【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
369話 性騎士ソーマ
シュタイン=ソーマ騎士爵は、妻のミサを愛している。
しかし、ある日ミサは記憶を失い、人格も変容してしまった。
そしてその日を境に、シュタインの女遊びは激しくなった。
彼が複数の美女を侍らせ、街を練り歩く。
傍らには、ミサも付いてこさせている。
「(おい、見ろよ……。またキゾクサマが我が物顔で歩いていやがるぜ)」
「(派手に女遊びしてやがるぜ。何が聖騎士ソーマだ。性騎士ソーマじゃねえか)」
町民たちが遠巻きにそうつぶやく。
張本人であるシュタインは、聞こえているのかいないのか、涼しい顔である。
そんな中、シュタインの目の前に2人の男が立ちはだかった。
「おい、ソーマのボウズ! てめえ、最近調子に乗っているんじゃねえか!?」
「何のためにがんばってきたんだ? 初心を思い出しやがれ!」
彼らは、ミサの実家の飯屋の常連客たちである。
かつてシュタインがミサにプロポーズした際には、祝福したこともある。
「ふっ。昔のことをぐちぐちとうるさいな。私は貴族だぞ。複数の妻を娶るぐらい、当然のことさ」
シュタインが取り付く島もなくそう言う。
「てめえ、ミサちゃんの気持ちを考えたことがあるのか!」
「ミサちゃんを泣かしたら承知しねえと言っただろうが!」
彼らがそう凄む。
彼らとミサの接点はなくなりつつあるが、遠巻きに見ているだけでも最近のミサに元気がないのは明白であった。
実際のところは、元気がないのではなく、記憶障害による人格変容ではあるが。
「ふん。ミサは泣いてなどいないぞ。……それに、貴族である私にその態度はいささか無礼ではないか? 昔のよしみで見逃してやるから、さっさと散れ。私のやることに口を出すな」
シュタインがそう言い放つ。
2人の男はなおも食い下がろうとしていたが、シュタインの護衛兵によって遮られそれ以上の追及をすることはできなかった。
●●●
その日の夜ーー。
領主邸の一室にて、シュタインは女性たちを侍らせていた。
「(何も知らぬ平民どもめ。全ては、ミサの記憶を取り戻すためなのだ)」
シュタインがそうつぶやく。
ミサが記憶を失ってから、彼は茫然自失の生活を送っていた。
そんなときに、不思議な雰囲気のある謎の女が接触してきたのだ。
名をセンという。
「(やつからもらったこの”治癒の宝玉”であれば、ミサの記憶もきっと戻るはずだ)」
センの説明によれば、愛の力を宝玉内に蓄積して、治療魔法を増強する効力があるらしい。
それも、シュタインのような強者が発する愛の力であれば、蓄積も早い。
幸い、彼は貴族であり、容姿も優れている。
ミサが実質的に不在の今、シュタインにアプローチしてくる女性はいくらでもいた。
その中でも、地位や外見だけではなく、シュタイン自身の人柄も見てくれている女性を選んで、第二夫人、第三夫人として迎え入れていった。
幼なじみとして長い年月をともに歩んできたミサとの愛の重さとは比べられないものの、シュタインと彼女たちは確かな愛を育みつつある。
それに伴い、治癒の宝玉にも順調に魔力が蓄積されている。
シュタインの試みは、順調だと言っていい。
「シュタインさまぁ。お慕い申し上げております」
「わたしもです。もっとかわいがってくださいませ」
2人の女性がシュタインにしなだれかかってくる。
彼女たちが、彼の第二夫人と第三夫人である。
「ああ。今夜は寝かせないぜ、ハニーたち」
シュタインがキメ顔でそう言って、ベッドに潜り込む。
ベッドの横には治癒の宝玉があり、それは今日も着実に魔力を蓄積しつつある。
「…………」
部屋の片隅で、シュタインたちの情事を感情のない瞳で見ているのはミサだ。
以前の彼女であれば、この光景を見て何と言っただろうか。
シュタインを浮気者として罵っただろうか。
