【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

343話 vsクリスティ

 サリエがこの街に来てから数日が経過した。
彼女の冒険者登録とミリオンズへのパーティ登録を済ませておいた。
北の草原で、ファイティングドッグ相手の狩りも行った。

 サリエ=ハルク
役割:医師
職業:治療魔法使い
ランク:E
目的:治療魔法の経験を積むこと

 彼女は戦闘系の技術や魔法の素養は高くない。
棒術が初級クラスであり、ファイティングドッグ相手にじっくり戦えば1対1で勝てる。
あと、治療魔法が初級クラスで、ちょっとしたすり傷切り傷であれば治すことができる。

 ミリオンズで加護の条件を満たしていないのは、サリエだけだ。
何とか早めに条件を満たさないと、彼女だけが俺たちに付いてこれなくなる可能性がある。

 まあ、そのあたりはおいおい考えていこう。
彼女の忠義度は30代後半。
もう少しで、ミッション条件の忠義度40を満たす。
ともにパーティで活動しているだけでも、いずれは達成できるだろう。
そうなれば、ミッション報酬で開放される”加護付与(小)”とやらでサリエを強化できるかもしれない。

 今日は休日だ。
サリエのことは一度置いておくとして、また別の用事を片付けよう。

 ハイブリッジ家において、登用試験組や奴隷組のみんなは元気に働いてくれている。
俺に対する忠義度も全体的に上々だ。
そんな中、1人だけ忠義度がイマイチな者がいる。
犯罪奴隷の猫獣人クリスティだ。

 彼女は武闘派の部族の育ちだ。
高い戦闘能力を持つ。
少なくともそこらの冒険者よりは強い。
この屋敷の警備兵として、大切な戦力だ。

 しかし、1つ大きな問題がある。
クリスティは、自身よりも弱い者には従わないという気質を持っているのだ。
ここをクリアしないと、警備兵として十分な活躍は期待できない。
今のところ最低限の指示には従ってくれているが、やや警備の手を抜いている気配を感じる。

 そろそろ、俺の実力を見せつける頃合いだ。
俺はクリスティの部屋へ向かう。
ミティ、アイリス、サリエもいっしょだ。

 ちなみに、モニカとニムは率先して別棟の建築の指揮を取ってくれている。
目下、街の大工たちにより建設が進められているところだ。

 ユナは、馬の世話に仕方をヴィルナやハンナに教えている。
マリアは、ロロやリンと庭で遊んでいる。

「クリスティ。ちょっといいか?」
「はっ。なんだよ? キゾクサマ自らお出ましとは」

 クリスティが自室でリラックスしたまま、そう言う。
今、彼女は勤務時間外だ。

「むっ。あなた、その態度はなんですか? タカシ様が自ら足を運んでくださったというのに」

 ミティが不快そうにそう言う。

「いや、いいさ。それよりも、俺とクリスティで模擬試合をしないか? そろそろ俺の実力を見せておこうかと思ってな」
「そりゃいい! あたいより弱そうなキゾクサマに従うのは、うんざりしていたんだ」

 クリスティがそう言う。
俺は彼女とともに、屋敷の庭に出る。

「さて……。俺が勝てば、まじめに働いてもらうぞ」
「はっ。あたいが従うに値する男かどうか、お手並みを拝見してやるぜ」

 俺とクリスティが対峙する。
ミティ、アイリス、サリエがそれを見守る。

「武器は何か使うか?」
「必要ない。あたいが信じるのは、この肉体のみ」

 クリスティがそう言う。
彼女は武闘家か。
いずれ、ゾルフ砦に連れて行ってあげれば学ぶことも多いかもしれない。

「では、俺もクリスティに合わせよう」
「はっ。ムリはしなくていいんだぜ? 騎士様よお。剣で来いや」

 クリスティが挑発めいた仕草でそう言う。
風呂や食事でいい暮らしをさせてあげている分、彼女の俺に対する忠義度は少し上がってきている。
今は10代後半くらいだ。

 その忠義度でこの言動ということは、これがもともとの彼女の言葉遣いということだろう。
極端に俺がなめられているわけではないはずだ。

「騎士爵は授かったが、何も剣ばかりが取り柄というわけではない。火魔法や治療魔法も得意なんだ。そして、それらほどではないが武闘もそれなりに修めている」
「はっ。それなり程度で、あたいに勝てるつもりか?」
「もちろんだとも。Bランク冒険者にして、騎士爵を授かった実力を見せてやろう。……いくぞ!」

