【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

235話 ミティvsニュー

 ミティ、アイリス、モニカ、ニムが隊長を撃破した。
それぞれ、他の仲間のもとへ向かい始める。

 ミティも森の中を駆け足で移動していく。
しばらく走ったところで、ふと違和感を覚えた。

「(あの木の後ろ……。何者かの気配を感じますね)」

 だれかが隠れているようだ。
ミティがタカシたちに合流するだけであればスルーしてもいい。
しかし、ガーネット以外にも村への潜入を試みる敵兵がいる可能性もある。
みすみす見逃すわけにはいかない。

 ミティは足を止める。
気配がする方向を向く。

「だれですか? 姿を現しなさい」

 ミティがそう言う。
彼女はタカシや仲間たちに対しては丁寧な言葉遣いだが、敵対者に対しては容赦のない言葉遣いと態度になる。

「……ふん。なかなか勘が鋭いじゃねえか」

 木の後ろから男が現れてそう言う。
ウォルフ村の者ではない。
しかし、ディルム子爵領の領軍でもなさそうだ。
年齢は20代くらいか。

 さらに、傍らには女もいる。
10代後半くらいの猫獣人。
種族は異なるが、ミティと同年代だ。

「ウィリアム様に向けてあの態度……。失礼極まりないですね。粛清致しますか?」

 女が敵意を込めた目でミティを見て、そう言う。
ミティがハンマーを構え、迎撃の体勢をとる。

「ふん。あまり痛めつけすぎても、後の報復が面倒だ。適当に相手をして時間を稼げ。できるな? ニュー」

「はっ! 仰せのとおりに!」

 ウィリアムの指示に、ニューが元気よくそう返答する。
それを聞いて、ウィリアムは駆け出す。
ニューがミティを足止めしているスキに、ウォルフ村へ侵入するつもりのようだ。

「あはは。ラッキー。じゃあ、僕も」

 ウィリアムとニューの後ろからまた別の少女が出てきて、ウィリアムに付いていく。

「ふん。お前も来るのか? アルカといったか。せいぜい、邪魔はするなよ」

「あはは。わかってるよー。ウィリアム君」

 新しく現れた少女はアルカだ。
”ビーストマスター”の二つ名を持つ特別表彰の冒険者である。

 ウィリアムとアルカ。
2人で、ウォルフ村へ向かって駆け出す。

 もちろん、それを黙ってみているミティではない。

「ここは通しませんよ」

 ミティがそう言って、ウィリアムとアルカを止めようとする。
しかし。

「貴様の相手は私だ。……ささっ、ウィリアム様。どうぞお通りください」

 ニューがそう言って、ミティの妨害をする。
そのスキに、ウィリアムとアルカはウォルフ村方面へと走り去っていった。

「まずはあなたを手早く倒すことにしましょう」

 ミティがそう言う。
ウィリアムとアルカの動向は気になるが、彼らには強者の雰囲気がある。
さすがのミティでも、強者と1対3ではどのみち厳しい。
ここは、目の前の1人を倒すことに専念する。

「身の程知らずが。せいぜい、殺してしまわないように気をつけることにしよう。なあ? ミティ=ハイブリッジ」

「私の名前を知っている……? あなた、何者です?」

「私の名前はニュー。偉大なる支配者、ウィリアム様に仕える第一の下僕だ」

 ニューがそう言う。

「下僕……ですか。あの男も、いい趣味をしているようですね」

「……! 貴様、ウィリアム様をバカにしたか? 雑種と呼ばれ蔑まれていた私を、ウィリアム様は救ってくださったのだ! 侮ることは許さない!」

 ミティのふとした発言が、ニューの逆鱗に触れた。
ニューが臨戦態勢に入る。
彼女は棒術を使うようだ。
1メートルを超える長い棒を構えている。

 それを見て、ミティも戦闘態勢に入る。
彼女はハンマーで戦う心づもりだ。

 ニューとミティ。
両者、にらみ合う。
先に動いたのはニューだった。

「しゃぁっ!」

 ニューが軽快な動きでミティに接近する。
棒を巧みに操り攻撃を繰り出す。

「むっ! なんの!」

 ニューの高速の攻撃に、ミティは難なく対応する。
ミティは器用さや機動力にはやや欠ける。
しかし槌術レベル5により、ハンマーの取り扱いにおいては達人の領域にある。
そこらの兵士や冒険者には、近接戦闘においてそうそう引けは取らない。

 しばらく、ニューの棒術とミティの槌術による攻防が続く。
ミティが優勢だ。

 ニューが距離をとり、体勢を立て直す。

「なかなかやるようだな」

「あなたが口ほどにもないだけです」

「抜かしよる。しかしこれならどうだ!」

 ニューが魔法の詠唱を開始する。

「……凍てつけ! アイスボール!」

 ニューが初級の水魔法により氷の弾を放つ。

「むっ!」

 ミティが避ける。

「まだまだ! ……凍てつけ! アイスボール! アイスボール!」

 ニューによる怒涛の水魔法の連発。
ミティが必死に避ける。

 ミティは機動力にやや欠けるため、わずかな魔法の途切れ目だけではなかなか接近することができない。
このままではジリ貧になる。
ニューのMP切れを待つしかないのか。

 ……いや。
ミティにはまだ選択肢がある。

「……ここです! ビッグ・ホームラン!」

 ミティが狙い玉を捉え、ハンマーにより弾き返した。
ジャストミートだ。
強烈なライナーがニューを襲う。

「なにっ!? くっ!」

 ニューは間一髪それをよける。
しかし。

「……我が敵を切り裂け! エアリアルスラッシュ!」

 ミティの初級の風魔法を放つ。
ザシュッ!
ニューの腕に、切り傷が入った。

「ちっ。風魔法まで使えたとは。情報にないな。厄介な相手だ。認識を改めよう」

 ニューがそう言う。
懐からポーションを取り出し、傷口にかける。

「さて、どうするか。……ん?」

 ニューがそう言って、耳に手を当てる。
何かを聞き入っている様子だ。

「ふっ。時間だ。もう少し遊んでやってもよかったがな」

「逃げるのですか? 骨なしチキン野郎が。あなたがその様子では、あのウィリアムとやらの器も知れるというもの」

 ミティがそう言って、ニューを挑発する。

「……っ! 挑発には乗らん。それに、これで勝ったと思わないことだ。次に会うときには、ボコボコにしてやるぞ。ミティ=ハイブリッジ」

 ニューはそう言って、去っていった。
ウォルフ村とは反対の方面だ。

「……去ったようですね。村から遠ざかる方向ですし、彼女を追う必要はないでしょうね」

 ミティがそう言って、思考を整理する。

「あのウィリアムとアルカという奴らは村に向かいました。そちらも気になりますが……。村にも戦士たちが待機しているはずですし、2人ぐらいはだいじょうぶでしょう」

 彼ら2人には強者の雰囲気があった。
しかし、村で待機している戦士たちも、獣化を使いこなす猛者たちだ。
簡単にやられはしないだろう。

「私は、タカシ様ところへ向かうことにしましょう。他のみんなもだいじょうぶでしょうか。少し心配です。急ぎましょう」

 ミティはそう言って、駆け出す。
タカシたちの無事を祈りつつ、道を進んでいく。

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