それとも、治癒の宝玉に魔力を溜めるために必要な行為だと理解を示しただろうか。
そんな仮定に意味はない。
ミサは、依然として記憶も感情も失っているのだから。
彼女が記憶を取り戻したら、誠心誠意謝ることにしよう。
そして、できることならばみんなで幸せに暮らしていきたい。
シュタインは、そんなことを考えていた。
●●●
さらに年月が過ぎーー。
シュタインの女遊びは、激しさを増していた。
領民たちの間だけで囁かれていた”性騎士ソーマ”の蔑称は、今やサザリアナ王国のあちこちに広まっている。
新たに、第四夫人から第八夫人までを迎え入れた。
さらに数を増やす計画もしている。
サザリアナ王国のベアトリクス第三王女、ソーマ騎士爵位家と寄り親・寄り子関係にあるラスターレイン伯爵家の長女リーゼロッテ、小領ながらも善政を敷いていると評判のハルク男爵家の次女サリエなどにも求婚の手紙を出している。
残念ながら色よい返事はもらえなかったが、他にも嫁候補はいくらでもいる。
機を見て、再度手紙を出すことも検討している。
なりふり構わず愛の力をかき集め、治癒の宝玉に魔力をため続けてきた。
そのかいあって、そう遠くないうちに十分量の魔力がたまりそうだ。
そろそろ、腕の良い治療魔法士も確保しておく必要がある。
シュタインの努力は順調に実を結びつつあるといっていい。
だが、シュタインの顔はどこか晴れない。
「(どうしてだろうか……。ミサ、君の記憶を取り戻すためにがんばっているのに、君が遠くなっていくような気がするんだ……)」
愛する者のために、他の女と愛を育む。
矛盾を孕んだ彼の挑戦は、静かに彼の心を蝕みつつあった。
彼の心が摩耗していくのに付け込んで、彼の心に巣食う闇の瘴気の影響力も増してきている。
そして、今日もーー。
「ふっ。貴族である私が、君を幸せにしてあげよう。私の第九夫人になるといい」
シュタインがそう言って、飯屋の店員の女性に迫る。
「きゃああぁっ! お、おやめください……」
店員の女性が悲鳴を挙げる。
今回のシュタインの求婚は強引だ。
このような態度では、治癒の宝玉に愛の力をためることには結びつかないだろう。
彼は、闇の瘴気により正常な判断能力を失いつつあった。
「なぜ嫌がるんだい? 私のもとへ来れば、何不自由ない生活を約束しようではないか。趣味として、時おりここで働くのを許可してやってもいいんだよ?」
シュタインが女性店員の顎をクイッとする。
「…………」
女性は顔を真っ赤にして、言葉が出ない様子だ。
どうやら、まんざらでもないようである。
「なに、結論は急がなくていいさ。……ミサ! この者を第九夫人として迎え入れる準備をしておいてくれ」
「承知しました。マイロード」
第一夫人であるミサがそう返答をする。
自身へ向けられるべき愛が、また他の者に分散することになる。
それを迎え入れるための準備をさせられる彼女の気持ちは、どのようなものであろうか。
記憶も感情も失っているはずではあるが、どことなく悲しそうな表情をしているようにも見える。
さらに、その場に出くわしたリーゼロッテとサリエにも合わせて再度求婚したところ……。
「ソーマ騎士爵殿。彼女たちにその気はないようだぞ。しつこく言い寄るのは、男としてみっともない」
その場に同席していたタカシ=ハイブリッジ騎士爵がそう口を挟んできた。
彼は、サザリアナ王国の貴族界、そして冒険者界で話題の有望なルーキーである。
2人とも冒険者ランクはB。
武功を評価されて騎士爵を授かった点も同じである。
「君が、噂のハイブリッジ騎士爵か。まぐれで功績を上げたようだが、それで私と対等になったつもりかね? 分をわきまえたまえ」
シュタインがそう言い放つ。
彼は、これまでのタカシの功績をきちんと把握している。
ホワイトタイガーの討伐、ジャイアントゴーレムの討伐、ハガ王国との紛争解決への尽力、ガルハード杯への出場。
