【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

291話 記憶を取り戻せ! ナーティア編

 盗掘団の捕縛作戦の後処理中だ。
ソフィアたちの睡眠魔法により眠らされていた俺たち先遣隊は、無事に目を覚ました。
まだ状況を完全には把握できていないが、捕縛作戦は無事に成功したようだ。

 ブギー頭領やジョー副頭領、それに下っ端戦闘員たちの多くは縄で拘束されている。
一方で、ナディアやパルムス、それに下っ端戦闘員の一部は拘束されていない。
何やら、ラーグの街の元住民で今は記憶を失っている人たちらしい。

 ナディアの本名はナーティア。
モニカの母親だ。

 パルムスの本名はパームス。
ニムの父親だ。

 モニカの父ダリウスや、ニムの母マムの口ぶりからは、死別してしまっているような雰囲気を感じたのだが。
どうやら、ここ西の森の奥地で生きていたようだ。
ただし、彼女たちは記憶を失ってしまっている。
何かの事件にでも巻き込まれたのかもしれない。

 生きていてよかった。
それは間違いない。
しかし、ダリウスとマムの再婚話はどうなるのだろう?

 彼らは、ナーティアやパームスが死亡してしまったものと思っているはずだ。
やることはやってしまっているかもしれない。
これは浮気になるのか?

 ラーグの街に帰ったら、修羅場になる可能性がある。
いや、それよりも生きていた喜びのほうが大きいか?
まあこの辺は俺が考えても仕方ない。
なるようになるだろう。

「それで、ボクとタカシが治療するのはどの人なの? 重傷者はいないみたいだけど」

 アイリスがマリーにそう問う。

「外傷の治療というわけではない。治療してほしいのは、記憶喪失者たちだ。高度な治療魔法は、失った記憶を取り戻す効果もあるとされているのだ」

 マリーがそう言う。
彼女が事情を話し始める。
俺たちが眠っている間に、ブギー頭領などから事情を聞き出していたようだ。

 今から数年前に、ラーグの街から王都へ向かう馬車が何者かに襲われる事件があった。
乗客や護衛の冒険者が全員行方不明になったらしい。
その乗客の中には、ナーティアとパームスも含まれていた。

 馬車自体は、全壊した状態で見つかったそうだ。
ただし、おびただしい血痕といっしょにだ。
王国の調査隊は、乗客たちは死亡した可能性が非常に高いと判断して、乗客の家族などに通告した。

 この判断は、ある程度は妥当だろう。
”死体がなければ死亡を認めない”とすると、相続などがいつまでも行えないことになるからな。
どこか一定の基準でそういう判断も必要だ。
現代日本の法律で言うところの、失踪宣告というやつである。

 ただし、今回の件に限って言えば、それは早とちりだったようだ。
馬車を襲ったシルバータイガーは、ブギー盗掘団によりかろうじて撃破されていたのである。

 ちなみにシルバータイガーは、災害指定生物第2種に指定される強力な魔物だ。
討伐には、本来であればBランク冒険者クラスの実力者が必要らしい。
おそらく、ホワイトタイガー、ジャイアントゴーレム、ミドルベアあたりよりも強いだろう。
キメラと同格ぐらいかもしれない。

 ブギー盗掘団がシルバータイガーを撃破したことにより、乗客たちの命は助かった。
だが、シルバータイガーの魔力波という攻撃により乗客たちは脳にダメージを負い、記憶を失ってしまった。
そんな彼らを一度街に帰すという話もあったそうだ。
しかし、本人たちが命の恩人であるブギー盗掘団の面々に恩を返したいと言ったため、彼らは盗掘団の一員として活動を始めることになったとのことだ。

「話が本当ならば、盗掘の罪を減じる余地がある。シルバータイガーを倒してくれたとなると、ちょっとした英雄だからな。だが、現時点で話を鵜呑みにするわけにもいかん。何とか記憶喪失者たちの記憶を取り戻して、より正確な情報がほしいのだ」

