【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

390話 選別試験Bブロック

 ダンジョン攻略メンバーの選別試験が行われているところだ。
 AからDブロックに分けられ、バトルロワイヤル方式で戦うことになる。

 戦闘不能になるか、周囲の海に落ちたらリタイアとなる。
 リタイアが即失格というわけではなくて、あくまでこの戦闘を参考にラスターレイン伯爵家がダンジョン攻略メンバーの人選を行う感じだ。

 俺たちミリオンズはDブロックだ。

 つい先ほどAブロックの試験が終わったところである。
 次はBブロックだ。
 さっそく試合が開始されようとしている。

「シュタインっ! がんばってくれ!」

「ああ、私の活躍を見ていてくれ! 我が盟友よ!」

 俺の応援に、シュタインが大声でそう返答する。
 ミティやアイリスたちも、シュタインの妻であるミサたちに声援を送っている。
 俺とシュタインが仲良くなる一方で、彼女たちは彼女たちで親交を深めていた様子だ。

 俺とシュタインのやり取りを聞いて、周囲の人が若干ざわつく。

「(おいおい。サザリアナ王国の新興貴族2家が、さっそく仲良くなっているのかよ)」

「(成り上がり者同士、敵対気味になるのかと思っていたが……。妻たちも含めて、良好な関係を持っているようだな)」

 そんなつぶやき声が聞こえてくる。
 俺もシュタインも、武功を評価されて冒険者から貴族に取り立てられた。
 確かに、成り上がり者同士でライバル視する感情も少しはある。
 しかしそれ以上に、互いに手を取り合って領地を発展させていこうという意識のほうが強い。

 そんなシュタインが、Bブロックでさっそく活躍を見せる。

「鳥の型……鷹波!」

 シュタインが華麗な足取りで、次々と参加者を撃破していく。
 彼が大ダメージを与えた相手に、彼の妻たちが追撃してリタイアに追い込んでいく。
 しっかりした実力と連携だ。


「動くこと雷霆(らいてい)の如し」

 シュタインから少し離れたところに、見覚えのある男が立っている。
 あれは……。
 マクセルじゃないか。
 近くには、カトレア、ストラス、セリナ、カイル、レベッカもいる。

 マクセルは武闘の達人で、雷竜拳の二つ名を持つ。
 カトレアはミティの幼なじみで、マクセルといい雰囲気である。
 ストラスは足技が得意な兎獣人で、嵐脚の二つ名を持つ。
 セリナは元六武衆のオーガの少女で、ストラスとくっつきそうな感じだ。
 カイルとレベッカは恋仲で、それぞれマクセルの子分である。

 彼らはDランクパーティ”疾風迅雷”として活動している。
 あれから結構な月日が経過したし、今はCランク以上になっているかもしれない。
 彼らの戦いをじっくり見させてもらおう。

「ぬうぅ……。雷竜咆哮拳!」

「全てを薙ぎ倒す風の精霊よ。我が求めに応じ吹き荒れろ! テンペスト!」

「ダブルファイブ・マシンガン!」

「……我が敵を撃て! ライトニングブラスト! なの」

 マクセル、カトレア、ストラス、セリナ。
 それぞれが大技を放ち、他の参加者たちをバッタバッタと撃破していく。
 カイルとレベッカも負けじとやる気を見せている。
 やはり、彼らも相当に実力を上げているようだ。


「蝶のように舞い、蜂のように刺す……」

「見せてあげましょ。私たちの”武闘演舞”を」

 先ほど俺と会話していた男女のペアがそうつぶやく。
 確か、名前はジョージとセニアだったか。

 彼らも、しっかりと活躍している。
 舞い踊るかのような華麗な動きの格闘で、他の参加者たちを撃破していく。


 彼らとはまた少し離れた一角では、1人の少女が大勢の参加者たちに囲まれている。
 なかなか……、いや、かなり気品のある少女だ。
 どこか高貴な生まれなのだろうか。

 両手に短剣を持っている。
 二刀流の剣士だ。

 二刀流とはいえ、この人数差では厳しい。
 なぜこんな状況になったんだ?