ミドルベアの討伐、霧蛇竜ヘルザムの討伐、メルビン杯ベスト8、キメラの撃破、ブギー盗掘団の捕縛。
1年と少しの短期間でこれだけの功績を上げたのは見事。
しかし、1つ1つに注目すれば、シュタイン自身でもできないことはないものばかりだと認識していた。
冒険者としても貴族としても先輩である彼は、タカシよりも格上だという自認を持っている。
シュタインの言葉を受けて、タカシが口を開く。
「そうはいかん。困っている女性を、騎士として見過ごすわけにはいかないのでな。貴様のようなエセ騎士とは違うのだよ」
「な、なんだとぉ!? 言ってくれるじゃないか。こうなれば、決闘だ! 勝ったほうが彼女たちを口説く権利を得る。それでどうだ!」
シュタインが顔を真っ赤にしてそう宣言する。
闇の瘴気の影響もあり、彼の煽り耐性は低下していた。
そして、街の広場でシュタインとタカシの決闘が始まる。
同じ騎士爵であり、冒険者ランクも同じBだ。
しばらくは、互角の戦いが繰り広げられていく。
「リーゼロッテさんとサリエの件はあきらめろ。俺が代わりに幸せにするから、安心しな」
「信じられるか! 女性を幸せにするのは、この私だ! …………グ……ガ……!」
久しぶりに全力を出した彼のスキを突いて、闇の瘴気が侵食を深めた。
そして、決闘が佳境に入った頃にそれは本格的に牙を剥いたのだ。
「ガアアッ! オンナ! オンナをヨコセ!」
目的と手段の混合。
愛する者のために新たな女性を求め続けた男は、ひたすらに女を求める怪物へと成り下がってしまった。
暴走したシュタイン=ソーマ騎士爵を止められる者は、そうはいない。
百歩譲って止めるだけならまだしも、闇の瘴気を浄化できる者となると、さらに希少だ。
彼が暴走した時点で、ソーマ騎士爵領に多大な被害が出ることは確定していた。
ーーだが、それは本来であればだ。
今この場には、タカシ=ハイブリッジ騎士爵、それに彼の第二夫人であるアイリスがいる。
彼らの実力と聖魔法なら、あるいは……。
ソーマ騎士爵領の命運は、彼らに託された。
しかし、ある日ミサは記憶を失い、人格も変容してしまった。
そしてその日を境に、シュタインの女遊びは激しくなった。
彼が複数の美女を侍らせ、街を練り歩く。
傍らには、ミサも付いてこさせている。
「(おい、見ろよ……。またキゾクサマが我が物顔で歩いていやがるぜ)」
「(派手に女遊びしてやがるぜ。何が聖騎士ソーマだ。性騎士ソーマじゃねえか)」
町民たちが遠巻きにそうつぶやく。
張本人であるシュタインは、聞こえているのかいないのか、涼しい顔である。
そんな中、シュタインの目の前に2人の男が立ちはだかった。
「おい、ソーマのボウズ! てめえ、最近調子に乗っているんじゃねえか!?」
「何のためにがんばってきたんだ? 初心を思い出しやがれ!」
彼らは、ミサの実家の飯屋の常連客たちである。
かつてシュタインがミサにプロポーズした際には、祝福したこともある。
「ふっ。昔のことをぐちぐちとうるさいな。私は貴族だぞ。複数の妻を娶るぐらい、当然のことさ」
シュタインが取り付く島もなくそう言う。
「てめえ、ミサちゃんの気持ちを考えたことがあるのか!」
「ミサちゃんを泣かしたら承知しねえと言っただろうが!」
彼らがそう凄む。
彼らとミサの接点はなくなりつつあるが、遠巻きに見ているだけでも最近のミサに元気がないのは明白であった。
実際のところは、元気がないのではなく、記憶障害による人格変容ではあるが。
「ふん。ミサは泣いてなどいないぞ。……それに、貴族である私にその態度はいささか無礼ではないか? 昔のよしみで見逃してやるから、さっさと散れ。私のやることに口を出すな」
シュタインがそう言い放つ。
2人の男はなおも食い下がろうとしていたが、シュタインの護衛兵によって遮られそれ以上の追及をすることはできなかった。
●●●
その日の夜ーー。
領主邸の一室にて、シュタインは女性たちを侍らせていた。