 マリーがそう言う。
シルバータイガーを撃破した功績により、盗掘の罪が減るわけか。
まあ、盗掘は殺人などと比べると軽い罪だしな。

「もちろん僕たちも試したことがあるけど、僕たちレベルの治療魔法では効果がなかったんだ。悪いけど、任せたよ」

 ソフィアがそう言う。
彼女たちの中には、治療魔法を使える者が複数人存在する。
まだ10代という年齢を考慮すれば、十分に優秀だ。

 しかし、上級の治療魔法は残念ながらまだ使えないらしい。
聞いたところ、中級のエリアヒールの合同魔法は使えるそうだ。
広範囲の治療をすることには長けているが、重傷者や記憶喪失者の治療には不十分といったところか。

「わかった。では、俺たちの治療魔法を試してみよう」
「そうだね。まずは……」

 アイリスが候補を探す。
ナーティア、パームス。
他にも、元冒険者やその他同行していた人など、記憶を失っている人はたくさんいる。
あと、犬のリックにも余裕があればかけておきたいところだ。

 ただ、最初の1人に名乗り出るには少し勇気が必要だ。
だれか名乗り出る者はいないものか。

「……うん。最初は私にかけてもらおうかな」
「お母さん!?」

 最初の1人に立候補したのは、モニカの母ナーティアであった。
なかなか度胸がある。
モニカも、時おり男勝りな面を見せることがあった。
母親譲りの性格だったか。

「はやく、かわいい娘との記憶を思い出したいしね。もう少しで思い出せそうな気もするんだけど……」
「お母さん……。うん、はやく思い出してね。お父さんのことも……」

 ナーティアとモニカがそう言う。

「では、さっそく。いくぞ、アイリス」
「うん。いつもどおりに息を合わせよう」

 俺とアイリスで、治療魔法の詠唱を始める。

「「……彼の者に安らかなる癒やしを。リカバリー」」

 大きな癒やしの光がナーティアを覆う。
そして、しばらくして。

「……ううっ!」

 ナーティアが頭を押さえ、よろける。
しばらくして、彼女の目に涙があふれてくる。

「お母さん!? だいじょうぶ?」
「……うん。だいじょうぶよ。私のかわいいモニカ。……すべて思い出したわ。ずいぶんと待たせてしまったね」

 ナーティアがそう言う。
無事に記憶を取り戻したようだ。
モニカがナーティアに駆け寄り、抱きつく。

「私ね……。料理がすごくうまくなったんだよ。お父さんもよく褒めてくれるんだ」
「まあ、そうなの。モニカは小さい頃から、料理の練習をがんばっていたものねえ。お父さんも、鼻が高いだろうね」
「うん……。それでね。この人と今度結婚するんだ。タカシっていうんだけど。優しい人なの」

 モニカが俺のことをそう紹介する。
優しい……か。
それはどうだろう。

 今回のブギー盗掘団の捕縛作戦では、俺の本性があらわになってしまった気がする。
闇の瘴気は、人の負の感情を増幅させて暴走させる効力を持つ。
つまり、その人の負の本性があらわになるのだ。

 俺が優しいのは、あくまで忠義度稼ぎなどの打算によるところが大きい。
チートにより強大な力を手に入れつつある今、好き放題に振る舞ってしまいたい欲はある。
闇の瘴気のようなきっかけがあれば、その欲が出てしまうこともあるかもしれない。
今後は注意しないとな。

 一般市民や同業である冒険者たちに対して、横暴な態度で接しないのは当然のことだ。
そして、盗掘団のような犯罪者に対しても同じである。
人殺しレベルの犯罪者はともかく、盗掘ぐらいの犯罪者であれば、更生の余地は十分にある。
俺はステータス操作のチートにより抜群の戦闘能力を持つし、余裕を持って接していくべきだろう。
人に優しくあろう。

「それはいいことね。……タカシさん。娘をよろしくお願いね」
「ええ。もちろんです」

 俺はナーティアに対してそう答える。
そして、モニカとナーティアは母娘で積もる話を始めた。

 長い間離れ離れになっていた親子の感動的な再会シーンだ。
俺もその感動を共有したいところだが、俺にはまだやるべきことがある。

「ナーティアさんの記憶の復元はうまくいったな。よかったよ」
「そうだね。次の人は……」

 アイリスが次の候補者を探す。
ナーティアという成功例が1人出たことで、ハードルは下がっただろう。
みんな、前向きに考えているような顔をしている。

 ただし、アイリスのMPを考慮すると、今治療できるのは後1人ぐらいだろう。
さて、だれを治療するか。

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