 俺はさっそく、クリスティに接近する。

「ワン・スリー・マシンガン!」

 まずは小手調べだ。
13発の蹴りで様子を見る。
あえて闘気を控えめにしている今の状態からでは、これぐらいが限度だ。

「はっ。悪くはねえが、1発1発が軽いぜ!」

 クリスティが俺の蹴りを見切り、的確にさばいていく。
彼女の言う通り、1発あたりの威力はさほどない。
闘気も控えめにしているしな。

「今度はあたいからいくぜ! うおおおぉ!」

 クリスティの連撃だ。
なかなか悪くない。
だが、視力強化のスキルをレベル2にまで伸ばしている俺を圧倒するほどではないな。

「……甘い! ここだ!」

 俺は彼女の連撃のスキを突いて、一撃を入れる。

「がはっ!」

 彼女が後方へ弾き飛ばされる。
確かな手応えがあった。

「よし。これで実力の差がわかっただろう。明日から、警備兵としてまじめに働くんだぞ」

 俺はそう言って、撤収しようとする。
しかし。

「ま、待てや! あたいはまだ負けていない!」

 クリスティがそう言って、立ち上がる。
目にはまだ戦闘意思が宿っている。

「今のは油断しただけだ。闘気を開放して本気を出せば、あたいが勝つ! はあっ!」

 彼女がそう言って、闘気を開放する。
なかなかの闘気量だ。
1年前の俺やミティよりもずっと多い。
だがーー。

「一体いつから、本気を出していないのがお前だけだと錯覚していた?」

 俺はそう言って、闘気を開放する。
先ほどの戦闘では、俺はほとんど闘気を使っていなかった。
ここからが本番だ。

「なっ!? ば、化け物……」

 クリスティが信じられないものを見るような目で俺を見てくる。
俺の闘気術のレベルは4。
上級ではあるが、化け物というほどでもないと思うんだけどな。

 上には上がいる。
武闘関係のスキルに特化して伸ばしているアイリスは、闘気術レベル5と聖闘気術4まで伸ばしている。
彼女に比べれば、俺はまだまだ常識人だ。

「この程度の闘気で戦意喪失か? 負けを認めるのだったら、明日からまじめに働くんだぞ?」
「はっ! たとえ勝ち目がなくても、あたいは最後まで諦めない。奇跡を起こすぜ! うおおおぉ!」

 クリスティが俺に突撃してくる。
破れかぶれか。

 しかし、これはこれで悪くはない選択だ。
闘気の出力や格闘の技量に差がある以上、彼女にとって長期戦は不利。
短期決戦に挑むほうが多少の勝機は見いだせる。

 彼女が渾身の右ストレートを俺にぶっ放す。
俺はそれをヒラリと回避し、彼女の背後に回る。

「奇跡は、めったに起こらないから奇跡と言うのだ。残念だったな」

 トンッ。
俺は彼女の首筋に手刀を叩き込む。

「うっ!」

 クリスティはうめき声をあげて、倒れ込んだ。
しばらく待つが、彼女は起き上がってこない。
これにて勝負ありだ。

「よし。これで文句ないな? 治療魔法をかけてやろう」

 俺はクリスティに治療魔法をかける。
彼女は無事に回復し、起き上がる。

「はっ。あたいより強いことを認めるぜ、ご主人。これからは言うことを聞いてやるよ」

 クリスティがそう言う。
あれ?
あんまり態度が変わっていないな?

 忠義度を確認する。
…………おお!
忠義度が30に達している。
ちゃんと上がっているじゃないか。

 やはり、言葉遣い自体は彼女本来のものということか。
俺に対する呼び方が、”お前”から”ご主人”に変わっているだけずいぶんと進歩したとも言えるだろう。

「タカシ様。話には聞いていましたが、とんでもなくお強いのですね……」

 サリエがそう言って、熱っぽい目でこちらを見ている。
彼女には、俺の治療魔法の腕前は披露済みだ。
そして、北の草原でのファイティングドッグ狩りでもある程度の実力は見せている。
しかし、一定以上の強敵との戦いを見せたのは今が初めてだった。

「まあ、これくらいはな」

 俺はそう言う。
まだまだ、俺の全力はこんなものではないぞ。
オリジナル火魔法のフレアドライブや百本桜、それに獄炎斬という奥の手もあるしな。

「しかし、自信をなくすぜ。あたいには戦闘能力しか取り柄がねえってのに……」
「自信をなくす必要などない。なかなか悪くない動きだった。なあ? アイリス」
「そうだねー。筋はかなりいいよ。ちょっと身体能力の高さに依存しているところがあるから、技巧も身につけたいところだね」

 アイリスがそうアドバイスする。
アイリスは身体能力や闘気の出力に優れているが、それ以上に技巧に優れている。
もともと技巧派の武闘家だったのもあるし、俺のステータス操作で器用強化のスキルをレベル3にまで伸ばしているのもある。

「はっ。小手先の技巧なんざ、興味ねえよ」
「まあそう言うなよ。アイリスは俺の第二夫人だぞ」
「多少の言うことは聞いてやるが、戦闘に関してはあたいより弱いやつの言うことは聞けねえな」

 クリスティがそう言う。
彼女は、俺のことは認めてくれた。
しかし、直接戦っていないアイリスは別ということか。

「ふふ。それなら、ボクと戦ってみるかい?」
「はっ。いいだろう。ご主人のお気に入りだからといって、手加減はしねえぜ!」

 そんな感じで、俺に続いてアイリスとクリスティの試合も行われた。
結果はもちろん、アイリスの圧勝。

 そりゃそうだ。
武闘においては、俺とアイリスの間にもかなりの差があるからな。
クリスティ<<タカシ<<アイリスの不等式が成り立つ。

 とはいえ、クリスティも決して弱いわけではない。
Cランク下位ぐらいの実力はありそうだ。
キリヤには負けるだろうが、ヴィルナやヒナ相手なら基本的には勝てるだろう。

 今後、警備兵としてきちんと務めていってほしいところだ。

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