「(何も知らぬ平民どもめ。全ては、ミサの記憶を取り戻すためなのだ)」
シュタインがそうつぶやく。
ミサが記憶を失ってから、彼は茫然自失の生活を送っていた。
そんなときに、不思議な雰囲気のある謎の女が接触してきたのだ。
名をセンという。
「(やつからもらったこの”治癒の宝玉”であれば、ミサの記憶もきっと戻るはずだ)」
センの説明によれば、愛の力を宝玉内に蓄積して、治療魔法を増強する効力があるらしい。
それも、シュタインのような強者が発する愛の力であれば、蓄積も早い。
幸い、彼は貴族であり、容姿も優れている。
ミサが実質的に不在の今、シュタインにアプローチしてくる女性はいくらでもいた。
その中でも、地位や外見だけではなく、シュタイン自身の人柄も見てくれている女性を選んで、第二夫人、第三夫人として迎え入れていった。
幼なじみとして長い年月をともに歩んできたミサとの愛の重さとは比べられないものの、シュタインと彼女たちは確かな愛を育みつつある。
それに伴い、治癒の宝玉にも順調に魔力が蓄積されている。
シュタインの試みは、順調だと言っていい。
「シュタインさまぁ。お慕い申し上げております」
「わたしもです。もっとかわいがってくださいませ」
2人の女性がシュタインにしなだれかかってくる。
彼女たちが、彼の第二夫人と第三夫人である。
「ああ。今夜は寝かせないぜ、ハニーたち」
シュタインがキメ顔でそう言って、ベッドに潜り込む。
ベッドの横には治癒の宝玉があり、それは今日も着実に魔力を蓄積しつつある。
「…………」
部屋の片隅で、シュタインたちの情事を感情のない瞳で見ているのはミサだ。
以前の彼女であれば、この光景を見て何と言っただろうか。
シュタインを浮気者として罵っただろうか。
それとも、治癒の宝玉に魔力を溜めるために必要な行為だと理解を示しただろうか。
そんな仮定に意味はない。
ミサは、依然として記憶も感情も失っているのだから。
彼女が記憶を取り戻したら、誠心誠意謝ることにしよう。
そして、できることならばみんなで幸せに暮らしていきたい。
シュタインは、そんなことを考えていた。
●●●
さらに年月が過ぎーー。
シュタインの女遊びは、激しさを増していた。
領民たちの間だけで囁かれていた”性騎士ソーマ”の蔑称は、今やサザリアナ王国のあちこちに広まっている。
新たに、第四夫人から第八夫人までを迎え入れた。
さらに数を増やす計画もしている。
サザリアナ王国のベアトリクス第三王女、ソーマ騎士爵位家と寄り親・寄り子関係にあるラスターレイン伯爵家の長女リーゼロッテ、小領ながらも善政を敷いていると評判のハルク男爵家の次女サリエなどにも求婚の手紙を出している。
残念ながら色よい返事はもらえなかったが、他にも嫁候補はいくらでもいる。
機を見て、再度手紙を出すことも検討している。
なりふり構わず愛の力をかき集め、治癒の宝玉に魔力をため続けてきた。
そのかいあって、そう遠くないうちに十分量の魔力がたまりそうだ。
そろそろ、腕の良い治療魔法士も確保しておく必要がある。
シュタインの努力は順調に実を結びつつあるといっていい。
だが、シュタインの顔はどこか晴れない。
「(どうしてだろうか……。ミサ、君の記憶を取り戻すためにがんばっているのに、君が遠くなっていくような気がするんだ……)」
愛する者のために、他の女と愛を育む。
矛盾を孕んだ彼の挑戦は、静かに彼の心を蝕みつつあった。
彼の心が摩耗していくのに付け込んで、彼の心に巣食う闇の瘴気の影響力も増してきている。
そして、今日もーー。
「ふっ。貴族である私が、君を幸せにしてあげよう。私の第九夫人になるといい」
シュタインがそう言って、飯屋の店員の女性に迫る。
「きゃああぁっ! お、おやめください……」
店員の女性が悲鳴を挙げる。
今回のシュタインの求婚は強引だ。
このような態度では、治癒の宝玉に愛の力をためることには結びつかないだろう。
