【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

284話 術式纏装”雷天霹靂”

 ”ミリオンズ”のモニカ、ニム、ユナ。
”疾風迅雷”のストラス、セリナ、カトレア。
”荒ぶる爪”のディッダとウェイク。
救出隊の8人が、西の森を歩いていく。

「こっちみたいだ」

 モニカが先導し、ずんずんと進んでいく。
彼女は兎獣人として生まれつき聴覚に優れている。
その上、タカシのステータス操作により聴覚強化をレベル2にまで伸ばしている。
森の奥からかすかに聞こえる盗掘団らしき人の話し声や気配を感じ取っているのだ。

「(あそこだ)」

 モニカが小声でそう言う。
ニムやユナが、モニカが指差したほうを見る。
盗掘団らしき面々が、ほら穴の周りにたむろしていることを確認した。

 ほら穴の前に待機しているのは、パルムスとリッキー。
ソフィアたち”光の乙女騎士団”の4人。
それに、下っ端戦闘員が数人だ。

「(あ、あいつら……。マリーさんも言っていたけど、盗掘団と繋がっているなんて……)」

 ユナがそう言う。
彼女はソフィアたちと面識がある。
とはいえ、タカシが一方的にソフィアに絡んだところに同席していただけなので、決して友好関係があるわけではないが。

「(くんくん……。あ、あのほら穴からタカシさんの匂いがする気がします)」

 ニムが鼻を鳴らし、そう言う。
彼女は嗅覚強化のスキルは持っていないものの、犬獣人の生来の特徴として嗅覚に優れている。
タカシたちがいるほら穴まである程度近づいた今なら、ギリギリその匂いを感じ取ることができる。
もし嗅覚強化のスキルを取得していれば、タカシの匂いをよりはっきりと感じることができただろう。

「(そうだね。私にも、タカシたちの声がかすかに聞こえるよ)」
「(ふふん。無事を確認できて、ひとまず安心だわ。さて、どうやって攻めるかだけど)」

 モニカとユナがそう言う。

 タカシたちが捕まるほどの手練が相手だ。
ここは慎重に動かないといけない。
ニムとユナはそう思ったが。

 ザッ。
モニカが、単身でほら穴のほうへ向かっていく。

「(え、ちょっと。モニカ?)」
「(モニカさん!)」

 ユナとニムがモニカを制止しようとするが、モニカは止まらない。
モニカは、盗掘団に対して少しイラ立っていた。
せっかくタカシと結婚することになったのに、こんなところで邪魔されている場合ではないのだ。

「(仕方ねえなあ。俺も付いていってやるぜえ)」
「(くっくっく。俺も行こう)」

 ディッダとウェイクが、モニカに付いていく。
若手の暴走は、たまにあることだ。
ベテランの彼らは、この程度のことでは動じない。

 ユナ、ニム、ストラス、セリナ、カトレア。
残された5人も、後を追うべきか。
それとも、別の方角から攻めるべきか。
彼女たちがそんなことを考えているとき。

「あら。かわいいお客さんね。私がもてなしてあげるよ」

 別方向から現れたナディアが、ニムたちにそう声をかける。
彼女の側には、ブギー頭領とジョー副頭領、それに下っ端戦闘員たちがいる。

「部下にばかり任せてられん。俺も戦うぞ」
「無理はしないでください、ブギー頭領。まだキズは全快していないでしょう」
「それを言ったら、お前も全快ではないだろう。ムチャはお互い様だ」

 ブギー頭領とジョー副頭領がそう言う。

「ふふん。私たちの相手はあなたってわけね」
「の、のぞむところです!」

 ユナとニムが戦闘態勢に入る。

「へっ。相手にとって不足なしだぜ!」
「自分たちに勝てるとは思わないことなの」
「マクセルさんは、私が助けます!」

 ストラス、セリナ、カトレアがそう意気込む。
”ユナ、ニム、ストラス、セリナ、カトレア”vs”ナディア、ブギー頭領、ジョー副頭領、下っ端戦闘員複数名”の戦闘が始まろうとしていた。



