもない」

「それにしても、タカシさんはずいぶんとモテモテですねえ。楽しまれるのは結構ですが、わたくしの体を汚した件もお忘れなく……」

 千からそう釘を刺されてしまった。
 マズいぞ。
 千の件も雪月花の件も、他人や魔法がどうこうではなく、単純に俺の女好きが招いた結果のようだ。

 俺が自分でどうにかせねばなるまい。
 俺は気を引き締める。

「こっちです!」

 むにゅんっ。
 俺の右腕に柔らかい感触が走る。

「足元に気をつけて~」

 むにゅんっ。
 俺の左腕に柔らかい感触が走る。

「……ん。今さら付いてこないとは言わないでね」

 むにゅ……?
 俺の正面の体に、慎ましい感触が走る。

 右腕にツキ。
 左腕にハナ。
 正面にユキ。
 俺は完全に包囲された状態で、岩陰へと連行されていく。

「でへへ……」

 果たして俺に待ち受ける運命はーー。
 何やら不穏な空気が漂い始めていた。

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