【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

240話 アルカの協力を取り付ける

「……ん? ここは……?」

 俺は目を覚ます。
頭には柔らかい感触がある。
何をしていたところだったか。

 …………。
……。

 そうだ。
俺はアルカが召喚したクマと戦闘していたのだった。
俺が惜しくも敗北してしまった。

 俺の敗因は何だろうか。
慢心。
環境の違い。

 いや、こんなことを考えている場合じゃない。
ミティたちはどうなった?

「お目覚めですか。タカシ様」

「痛むところはない? ボクの治療魔法で治療しておいたけど」

 ミティとアイリスが俺の顔を覗き込み、そう言う。
どうやら、俺はミティにひざ枕をしてもらっているようだ。
この柔らかい感触は、ミティの太ももの感触か。

「ああ。だいじょうぶだ。心配かけてすまない」

 俺はそう言って、起き上がる。
ミティとアイリスの他、モニカ、ニム、ユナもいる。
とりあえず、みんな無事のようだ。

「あはは。ごめんね。くまっちがやり過ぎちゃったみたいで」

「がうっ!」

「ん?」

 ええと。
少し聞き慣れない声だ。
この声はだれだったか。

 俺は声の主のほうを見る。
アルカだ。
アルカとクマがいる。

「……く!」

 俺は慌てて臨戦態勢を取ろうとする。
しかし。

「ちょっと待ってよ、タカシ」

「お、落ち着いてください」

 モニカとニムがそう言って、俺を制止する。

「ふふん。アルカさんとは、一時休戦したわ。現状では害はないようだしね」

「そうなのか? シトニさんとクトナさんの誘拐犯だろう?」

「あはは。確かに、ディルムさんからはシトニさんを連れてくるように言われたけどね。でも、その役目はウィリアム君が全うしてくれるって言っていたし。僕としては、依頼任務完了だよ。あとは好きなことをするつもりなんだ」

 アルカがそう言う。

「ちょっと待ってくれ。情報量が多い。……まず、ディルム子爵はシトニさんを名指ししていたのか?」

「あはは。そうだねえ。何だか、ご執心みたいだよ」

 なぜだろう。
シトニは、ライカンスロープの特徴が濃い。
せっかく奴隷として貰い受ける者は、血が濃い者を選んだといったところだろうか。
しかしそれなら、妹のクトナや村の戦士たちでもよかったはず。
ディルム子爵の意図が読みきれない。

「あとは……ウィリアム? だれだそれは?」

「ボクは聞いたことがある気がするけど……。どういう人だったかな」

 俺の言葉に、アイリスがそう言う。
うろ覚えのようだ。

「あはは。ウィリアム君は冒険者だよ。僕も冒険者だし、冒険者仲間だね。別にパーティは組んでいないけど」

「あっ。そうだ。思い出したよ。結構有名な人だよね。特別表彰者だったはず。二つ名は、ええと……」

 アイリスががんばって思い出そうとする。

「あはは。ウィリアム君の二つ名は”支配者”だよ。ちなみに僕は、”ビーストマスター”だね。よろしくね。”紅剣”のタカシ君」

 アルカがそう言う。
支配者のウィリアム。
ビーストマスターのアルカ。
2人とも、冒険者ギルドの特別表彰者か。

「ああ、よろしく頼む。アルカさん」

 俺はそう言って、アルカと握手を交わす。
冒険者同士は、味方でありライバルであり敵でもある。

 ゾルフ砦の防衛戦のような場合は、頼りになる味方となる。
希少な魔物や素材を取り合う場合は、ライバルとなる。
そして、今回のようにお互いが対立する勢力に戦力として雇われた場合は、敵同士にもなりうる。

 今後は、他の有力な冒険者たちの動向にも注意したほうがいいかもしれない。

「それで、アルカさん。これからは好きなことをするつもりというのは?」

「あはは。もちろん、レッドウルフのテイムだよ! あのモフモフ具合。僕の見込み通り、最高だったよ。ぜひ、僕の召喚獣に加わってほしいね!」

 俺の問いに、アルカが興奮した様子でそう言う。
彼女は、レッドウルフのテイムを目的としてこの村まで来たらしい。
ディルム子爵の依頼を引き受けたのは、あくまでついでとのことだ。

 アルカの召喚魔法についても、話を聞いておく。
一定以上親密になった魔物を、自在に召喚し使役する魔法だそうだ。
一定以上親密になれば、その魔物の戦闘能力などが強化され、術者である彼女との意思疎通も図りやすくなる。

 なかなか便利で強力な技術だ。
”一定以上親密になる”という条件を満たすのがどの程度大変かによって、使い勝手が大きく変わってくるだろう。
俺やミティのように動物との相性がやや悪い人だと、イマイチ使い勝手の悪そうな魔法ではある。
動物との相性がとにかく大切だ。

「ふふん。この村にいるレッドウルフは、村ぐるみで育てているのよ。簡単には譲れないわね!」

「えええ! そんなあ……」

 ユナの言葉に、アルカがガックリと肩を落とす。

「あはは。こうなりゃ、実力行使で……」

「ちょ、ちょっと待ちなさい! いい提案があるわ」

 物騒なことを言い出すアルカに対して、ユナが慌ててそう言う。

 アルカは、基本的には人畜無害そうな少女だ。
しかし、あまり物事を深く考えていなさそうなところがある。
モフモフという欲望を第一に、いろいろと突っ走りそうだ。
こちらでうまく手綱を握る必要がある。

「あはは。提案って?」

「あなたも冒険者なのでしょう? 私たちの依頼を受けなさい。依頼内容は、ディルム子爵からシトニとクトナを奪還すること。報酬は、レッドウルフ1匹よ。活躍度に応じて、金貨を追加で支払ってもいいわ」

「あはは。それはいいね。がんばっちゃうぞー! 待っててね、うるふっち!」

 アルカがうれしそうにそう言う。
彼女が俺たちに見せた召喚獣は、クマとトラだ。
そして、新たにレッドウルフを加えようといったところか。
俺たちに見せていないだけで、他にも手札はあるのかもしれないが。

 いずれにせよ、シトニとクトナの奪還に向けて、強力な助っ人の参戦だ。
村長や村の戦士たちとも相談して、最終的な作戦を練ることにしよう。

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