 その一方で、モニカはずんずんとほら穴まで近づいてきていた。
その後ろから、ディッダとウェイクが彼女を追いかけている。

「ん? 君は……」
「何者だ? 嬢ちゃん」
「ワンワンッ!」

 ソフィアとパルムスがモニカの存在に気づく。
リッキーが威嚇の声をあげる。

 そして、パルムスの配下の下っ端戦闘員コンビが先頭に立ち、モニカを警戒する。

「ひゃっはー! 迷子か? 何も見なかったことにして帰るなら今のうちだぜ」
「ひーはー! 何なら森の出口まで送っていってやってもいいぜ!」

 下っ端戦闘員コンビが、下卑た声でそう言う。
声色は不穏な感じだが、言っている内容は結構紳士的だ。

 だが、もちろんモニカが帰ることはありえない。
彼女が上級雷魔法の詠唱を始める。

「……万物貫く雷の精霊よ。我が求めに応じほとばしれ……」

 上級雷魔法の詠唱は長い。
モニカが詠唱を続けていく。

「こ、これは……。上級の雷魔法だよ!」

 ソフィアがそう警戒の声をあげる。

「ちっ。野郎ども、あの嬢ちゃんを止めろ!」
「ひゃっはー! 承知しやした!」
「ひーはー! 任せてくだせえ!」

 パルムスの指示に従い、下っ端戦闘員コンビがモニカに攻撃を加えようとする。
が、その少し前にモニカの詠唱が終わろうとしている。

「……我が敵の頭上に降り落ちよ! 神鳴(カミナリ)」

 ピカッ!
ゴロゴロゴロ!!!

 空が光る。
天から雷が降り落ちる。
雷が下っ端戦闘員コンビと、モニカ自身に直撃する。

「ひゃっはー! 痺れたぜ……」
「ひーはー! 見事……」

 下っ端戦闘員コンビはそう言って、ダウンした。

「ちっ。俺のかわいい部下たちを……」

 パルムスがそうイラ立つ。
ソフィアが下っ端戦闘員コンビの容態を確認する。

「……だいじょうぶ。命に別状はないみたいだ」

 ソフィアがそう言う。
彼女がモニカのほうに目を向け、言葉を続ける。

「でも、君はだいじょうぶなのかな? 制御ミスかは知らないけど、君自身にも落ちていたよね。降伏してくれるなら、治療魔法をかけてあげるけど」

 上級の雷魔法、神鳴(カミナリ)。
イメージした地点に落雷を発生させる攻撃魔法だ。
威力や当たりどころによっては、致死レベルのダメージを負うことも考えられる強力な魔法である。

