【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

204話 準決勝 アイリスvsエドワード

 メルビン杯の続きだ。
2回戦の後、30分ほどの休憩時間が設けられている。
アイリスとモニカはゆっくりと休んでいる。

 念のため、俺の治療魔法を彼女たちにかけておいた。
あと、モニカのカカト落としをモロにくらったギルバートにも治療魔法をかけておいた。

 休憩時間がまもなく終わる。
アイリスは治療魔法と休憩により、万全のコンディションとなっている。
一方で、モニカはまだ疲れが残っているようだ。
モニカは体力強化を取得していないしな。
連戦や持久戦は分が悪い。
今後の課題の1つだ。

 さて。
とうとう、次は準決勝だ。
アイリスの試合である。
対戦相手はエドワード司祭。

「お待たせしました! 準決勝戦、第1試合を始めます! アイリス選手対、エドワード選手!」

 司会の人がそう叫ぶ。

「じゃあ、行ってくるよ。エドワード司祭を倒して、決勝戦も勝って、タカシと結婚するんだ!」

「ああ。俺も全力で応援しているぞ!」

 俺はアイリスにそう言う。
仮に優勝できなかったとしても、結婚したいところではあるが。
まあ、このタイミングでその話をしてアイリスの士気を下げる必要もあるまい。

「私も応援しています! がんばってください!」

 ミティ、それにモニカとニムからも激励の言葉がかけられる。

「ありがとう。みんな!」

 アイリスがコロシアムのステージに上がる。
対戦相手のエドワード司祭と対峙する。

「両者構えて、……始め!」

 試合が始まった。

「さて、アイリス君。この1か月でどれほど君が成長したのか、見せてもらうことにしましょう。私も時おり指導していましたが、君の全ての実力を把握しているわけではありませんからね」

「そうだね。もちろんそのつもりだよ」

 アイリスが闘気を練り始める。
それに対応して、エドワード司祭も闘気を練り始める。
 
「「右手に闘気。左手に聖気」」

 アイリスとエドワード司祭。
2人がそれぞれ闘気を開放する。

「聖闘気、迅雷の型、豪の型」

「聖闘気、守護の型」

 アイリスが発動したのは、迅雷の型と豪の型だ。
迅雷の型は、スピードが格段に向上する。
豪の型は、攻撃力が格段に向上する。

 聖闘気の型を2つ同時に発動させることはなかなかの高等技術らしい。
アイリスは前回のガルハード杯や防衛戦、それに潜入作戦やミドルベア戦などにより、実戦経験をたくさん積んだ。
加えて俺のステータス操作の恩恵により、格闘術・闘気術・聖闘気術などのスキルを強化してきた。
そのかいあって、彼女は聖闘気の型を2つ同時に発動させることができるわけだ。
1か月前のエドワード司祭との模擬試合でもこの2つを同時に発動し、彼を驚かせていた。

 一方で、エドワード司祭が発動したのは守護の型だ。
防御力が格段に向上する。
2回戦でのミティ戦や、1か月前のアイリスとの模擬試合でも使っていた。

 シュッ。
さっそく、アイリスが動いた。
目にも留まらぬ速度でエドワード司祭に接近する。

「豪・裂空脚!」

「む!」

 アイリスの超スピードから繰り出される回し蹴りに、エドワード司祭は何とか対応する。

「豪・砲撃連拳!」

 アイリスのパンチの連撃だ。
エドワードが落ち着いて防ぐ。

「ぐぐ……」

 しかし、ガードし切れなかった攻撃もあった。
彼は多少のダメージを受けたようだ。
彼はアイリスから距離をとり、体勢を立て直す。

「なるほど。1か月前より、確かに成長していますね。身体能力、闘気量、格闘術の練度。それに、迅雷の型と豪の型の合わせ技のバランスも向上しているようです。これは私もうかうかしていられませんね」

 エドワード司祭がそう評する。

「へへーん。……と言いたいところだけど。エドワード司祭にはまだ奥の手があるじゃない」

 アイリスが油断のない顔で、そう言う。
今までの彼女であれば、”へへーん”と言ってドヤ顔を披露していたところだ。
彼女は精神的にも成長しているようだ。
少しさびしい気もする。
精神的に成長していないのは俺だけかもしれない。

「そうですね。確かに、私にはまだ奥の手があります」

「なら、早く出してよ。出し惜しみはなしにしよう!」

 アイリスがそう言う。
彼女が言っているのは、1か月前の模擬試合でエドワード司祭が使ったあの技のことだろう。
確か、”五光一閃”だったか。
超スピードの一撃を繰り出す技だ。
アイリスを一撃で戦闘不能に追い込んでいた。

「わかりました。アイリス君がそう言うのであれば、そうしましょう。構えてください」

 エドワード司祭がそう言う。
彼の聖闘気が高まっていく。
今度こそ、見逃さないようにしないと。
俺は、彼を注意深く見……

「五光一閃!!!」

「!!!」

 やはり速い。
超スピードだ。

 ただし、前回と結果は異なる。
アイリスはまだステージ上に立っている。

 対して、エドワード司祭はステージ外に倒れている。
どうやらアイリスに攻撃をいなされ、投げ飛ばされたようだ。
彼が起き上がり、ステージの上に復帰する。

「ま、まさか。まさかですよ。アイリス君。私の五光一閃に対応するとは……」

 エドワード司祭が驚愕した顔でそう言う。

「ボクだって、この1か月で猛特訓したからね」

 確かに、アイリスはこの1か月で鍛錬に励んできた。
加えて、俺のステータス操作の恩恵もある。
今回のスキル強化では、視力強化レベル1を取得した。
エドワード司祭の超スピードへの対応性能はまちがいなく向上している。
それに加えて。

