【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

430話 アクア・マスター/ゼログラビティ

 ミリオンズとラスターレイン伯爵家との戦闘中である。
 一度はリールバッハたち5人を戦闘不能に追い込んだが、センの中級の治療魔法により回復されてしまった。
 サリエの最上級治療魔法とは異なり完全回復ではないのが救いか。

 センを優先的に撃破したいところだが、リールバッハたちの水魔法に邪魔されて簡単には近づけない。
 うまく分断するか、遠距離攻撃か。
 何か対策を立てて戦う必要がある。
 俺がそんなことを考えているとき。

「みなさん。わたくしにお任せを」

 リーゼロッテが前に出る。

「ふん。一族の落ちこぼれであるリーゼロッテが、私たちの水魔法に張り合うつもりですか? なめられたものですね」

「一族の責務を忘れたやつが、俺たちに勝てるか!」

 リカルロイゼとリルクヴィストがそう言う。
 確かに、リーゼロッテ自身も以前そのようなことを言っていた。
 水魔法の名門であるラスターレイン伯爵家において、彼女はやや落ちこぼれ気味だと。

 しかし、俺の『ステータス操作』の恩恵を受けた今の彼女は、もはや落ちこぼれではないだろう。
 水魔法はレベル5に達し、MP強化と魔力強化もレベル4にまで伸ばしている。

「……慈しむ水の精霊よ。我が元に集い給え。悠久なる流れ。降りしきる恵みよ。アクア・マスター」

 リーゼロッテが水魔法を発動させる。
 しかし、彼女から水や氷が放たれる様子はない。
 これは……?

 シュワワワワ……。
 リーゼロッテのもとに、魔力が集まってきている。
 リールバッハたちが放とうとしていた水魔法だ。

「なっ!? 私の水魔法が……」

 シャルレーヌが驚愕に目を見開く。

「あ、ありえん。我らの水魔法の制御を奪ったとでも言うのか!?」

 リールバッハがそう叫ぶ。
 相手の魔法の制御を奪う魔法か。
 相当な脅威だな。

「まあ。リーゼロッテさんも、成長しているのですね。母として喜ばしい限りです」

「母さん。そんなことを言ってる場合じゃねえぜ」

 マルセラののんきな言葉を受けて、リルクヴィストがそう言う。

「うむ。リーゼロッテを放置してはおけぬ。いくぞリルクヴィストよ。我らの武闘でリーゼロッテを止めるのだ」

 リールバッハとリルクヴィストがこちらに向かってこようとしている。
 ラスターレイン伯爵家の戦闘は水魔法がメインだ。
 特に、マルセラ、リカルロイゼ、シャルレーヌは水魔法専門に近い。
 例外は、武闘もできるリールバッハとリルクヴィストだけだ。

 俺は彼らを迎え撃つため、臨戦態勢を取る。
 しかし、彼らが駆け出したその瞬間。

「……万物を引きよせる雄大なる力よ。今ひととき、その力から彼らを開放したまえ。ゼログラビティ」

 マリアだ。
 マリアから中級の重力魔法が発動される。
 先ほど取得したばかりだが、もう使いこなしているのか。

 ふわり。
 駆け出した直後のリールバッハとリルクヴィストの体が宙に浮く。

「むっ! おおっ!?」

「な、なんだってんだ!?」

 彼らは混乱している様子だ。
 さらに、マルセラ、リカルロイゼ、シャルレーヌ、センの体も浮いている。

「えへへ。これがマリアの新しい魔法だよ!」

「いいぞ。よくやった、マリア」

 すばらしい魔法だ。
 直接的な攻撃力こそないものの、次の攻撃に繋げることができる。
 無重力下に放り出されたリールバッハたちには、抵抗の術がない。

 降りることも、上に移動することもできない。
 周囲に掴まるものはなく、その場から移動することすらできない。
 できるのは、手足をバタバタと動かす程度だ。

 魔法が使えれば、反動で動くこともできただろうが……。
 今はリーゼロッテが彼らの水魔法の制御を奪っている。
 ラスターレイン伯爵家は、完全に抵抗の術をなくしたと言っていい。

 唯一の打開策が残っているとすれば、センの何らかの魔法だ。
 俺は彼女を注視する。

 ……あ。
 無重力でスカートがめくれてパンツ見えそう……。
 いや、こんなことを考えている場合じゃない。

「さあ、降参するなら今のうちだぞ。セン」

 俺は気を取り直して、そう言う。
 このシリアスな局面でパンツに釣られている場合ではないのだ。

「くっ。なんというムチャクチャな……。わたくしの想定外のことが多すぎです……!」

 センが悔しそうにそう言う。
 そして、彼女が言葉を続ける。

「かくなる上は、命を削る奥の手を……」

 彼女が何かをしようとしている。
 本当に多芸だな。
 まだ何かあるのか。

 また回復されたり、転移で逃げられたりするのも厄介だ。
 ここはしっかり、無力化しておかないとな。
 俺が攻撃を加える準備をしているときーー。

「……慈しむ水の精霊よ。我が敵に鉄槌を下さん。罪ありし者を貫け。ジャッジメント・レイン!」

 リーゼロッテが水魔法を発動させる。
 事前に詠唱を進めていたようだな。

 ズババババッ!
 空から降り注ぐ無数の雨が、リールバッハたちを貫いていく。
 レインレーザーの連射版のようなイメージの魔法だ。
 
「ぐ……。が……!」

「う……。ごほっ!」

 リールバッハやリルクヴィストたちがダメージを負っていく。
 容赦ねえな。

「くっ! 肉親を手に掛けるとは……。一族の誇りを失いましたか! リーゼロッテ!」

 リカルロイゼがそう叫ぶ。
 これは戦いだ。
 ある程度のダメージは覚悟してもらうしかない。
 もちろん死ぬほどのダメージは与えていないし、リーゼロッテもそのあたりは考えているはずだ。

 俺は彼女の顔を見る。
 ……ん?
 いや、これはどうだろう?

 何やら、攻撃的な顔をしている。
 いつものおっとりした表情ではない。
 
「一族、一族、愚かな一族……」

 リーゼロッテが暗めの声色でそう言う。
 様子がおかしい。
 いったいどうしたんだ?

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