【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

418話 全滅しちゃった……つらたん

 リーゼロッテと俺が率いる第六隊と、ラスターレイン伯爵家一行が戦っているところだ。
 人数比ではこちらが有利だったが、ラスターレイン伯爵家の想定以上の戦闘能力に押されている。
 ここまでのダンジョン攻略やファイアードラゴン戦で俺たちが疲弊していたことに加え、どしゃ降りのこの天候があちらに有利に働いているのも大きい。

「くっ。タカシの旦那のためにも、ここが踏ん張りどころだ」

「いくぜえ! 野郎ども!」

 トミーたちがそう奮起する。
 だがーー。

「レインレーザー!」

「ぐああっ!」

「く、くそっ! 近寄れねえ……」

 リカルロイゼの卓越した水魔法により、為す術がない。
 ピュンッ!
 ピュンピュンッ!
 彼の水魔法により、トミーたちが傷つき倒れていく。

「さて……。そろそろトドメといきましょうか」

 リカルロイゼが大技の構えをとる。

「そう好きにさせるか!」

「むっ!」

 俺はリールバッハの一瞬のスキを逃さず、距離を取る。
 そして、素早く火魔法の詠唱を開始する。

「揺蕩う炎の精霊よ。我が求めに応じ、敵を焼き尽くせ。ボルカニックフレイム!」

 俺の上級火魔法がリカルロイゼを襲う。
 しかしーー。

 ジュワッ。
 リカルロイゼに到達する前に、かき消されてしまった。

「ふん。その程度の火力ではこの『永久凍土』の守りを貫くことはできませんね」

 リカルロイゼがそう言う。

「その通り。それに、天候も我らの味方をしている。お前たちが勝つことはできない。これ以上余計な抵抗はせず、そこで見ているがいい」

「ぐっ!」

 俺の技後硬直を逃さず、リールバッハが突きを放ってきた。
 俺はダメージを受け、倒れ込む。
 彼が俺の体に足を乗せ、押さえ込んでくる。

「く、くそっ!」

 俺は起きようとするが、ダメージは大きい。
 まずは治療魔法で回復しないと。
 だが、そんなことをしている間にも、リカルロイゼがトミーたちに大魔法を放とうとしている。

「……凍てつく氷の精霊よ。契約によりて我に従え。万物凍る絶対零度。生命宿らぬ黄泉の冷気。我が敵を物言わぬ氷像に。『永久氷化』」

 ヒュォッ!
 こちらまで、冷気が届いた。
 あの技をモロにくらったトミーたちは……。

「こ、凍っている……?」

 微動だにしない氷の像になってしまっている。
 実力確かなCランク冒険者たちが、あっさりと全滅だ。
 コーバッツやティーナも巻き添えで凍ってしまっている。

「我らの方針に従わぬからこうなるのだ。残るは……お前たちミリオンズだ」

「く……」

「お前は最後だ。おとなしくしていろ」

 リールバッハに押さえつけられ、俺は身動きが取れない。
 治療魔法を発動しているのだが、リールバッハの魔力により阻害されているようだ。
 うまく回復しない。
 そうこうしている間に、今度はマルセラがユナやマリアに牙を剥こうとしている。

「くっ。雨で動きが……」

「マリアも飛びにくい……」

 獣化状態のユナは、炎の精霊の加護により体温が上昇し、身体能力が向上する。
 この雨天下では、その加護も効力が半減しているようだ。
 そして、ハーピィであるマリアの飛行能力も低減している。

「恨まないでくださいね。……『永久氷化』」

 ピキッ。
 マルセラの放った水魔法により、ユナとマリアが凍りついた。
 トミーたちに続き、彼女たちまでも……。

 さらには、リルクヴィストがモニカとニムに狙いを定めている。

「はあ、はあ……。今までの戦いで、体力が……」

「モニカお姉ちゃん、わたしの後ろに……」

 体力が残っていないモニカをかばい、ニムが前に出る。
 彼女はロックアーマーをまとっている。
 今のミリオンズで一番元気なのがニムだろう。
 彼女の体力はミリオンズで随一だ。
 だがーー。

「悪いな、嬢ちゃんたち。……『永久氷化』」

 ピキッ。
 リルクヴィストの放った水魔法により、モニカとニムが凍りついた。
 強固なロックアーマーでも、最上級水魔法を防ぐことはできなかった。

 これで4人。
 4人が氷像になってしまった。
 俺が不甲斐ないせいで……。

「や、やめろ! やめてくれ! 降参する!」

 ラスターレイン伯爵家に楯突いたのが間違いだったのか……?
 今日会ったばかりのファイアードラゴンなど、切り捨てればよかったのかもしれない。

 しかし、ミッションが……。
 いや、ミッションはあくまでテイムせよという内容だった。
 テイムした後に討伐しても、ミッションに背いたことにはならないとも考えられる。

「今さら信じられぬ。おとなしく、仲間が氷像になっていく様を見ているがよい」

 リールバッハが冷たく言い放つ。
 今さら撤回してももう遅い、か。
 リールバッハの魔力に妨害されつつも、少しずつ治療魔法により回復はできている。
 もう少しで動けるようになる。
 だが、そうこうしている間に、シャルレーヌがサリエとリーゼロッテに攻撃を仕掛けようとしている。

「ひっ。こ、こんな無法は、王国が黙っていませんよ……」

「そうですわ。目を覚ましなさい、シャルレ……」

「……『永久氷化』」

 ピキッ。
 シャルレーヌの放った水魔法により、サリエとリーゼロッテが凍りついた。
 貴族であるサリエと、肉親であるリーゼロッテにすら容赦しないとは。

「お姉様が悪いのですよ。貴族の責務を果たさないからです」

 シャルレーヌが冷たく言い放つ。
 もう少しで動けるようになる……!
 サリエとリーゼロッテは間に合わなかった。
 だが、まだ残っている者はいる。
 今度こそ間に合え……!

