【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

426話 過剰治療と不死鳥

 ミリオンズとラスターレイン伯爵家の第2ラウンドが始まろうとしている。
 みんなステータス操作による新しいスキルなどで大幅に強くなっているし、今度こそ負けないはずだ。
 リーゼロッテの最上級水魔法により、雨も上がっていることだしな。

 ミリオンズ側は、10人。
 俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニム。
 ユナ、マリア、サリエ、リーゼロッテ、そして蓮華である。

 ラスターレイン伯爵家側は、6人。
 リールバッハ、マルセラ。
 リカルロイゼ、リルクヴィスト、シャルレーヌ。
 そして、謎の女センである。

 俺はファイアードラゴンをかばうように、ラスターレイン伯爵家と対峙する。
 少し遅れて、ミティやアイリスたちもやってきた。

「よし……。まずは、サリエの治療魔法でドラちゃんを治してやってくれないか?」

 ドラちゃんは、息も絶え絶えな様子である。

「承知しました」

 サリエがうなずき、ドラちゃんの前に立つ。

「ふん。人の身で、竜種の治療だと? バカなことを……」

「その通りですね。魔力が足りるはずがありません。MP切れで倒れるのがオチですね」

 リールバッハとリカルロイゼがそう言う。
 しかしーー。

「我らが創造主よ。彼の者にひと欠片の恩寵を与え給え。癒やしの光。全てを包み込む聖なる力よ。オールヒール」

 サリエにより、最上級の治療魔法が発動される。
 治療の光がドラちゃんを覆う。

「す、すごぉい! 元気100倍だよっ!」

 あっという間にドラちゃんが全快する。
 治療魔法レベル5の強力さは格別だな。

 これほど強いのであれば、俺ももっと早く取っておいてもよかったかもしれない。
 いや、それは今だから思えることか。
 後ろ盾のない状態でこれほどの魔法が使えるようになれば、いろいろと不自由な思いもしただろう。

 それに、そもそも俺の精神力では持て余した可能性も高い。
 サリエが持て余さないように、俺たちでフォローしていかないとな。

「バ、バカな……。これほどの治療魔法を、サリエさんが……?」

 マルセラが驚愕の表情を浮かべる。

「おかしいですっ! ずっと病床に伏せっておられたはずなのに。治療魔法を研鑽する時間などなかったはず……。中級ぐらいまでなら、才能ということで何とか納得していましたが……」

 どうやら、マルセラやシャルレーヌはサリエと旧知の仲だったようだ。
 まあ、リーゼロッテとサリエも以前から知り合いだったしな。
 貴族同士、会う機会はあったのだろう。

 ダンジョン攻略前の選別試験では、サリエは中級の治療魔法であるエリアヒールを披露していた。
 中級の治療魔法を使えることは、ラスターレイン伯爵家にも知られている。
 しかしもちろん、最上級の治療魔法を使えることを知るわけがない。
 ついさっき強化したばかりだからな。

「これほどの治療魔法は、王宮のお抱えにもいない……。小娘、いったいどうやってこれほどの治療魔法を手に入れた!?」

 リールバッハがそう叫ぶ。
 彼はサザリアナ王国の伯爵家の当主だ。
 上級の治療魔法士にも、顔が利くのだろう。
 しかし、さすがにこれほどの治療魔法は見たことがなかったと。

「治療魔法? いいえ、違います。これは……超治療魔法です!」

 サリエがドヤ顔でそう言う。
 いや、治療魔法で合っていると思うが……。
 まあ、普段おしとやかな彼女がめずらしくノリノリな様子だし、そっとしておくか。

「超治療魔法だと? いったいなんだ、それは!」

 リールバッハがそう問う。

「お見せしましょう。……神の御業にてかの者に裁きを与えん。過ぎたる癒やしは災いを呼ぶ……」

 サリエが治療魔法の詠唱を続けていく。
 ……治療魔法だよな?
 何やら不吉な詠唱文言だ。

 俺も知らない治療魔法のようである。
 先ほど強化したばかりなので、情報の共有をきちんとできていない。

「オーバーヒール」

 癒やしの光が、リールバッハを覆う。
 なぜわざわざ、敵に治療魔法を?