「いや、さすがに1か月で対応できるようになるものではないはずですが。それに、アイリス君が今発動している型は……」

「やっぱりわかるか。黙っていたんだけどね。知っているとは思うけど、これは聖闘気”流水の型”だよ」

 アイリスがそう答える。
迅雷の型、豪の型に加えて、流水の型も合わせて発動していたのだ。
1か月前のアイリスにはできなかった芸当だ。

「20歳にもならないその若さで、聖闘気の型を3つ同時に発動……? とんでもない逸材ですね。才能があるとは思っていましたが、ここまでとは……」

「へへーん」

 アイリスが今度こそドヤ顔を披露する。

「調子に乗らないこと。まだアイリス君の勝ちが決まったわけではありませんよ」

 確かに、エドワード司祭の言う通りだ。
エドワード司祭の必殺技は、アイリスには通用しなかった。
一方で、アイリスの攻撃もエドワード司祭には少しずつしか効かない。
こうなると、長期戦になるかもしれない。
闘気量や格闘における地力などが大切になってくるだろう。

「へへーん。ボクには、まだ奥の手があるんだよ!」

 アイリスがさらなるドヤ顔でそう言う。
奥の手?
何かあったっけ?

「3つの型の同時発動が奥の手ではないと? さらに私を驚かせてくれるのですか。楽しみです」

 エドワード司祭が笑顔でそう言う。
彼は焦ったりはしていない。
純粋に、アイリスの成長を好ましく思っているようだ。

「じゃあ、いくよ。構えてね」

 アイリスの聖闘気が高まっていく。
彼女の奥の手が見られそうだ。
見逃さないようにしないと。
俺は、彼女を注意深く見……

「三光一閃!!!」

「!!!」

 速い。
超スピードだ。

 アイリスからの超スピードの一撃。
エドワード司祭は反応しきれない。
ドガーン!
彼が、ステージと観客席を隔てる壁に激突した。

「エドワード選手場外! カウントを取ります! 1……2……3……」

 このアイリスの攻撃により、エドワード司祭にどの程度のダメージを与えることができたか。
彼の聖闘衣による防御は鉄壁だ。
2回戦でのミティとの闘いでも、彼女のビッグバンを耐えきっていた。

「ぐ……。想像のはるか上を行く成長ですね。アイリス君」

 エドワード司祭が立ち上がり、そう言う。
アイリスの一撃は、彼に確かなダメージを与えたようだ。
2回戦でのミティによるダメージもまだ残っているだろうしな。
彼がややふらつきながら、ステージ上に復帰する。

「うん。ボク、がんばったんだよ。メイビス姉さんに追いつくためにね。それに……」

 アイリスがチラッとこちらを見る。
つられて、エドワード司祭もこちらを見る。

「……なるほど。タカシ君ですか。彼の存在がいい刺激になったようですね」

 エドワード司祭がそう言う。

「そうだね。タカシの成長速度はすごく速い。でもそれだけじゃなくって、危なっかしいところもある。ともに人生を歩むために、ボクも強くならなくちゃと思ったんだ」

「そうですか。お姉さんだけではない、新たな目標を得たのですね。すばらしいことです」

 エドワード司祭が満足気にほほ笑む。

「それで、続きをするんだよね? ボクはまだまだやれるよ」

「いえ、その必要はありません。アイリス君の成長を見られて、安心しました。それに、私のケガは大きいです。もしかしたらどこか折れているかもしれません」

「と、いうことは?」

「……審判。私の負けです。降参します」

 エドワード司祭がそう言う。

「エドワード選手の降参を認めます! 勝者アイリス選手!」

 審判がそうアイリスの勝ちを宣言する。
彼女が見事なリベンジを果たした。

 治療魔法士がエドワード司祭に駆け寄る。
彼らが治療魔法をかけようとする。
それを、アイリスが制止する。

「ちょっと待って。ボクが治療魔法をかけるよ」

 アイリスの治療魔法のレベルは4。
上級だ。
そこらの治療魔法士よりも腕は上だろう。
骨折レベルのケガをしているのであれば、彼女が治療魔法をかけたほうがいい。

「ありがとうございます。お願いしますね。アイリス君」

 アイリスが治療魔法の詠唱を開始する。

「……彼の者に安らかなる癒やしを。リカバリー」

 淡い光がエドワード司祭を包む。

「む? 骨折レベルのケガがすぐに治った……? アイリス君。今の詠唱はリカバリーでしたね?」

「そうだよ?」

「本当に、本当にアイリス君は私を驚かせてくれます。上級の治療魔法まで使えるようになっているとは……」

 エドワード司祭が驚いた顔でそう言う。

「いろいろとがんばったんだよ。ちなみに、聖魔法も中級のセイクリッドチェーンまで使えるようになったよ」

「なるほど……。すばらしい成長です。武闘神官見習いを卒業してもいい頃合いでしょう。教会本部に進言しておきますね」

「ほんとう!? やったあ!」

「ふふふ。今後も期待していますよ。力に溺れず、困っている人を助けることを忘れないでくださいね」

 エドワード司祭はそう言って、ステージから去っていった。
アイリスの成長を見てもらえてよかった。

 さて。
これで、アイリスは決勝戦まで駒を進めたことになる。
次のモニカvsジルガの勝者が、決勝でアイリスと闘うことになる。
はたしてどうなるか。
見どころだ。

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