【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

414話 ファイアードラゴンとの意思疎通

 ファイアードラゴンを追い詰めた。
 やつはリーゼロッテの水魔法により大ダメージを受け、倒れ込んでいる。

「ふん。マリアを殺した報いだ。安らか逝け」

 俺はファイアードラゴンに近寄り、剣を振り上げる。

「ゴ、ゴアア……」

 ファイアードラゴンがそう鳴く。
 先ほどまで暴れ回っていた凶悪な竜だが、こうなってしまえば弱々しいものだな。

「ゴアア……(やめて……痛いのやだあ……)」

 ん?
 何やら、少女の声が聞こえたような……。
 俺は後ろを振り向く。

「だれかしゃべったか?」

「いえ。こちらでは誰もしゃべっていませんが……」

「そっちで、ファイアードラゴンが鳴いたぐらいじゃない?」

 ミティとモニカがそう言う。

「うーん、気のせいか……」

 俺は再びファイアードラゴンに向き直る。
 再び、剣を振り上げる。

「ゴア! ゴアアアァ! (やだやだやだ! 痛いのやめて!)」

 まただ。
 ドラゴンの鳴き声に被さるように、少女の悲痛な叫び声が聞こえてくる。

「ゴアアアアァッ!!! (どこへ行ったの!? ママーッ!!!)」

 ドラゴンが大きな叫び声をあげると同時に、ちょっとした衝撃波が発生する。

「ぐおっ!?」

 俺は数メートル弾き飛ばされる。
 衝撃波とはいっても、高熱のブレスと比べればかわいいものである。
 受け身もしっかりとったし、ダメージはほぼない。

「ま、まだ抵抗する気力があるようですね。わたしの土魔法でトドメを刺しましょうか?」

「いや……。少し気になることがある。ちょっと待っていてくれ」

 俺はそう言う。
 剣をアイテムルームに収納し、ファイアードラゴンにそっと近づく。

「ファイアードラゴンよ。俺の言葉がわかるか?」

 俺はそう問いかける。
 俺の感覚が正しければ、先ほど聞こえた少女の声の正体はーー。

「ゴア? (人間……? 私の言葉がわかるの……?)」

「ああ、わかるとも」

 俺はそう答える。
 やはり、少女の声はファイアードラゴンの声だ。

 俺の異世界言語のチートスキルのおかげだろう。
 古代言語の件といい、かなりのチートスキルだ。

 しかし、翻訳してくれる基準はやや不明瞭だ。
 純粋な人族だけでなく、オーガやハーピィの言語を翻訳してくれるのは理解できる。
 彼らは、かなり人間に近い種族だからな。
 ドワーフ、獣人やエルフも同様だ。

 しかし一方で、ゴブリンやスメリーモンキーなどの魔物の言語は翻訳されない。
 やつらも、一定程度の知能は有しているはずなのだが。
 異世界言語のスキルのシステム上、どこか一定のラインで線引がされているのだと思われる。
 そして、ファイアードラゴンの知能はゴブリンやスメリーモンキーよりも明確に上で、人族と同程度以上あるという判定なのかもしれない。

「人間ーー! ぐすっ。ううっ……」

 ファイアードラゴンの言葉を聞き取ることに慣れてきた。
 違和感なく、人間と話しているような感覚で聞き取れる。
 当初から翻訳されていなかったのは、やや遠い種族なのでスキルの適応に時間がかかった可能性がある。

 彼女(?)がさみしそうに抱きついてきたので、俺は抱きしめ返す。
 巨体に抱きしめられるのは怖いが、ここは踏ん張りどころだ。
 『獄炎滅心』の効果により火耐性を得ていることだしな。

「おう、よしよし」

 俺は彼女の頭をなでてやる。

「す、すげえぜ! あのファイアードラゴンと意思疎通に成功している……!」

「さすがはタカシ様です! 竜種ですら、タカシ様の偉大さの前ではひれ伏すのみ……!」

 トミーとミティがそう感嘆の声を漏らす。
 別にひれ伏しているわけではないが。

「うーん……。いいシーンなのかもしれないけど、傍目にはタカシが独り言を言っているようにしか見えないね」

「そ、そうですね……。ファイアードラゴンが突然暴れだしたりしないか、少し心配です」

 アイリスとニムがそう言う。
 ファイアードラゴンの言葉を理解できるのは俺だけだ。
 他のみんなにとっては、ファイアードラゴンは『ゴア、ゴア』と鳴いているだけにしか聞こえないはずである。

「それで、どうして暴れたりしたんだ? 俺たちは、君が暴れるのが不安で様子を見にきたんだ」

「さみしかったの……。ママはいなくなっちゃったし、周りにいた人間もいつの間にかいなくなっていたし……」

 ママがいなくなった、か。
 石版に書いてあった、フレイムドラゴンのことだろうな。
 そして周りにいた人間というのは、ファイアードラゴンを手懐けようとしていた者たちのことだと思われる。

「そうか、さみしかったんだな……。どうすれば、そのさみしさを紛らわせられる?」

「お前がずっとここにいればいい! ずっと2人で暮らそう!」

 ファイアードラゴンがそう言う。
 彼女の言葉を理解できるのは俺だけだ。
 他の者が残っても意味がない。
 しかし、俺にはいろいろとやらなければならないことがある。

「申し訳ないが、ずっとここに残るわけにはいかない」

「やだーっ! ずっといっしょに暮らすの!」

 ファイアードラゴンが駄々をこねる。
 少しマズい。
 彼女が再び暴れだすと、今度こそ手がつけられないかもしれない。

 となると、やはり討伐するのが第一候補か?
 しかし、こうして意思疎通ができている以上、殺すのはかなりの抵抗感がある。
 俺にとっては、殺人の感覚に近い。

 明確に敵対しているのであればまだしも、彼女はさみしさから暴走気味だっただけだ。
 それに、マリアも無事に全快しているし。
 特に恨みはない。

 俺がどうすべきか悩んでいた、そのときーー。
 ピコン。
 俺の視界の隅で、何かが点滅した。

 これは……。
 新しいミッションだ。


ミッション
ファイアードラゴンをテイムせよ。
報酬:スキルポイント20


 これはありがたい。
 どうすべきか悩んでいるときに、進むべき方向を示してくれる。
 報酬もいいが、それ以上にミッションが示されること自体がかなりのチートと言えるのではなかろうか。

 まあ、そもそもミッションに従っていれば間違いないとも限らないが。
 少なくとも、今までは全て好ましい結果に終わっている。

 それに、ミッションを設定できるような超常の存在の意向にわざわざ逆らう必要性も感じない。
 超常の存在の機嫌を損ねれば、俺などは軽く殺されてしまう可能性もあるしな。
 ここは、ミッションに従ってファイアードラゴンのテイムを試みるという方向性でいいだろう。
 俺は敷かれたレールの上を歩くのさ。

 テイムといえば、ユナである。
 彼女のテイム術のスキルレベルは4。
 さっそく相談してみよう。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品