「ぐ、ぐあああぁっ!」

 リールバッハが悲鳴を上げる。

「どうです? 私の超治療魔法の味は?」

「ぐ……。確かに、これは治療魔法ではない! こんなものが治療魔法であってたまるか! 過剰な治療の力で、体に異常をきたす魔法だと!?」

 リールバッハがそう言う。
 なるほど。
 治療魔法にはそういう使い方もあるのか。

「くっ。父上に対するこれ以上の攻撃は認めませんよ。……レインレーザー!」

 リカルロイゼが、水魔法をこちらに放つ。
 まるでレーザーのような鋭い水が向かってくる。
 1本のレーザーだ。

「させぬでござる! 五の型……水流切り!」

 蓮華が刀で、レーザーを切り裂く。
 流体である水を切り裂くとは、彼女の剣技はさすがだ。

「ちっ。まだまだ! ……レインレーザー!」

 リカルロイゼがさらに追撃してくる。
 今度は3本だ。
 避けるのもいいが、だれかが避け損ねないとも限らない。
 ここはーー。

「マリアに任せて!」

 マリアがさっそうと前に飛び出る。
 何か策があるのか?
 と思ったが……。

 ズキュン!
 ズキュンズキュン!
 3本のレーザーがマリアを撃ち抜く。
 それによりレーザーが威力を失ったおかげで、他の者にケガはない。

 しかしマリアが……。
 彼女が血を流し、倒れ込む。

「マリアァァァ!!!」

 また守れなかった……。
 俺は何度同じ過ちを繰り返せば気が済むのか。
 この血の量は間違いなく致命傷だ。

「リカルロイゼ! 貴様ぁ! ぶち殺すぞクソがぁ!」

「ま、待ってください! さすがに殺すつもりは……。そっちの子が急に飛び出して来たので……」

 急に子どもが来たので。
 QKKだ。

「言い訳するな! お前は絶対に許さねえ! サリエは治療を頼む! 他の全員で、マリアの敵を取るぞ!」

「おーっ!」

 隣から無邪気な声が聞こえる。
 みんな、心は1つだ。
 マリアの無念を晴らすんだ。
 俺は、隣に立つ者の顔を確認する。

「って、マリアじゃねえかあああぁ!」

「? そーだよ?」

 マリアがキョトンとした顔でそう言う。
 あれ?
 彼女はレインレーザーをまともにくらい、かなりのダメージを負ったはず。
 なんで平気な顔をして立っている?

 いや、答えは1つだ。
 彼女の類まれなる回復力のおかげだろう。
 さらに、彼女はいつの間にか術式纏装『不滅之炎』まで発動している。
 回復力は、さらに高まっている。

 というか、ついさっきも同じことがあったな?
 いい加減、マリアの回復力の強さには慣れておかないといけない。
 彼女自身はもちろん自覚している。
 今の捨て身の戦法も、意図して行ったものだろう。

「ふ、ふざけないでいただきたい! 彼女に、治療魔法が施された気配はありませんでした。まさか、自前の回復力だけで復帰したとでも……?」

「そのまさかだ。相手が悪かったな。俺たちは、お前たちの想像のはるか上をいくのだ」

 俺自身まだ慣れていないが、マリアの回復力は常人をはるかに超えている。

「く……。何度傷つき倒れようと、炎とともに再生する……。さながら『不死鳥』といったところですか。もう、子ども扱いはされないと思ってください」

「わあい! マリア、もう大人だ!」

 リカルロイゼの言葉を受けて、マリアがそう喜ぶ。
 いや、そういう意味ではないような……。
 まあ、戦闘能力において一人前扱いをされたという意味では、マリアが喜んでいるのも的外れではないのか。

 やや緊迫感に欠けてしまったが、戦闘はまだ始まったばかりだ。
 引き続き、集中して戦いに臨むことにしよう。

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