「少女をよってたかって痛めつけるとは……。男の風上にも置けんやつらだ」

 俺は思わずそうつぶやく。

「えっ? タカシ様、ここまでの戦いをご覧になられていなかったのですか?」

「ん? ああ。シュタインやマクセルたちの戦いを見ていてな……」

 俺は視力強化のスキルを取得済みだ。
 遠方を見る能力、動体視力、まぶしさに対する耐性、眼球の物理的な防御力、そして視野の広さ。
 そのそれぞれが常人よりも少しずつ優れている。
 しかし、さすがにシュタインやマクセルたちの戦いを注視しつつ、他方面で行われている戦闘を観察できるほどの能力はない。

「それはいいタイミングだったね。追い詰められた彼女は、何か打開策を講じるはず。見どころだよ」

 アイリスがそう言う。
 よく見ると、少女を取り囲んでいる参加者たちは、既にそれなりのダメージを負っている。
 あの少女1人でここまで奮闘してきたのか?
 しかし、やはり多勢に無勢で押され気味といったところか。

「ちっ。面倒だな……。さすがにしぶとい」

 少女がそうつぶやく。
 外見は品のある感じなのだが、口調は汚いな。
 ギャップがある。

「ヒャハハハ! さすがの”剣姫”様も、この人数を相手に勝つことはできねえだろう」

「俺たちはこれでも、Cランクなんでね。1対多数で、無様に負けるわけにはいかねえ!」

 取り囲んでいる参加者たちがそう言う。
 この選別試験の参加者は、平均レベルが高い。
 一見モブに見えるこの者たちも、実はCランクの実力者のようだ。

「王家の威光を貶めるわけにはいかん。……かくなる上は。はあああぁ……!」

 少女が闘気を開放する。
 双剣を十字に構えている。
 何やら大技を出すようだ。

「させるかよ!」

「スキだらけだぜ!」

 男たちがそう言って、少女に攻撃を仕掛ける。
 確かに、この機を逃す手はない。
 男たちの剣が少女を襲う。
 そのギリギリのタイミングでーー。

「サザンクロス!!!」

 少女の双剣から、十字型の大きな闘気弾が射出される。

「「「ぎゃあああっ!」」」

 男たちはそれをモロに受け、弾き飛ばされていった。
 海に落ち、リタイアだ。

「おお、複数のCランク冒険者を一蹴か。相当に強いな、あの少女は」

 俺はそうつぶやく。

「タカシさん……。まさか、彼女のことを知らないのですか? 騎士爵を授かったのですし、しっかり覚えておきませんと……」

 サリエがそう言う。

「ええっと。知らなきゃマズイような重要人物なのか?」

「彼女は、我らがサザリアナ王国の第三王女……ベアトリクス王女殿下ですわ。剣姫の二つ名を持ち、見ての通り高い戦闘能力を誇ります」

「むっ。王女殿下だったか。それは確かに、しっかりと覚えておかないとな。無礼な態度は取れない」

 俺たちミリオンズにも、高貴な生まれの者は存在する。
 ハガ王国の王女であるマリア、ラスターレイン伯爵家の長女であるリーゼロッテ、ハルク男爵家の次女であるサリエだ。

 ベアトリクス第三王女は、リーゼロッテやサリエよりもさらに高貴な生まれである。

 ハガ王国の第一王女であるマリアと比較すればどうだろう?
 単純に考えればマリアのほうが高貴だ。

 しかし、サザリアナ王国とハガ王国の国家規模や歴史の違いもある。
 ハガ王国はやや小規模な国家であり、少し前までは国家というよりは部族の集団という雰囲気だった。
 サザリアナ王国のほうが規模が大きい上、歴史も長い。

 また、俺はサザリアナ王国の騎士爵を授かっている。
 サザリアナ王国の王家は、いわば俺の上司のようなものだ。

 そのあたりを総合的に考えると、俺はベアトリクス第三王女に対して、リーゼロッテやマリアに対して以上に礼節をわきまえる必要があるだろう。

 そんなことを考えているうちに、Bブロックの試合は終了となった。
 シュタインたち一行、マクセルたち疾風迅雷、ジョージとセニア、そしてベアトリクス第三王女が最後まで立っていた。
 やはり、この選別試験には相当な実力者が集まっている。

 次のCブロックの試合も存分に観戦させてもらい、Dブロックの俺たちの試合に繋げることにしよう。

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