 術者自身に落ちるのは、制御ミスとしか考えられない。
おそらく、取得したばかりの上級魔法を無理に使ってしまったのだろう。
ソフィアはそのようなことを考えていた。

 ソフィアたち”光の乙女騎士団”の4人が、モニカににじり寄る。

 だがーー。

「問題ないよ。わざとだから」

 モニカがそう言う。
降り落ちた雷を、モニカは手で受け止めていた。
そしてーー。

「術式纏装(じゅつしきてんそう)、”雷天霹靂(らいてんへきれき)”!」

 バチッ。
バチバチッ。
モニカの回りに、電流がほとばしる。

「なっ!? その技はいったい……」
「これは……!?」

 ソフィアたち”光の乙女騎士団”が、驚愕の声をあげる。
彼女たちはモニカを警戒し、防御の構えを取ろうとする。
しかし、その前に。

「ダブルファイブ・マシンガン!」

 モニカの超速の蹴りだ。
ひと息の間に繰り出される55発もの蹴りが彼女たちを襲う。

「きゃっ!」
「がっ!」
「うっ!」

 ソフィア以外の3人は、大ダメージを受けてあっさりとダウンした。

「くっ。僕は簡単には負けない!」

 ソフィアは多少のダメージは受けつつも、まだまだやる気だ。

「さすがは特別表彰者だ。あの程度では仕留め切れないようだね」

 モニカがソフィアにターゲットを絞る。

「もう1回いくよ。ダブルファイブ・マシンガン!」
「くっ。ううっ!」

 モニカの目にも留まらぬ連撃に、ソフィアは防戦一方となる。
攻撃を必死に防ぎつつ、聖気と闘気を高めていく。

「神よ。僕に力を。聖剣エクスカリ……」

 ソフィアが聖気を剣にまとい、何やら大技を発動させようとする。
だが、その技が発動する少し前に。

「タケミカヅチ!」
「ぐあっ!」

 モニカの雷速の一撃が、ソフィアに入った。
彼女が大きなダメージを受け、倒れ込む。

「……なるほど……。今の僕では勝てない。特別表彰者じゃないと侮って油断していた僕のミスか……」

 ソフィアはそう言って、気を失った。

「ふう。これで6人……」

 モニカがそう言って、ひと息つく。
下っ端戦闘員コンビと、ソフィアを含む”光の乙女騎士団”の4人を撃破した。
合わせて6人を倒したことになる。

「おうおう! 俺のかわいい部下たちに、ソフィアちゃんたちまで。ずいぶんと暴れてくれるじゃねえか!」
「ワンワンッ!」

 パルムスとリッキーが、モニカに迫る。
他の下っ端戦闘員たちは、ディッダやウェイクと交戦中だ。

「本番はここからだ。あのスピードなら、ギリギリ対応できないことはないぜ。それに、俺の土魔法は雷魔法と相性がいいんだ。……はああ! ロックアーマー!」

 パルムスが土の鎧をまとう。
さらに、従魔のリッキーにも同じく土の鎧をまとわせている。

「……我が敵を撃て! ライトニングブラスト」

 モニカの手から、電流がほとばしる。
パルムスとリックにヒットする。
しかし。

「はっ。効かねえよ」
「ワンワンッ!」

 土は電気をある程度通す。
モニカが雷魔法を放ったところで、パルムスやリックの土の鎧に阻まれ、彼ら自身には届かない。
そして、電流はそのまま地面に流れていってしまう。

「なら、この”雷天霹靂”の真骨頂を見せてあげるよ。……ふっ!」

 モニカが超高速で動き始める。
スピードでパルムスとリックを翻弄する。

「なっ! バカな。なんだ、このスピードは! さっき以上の速さだ」
「ワンワンッ! ワオン……」

 パルムスとリッキー。
ともに、モニカの動きについていけていない。

「ダブルセブン・マシンガン!」

 モニカの超速の蹴りだ。
ひと息の間に77発もの蹴りを放つ。

「ぐああっ!」
「ワオンッ……」

 パルムスとリッキーは、大ダメージを受けて倒れた。

「……ふう。私としたことが、ちょっとムチャをしちゃったな。他のみんなは……」

 モニカが術式纏装”雷天霹靂”の状態を解除し、あたりを見回す。 
この技は、あえて魔法を自分の身に受けることにより、魔法の力を自身の力に変えるものである。
何やら、魔法学園都市シャマールで流行している新しい戦闘技法らしい。
冒険者ギルドにて先輩魔法使いたちにアドバイスをもらいつつ、モニカ自身の努力によってここまで昇華したのである。

 魔力の消費が激しく、肉体への負荷も大きい。
あまり長時間は使えない。
強敵とのここぞというときにだけ使っていくことになるだろう。

「モニカの嬢ちゃん! こっちを手伝ってくれえ!」
「くっくっく。俺たちだけではギリギリだ」

 ディッダとウェイクがそう言う。
ピンチというほどではないが、下っ端戦闘員たちの数の力に押され気味のようだ。

「わかった! 今行くよ!」

 モニカがディッダとウェイクの加勢に向かう。
パルムス、リッキー、ソフィアといった主力を撃破したことにより、この場での優勢はもはや揺るがないだろう。

 モニカは、”雷天霹靂”を抜きにしてもかなり強い。
そして奥の手である”雷天霹靂”状態のモニカのスピードは、”疾きこと風のごとし”状態のタカシや、聖闘気”迅雷の型”状態のアイリスを上回る。
スピードにおいて、ミリオンズ内でもモニカが最速となったことになる。
彼女は今後、この技を活かしてミリオンズの一員として大活躍をしていくことになるだろう。

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