彼は、闇の瘴気により正常な判断能力を失いつつあった。
「なぜ嫌がるんだい? 私のもとへ来れば、何不自由ない生活を約束しようではないか。趣味として、時おりここで働くのを許可してやってもいいんだよ?」
シュタインが女性店員の顎をクイッとする。
「…………」
女性は顔を真っ赤にして、言葉が出ない様子だ。
どうやら、まんざらでもないようである。
「なに、結論は急がなくていいさ。……ミサ! この者を第九夫人として迎え入れる準備をしておいてくれ」
「承知しました。マイロード」
第一夫人であるミサがそう返答をする。
自身へ向けられるべき愛が、また他の者に分散することになる。
それを迎え入れるための準備をさせられる彼女の気持ちは、どのようなものであろうか。
記憶も感情も失っているはずではあるが、どことなく悲しそうな表情をしているようにも見える。
さらに、その場に出くわしたリーゼロッテとサリエにも合わせて再度求婚したところ……。
「ソーマ騎士爵殿。彼女たちにその気はないようだぞ。しつこく言い寄るのは、男としてみっともない」
その場に同席していたタカシ=ハイブリッジ騎士爵がそう口を挟んできた。
彼は、サザリアナ王国の貴族界、そして冒険者界で話題の有望なルーキーである。
2人とも冒険者ランクはB。
武功を評価されて騎士爵を授かった点も同じである。
「君が、噂のハイブリッジ騎士爵か。まぐれで功績を上げたようだが、それで私と対等になったつもりかね? 分をわきまえたまえ」
シュタインがそう言い放つ。
彼は、これまでのタカシの功績をきちんと把握している。
ホワイトタイガーの討伐、ジャイアントゴーレムの討伐、ハガ王国との紛争解決への尽力、ガルハード杯への出場。
ミドルベアの討伐、霧蛇竜ヘルザムの討伐、メルビン杯ベスト8、キメラの撃破、ブギー盗掘団の捕縛。
1年と少しの短期間でこれだけの功績を上げたのは見事。
しかし、1つ1つに注目すれば、シュタイン自身でもできないことはないものばかりだと認識していた。
冒険者としても貴族としても先輩である彼は、タカシよりも格上だという自認を持っている。
シュタインの言葉を受けて、タカシが口を開く。
「そうはいかん。困っている女性を、騎士として見過ごすわけにはいかないのでな。貴様のようなエセ騎士とは違うのだよ」
「な、なんだとぉ!? 言ってくれるじゃないか。こうなれば、決闘だ! 勝ったほうが彼女たちを口説く権利を得る。それでどうだ!」
シュタインが顔を真っ赤にしてそう宣言する。
闇の瘴気の影響もあり、彼の煽り耐性は低下していた。
そして、街の広場でシュタインとタカシの決闘が始まる。
同じ騎士爵であり、冒険者ランクも同じBだ。
しばらくは、互角の戦いが繰り広げられていく。
「リーゼロッテさんとサリエの件はあきらめろ。俺が代わりに幸せにするから、安心しな」
「信じられるか! 女性を幸せにするのは、この私だ! …………グ……ガ……!」
久しぶりに全力を出した彼のスキを突いて、闇の瘴気が侵食を深めた。
そして、決闘が佳境に入った頃にそれは本格的に牙を剥いたのだ。
「ガアアッ! オンナ! オンナをヨコセ!」
目的と手段の混合。
愛する者のために新たな女性を求め続けた男は、ひたすらに女を求める怪物へと成り下がってしまった。
暴走したシュタイン=ソーマ騎士爵を止められる者は、そうはいない。
百歩譲って止めるだけならまだしも、闇の瘴気を浄化できる者となると、さらに希少だ。
彼が暴走した時点で、ソーマ騎士爵領に多大な被害が出ることは確定していた。
ーーだが、それは本来であればだ。
今この場には、タカシ=ハイブリッジ騎士爵、それに彼の第二夫人であるアイリスがいる。
彼らの実力と聖魔法なら、あるいは……。
ソーマ騎士爵領の命運は、彼らに託された。
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