「くっ。みんな……。でも、ボクは最後まで諦めない!」

「ふん。確か、ガルハード杯で見かけた女だな。実力がずいぶんと増しているようだが……」

 アイリスとリルクヴィストが格闘で戦い始める。
 あのガルハード杯では、アイリスが1回戦負けでリルクヴィストはベスト4に残り優勝扱いとなった。
 当時の実力はリルクヴィストが上だ。

 しかし、あれからアイリスは実力をかなり伸ばしている。
 リルクヴィストに負けるはずがない。
 そう思ったがーー。

「ううっ」

 アイリスが押され気味だ。
 彼女が体勢を崩し、膝をつく。

「ずいぶんと疲労がたまっていたみたいだな。ここまでご苦労だった。ゆっくり休め」

 リルクヴィストが水魔法の詠唱を始める。
 アイリスに避ける体力は残っていない。

「ぐっ。うおおおぉ!」

「むっ!? まだ動けたのか」

 俺は力を振り絞り、リールバッハの拘束を振りほどいた。
 俺はアイリスのほうに駆け寄る。

「アイリs……」

 俺は必死に手を伸ばす。
 だが、その手はギリギリ間に合わなかった。

「……『永久氷化』」

 ピキッ。
 リルクヴィストの放った水魔法により、アイリスが凍りついた。
 また間に合わなかった……。

「くそっ! 貴様ら、絶対に許さない……!」

 俺は殺意を込めた目でリールバッハたちをにらみつける。

「そんなことを言っている場合か? お前以外には、あと1人だぞ」

 そうだ。
 あと1人残っている。
 せめて、彼女を連れて逃げるんだ。

 マルセラ、リカルロイゼ、リルクヴィスト、シャルレーヌ。
 4人が残った1人に向かっていく。
 多勢に無勢。
 彼女が自力で逃げることなどできないだろう。
 俺が助けないと。

「ミティ!」

 俺はミティに駆け寄っていく。
 必死に手を伸ばす。
 間に合え。

「タカシ様! たすけ……」

 彼女も俺に手を伸ばす。
 だが、俺たちの手が触れ合うことはなかった。

「……『永久氷化』」

 ピキッ。
 マルセラの放った水魔法により、ミティが凍りつく。
 彼女は助けを求める顔のまま、固まってしまった。

 こ、これで全滅……。
 残るは俺1人。
 俺1人なら、何とか逃げ切れるか……?
 だが、大切なみんなを失って逃げて、何の意味があるんだ……。

「何だ……? 俺は……。大層な力を手に入れておきながら……」

 この世界に来て、『ステータス操作』『加護付与』『異世界言語』などのチートスキルを手に入れた。
 それらの力を駆使して、時には苦労しつつも最終的には無双してきた。
 俺にできないことなどない。
 そう慢心した結果が、これか。

「仲間の1人も、守れない……!!!」

 俺はそう慟哭する。

「うふふ。かわいそうなタカシさん。でも、ご心配なく。きっとまた会えますわよ」

 センが優しい声色でそう言う。
 確かにそうかもしれない。
 俺も逝けば、あの世でみんなに会うことができるだろう。

 神様の気まぐれで、みんなでまた別の異世界に転生できないかな。
 今後こそ、みんなで平和に生きるんだ。
 世界滅亡とは無縁の世界で。
 子どもは、それぞれ2人ずつぐらいほしいな。
 畑を耕して、スローライフを送ろう。

 俺とミティの子どもの名前はどうしよう。
 タカシとミティの子どもだから……。
 ミカとかどうだろうか?
 少し安直かもしれない。
 ちゃんと相談して決めないといけないな。

 俺はそんな現実逃避をする。
 そうこうしている間に、リールバッハたちが水魔法の詠唱を進めていく。

「凍てつく氷の精霊よ」
「契約によりて我に従え」
「万物凍る絶対零度」
「生命宿らぬ黄泉の冷気」
「我が敵を物言わぬ氷像に」

 リールバッハ、マルセラ、リカルロイゼ、リルクヴィスト、シャルレーヌ。
 5人がそれぞれ詠唱を進めていく。

「永久氷化」
「永久氷化」
「永久氷化」
「永久氷化」
「永久氷化」

 ピキッ。
 リールバッハたちの放った水魔法が俺を襲う。
 5人それぞれから発動されたため、威力がとても強い。
 俺の『獄炎滅心』の炎を封殺し、俺の体が凍りついていく。

 意識はまだある。
 しかし、体は動かない。
 少しずつ意識も薄れていた。

「後は我らに任せて、ゆっくりと眠るがいい」

 最後に、リールバッハの優しげな声が聞こえた。
 この日、俺が率いるミリオンズ、そして第六隊はーー。
 全滅した。

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