【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

200話 2回戦 タカシvsアイリス 公開プロポーズ

 メルビン杯の続きだ。
昼休憩が終わり、今から2回戦が始まろうとしている。

「お待たせしました! 2回戦第1試合を始めます! タカシ選手対、アイリス選手!」

 司会の人がそう叫ぶ。

 俺はコロシアムのステージに上がる。
対戦相手のアイリスと対峙する。

 まだ試合開始の前だ。
お互いにリラックスして立っているだけだ。
そのはずだが、彼女の立ち姿には貫禄のようなものが感じられる。

「さっきも言ったけど。いい試合をしようね。タカシ」

「ああ。お互いに悔いの残らない試合をしよう。……ところで、昼食のときに言いかけていたことはなんだ?」

「そのことね。うん。……思い切って言うよ」

 アイリスが改まった顔でそう言う。

「この試合ではボクが勝つ。そして、大会で優勝できたら……」

 アイリスが一呼吸置く。
彼女が意を決したような顔をして、言葉を続ける。

「……私を、タカシさんのお嫁さんにしてください」

「!」

 アイリスからの思わぬ申し出だ。
いや、思わぬと言うと言い過ぎか。
忠義度が50を超えて加護の対象になっている時点で、友好度はかなりあるわけだしな。

 思い返せば、アイリスとの付き合いも結構長い。
彼女と出会ったのは、5月の後半ぐらいだった。
今日は11月25日。
半年ほどの付き合いとなる。

「ああ。俺としては大歓迎だ。断る理由はない」

 アイリスは、武闘神官見習いとして各地を巡っていた。
困っている人を助ける優しい心を持っている。
このゾルフ砦の防衛戦や、その後の潜入作戦にも参加していた。
また、ガロル村でのミドルベア戦やヘルザム戦でも、彼女の力にはお世話になった。

 彼女は向上心が強い。
日々、武闘の鍛錬を続けている。
また、操馬術など新たな技術の習得にも余念がない。

 ミティとの仲も良好だ。
ミティを疎かにするわけではないが、アイリスと結婚しても問題はないと思う。
この国では一夫多妻が認められているからな。

「ほんとう? うれしい! ボク、がんばって優勝するよ」

 彼女の口調がもとに戻っている。
この普段の口調もかわいいし、あの改まった丁寧な口調も新鮮でかわいかった。

「男に二言はない。ただし、そういうことなら俺からも条件がある」

 俺は改まった口調でそう言う。

「条件?」

「この試合で俺が勝ったら、アイリスには俺のお嫁さんになってもらう」

 俺はビシッとそう言う。

「え? それってつまり……」

「そういうことだ。アイリスと結婚するためにも、この試合は勝たせてもらうぞ!」

「わかった。ボクも、タカシと結婚するために、まずはこの試合に勝たせてもらうよ!」

 俺とアイリス。
試合前の決意をそう言葉にする。

「あのー。そろそろ試合を始めてもよろしいでしょうか?」

 審判がおそるおそるといった感じでそう言う。
しまった。
ここはステージの上じゃねえか。

「あ、ああ。すいません。だいじょうぶです」

 俺はそう返答する。

「ヒューヒュー! 兄ちゃん、やるじゃねえか!」

「お幸せにねー」 

 観客席からそう声が飛ぶ。
観衆の中での公開プロポーズをしてしまった。
かなり恥ずかしい。

「アイリスさん! がんばってください! 応援しています!」

 ミティが声援を送ってくれている。
彼女が俺とアイリスの結婚に猛反対していなくて一安心だ。

 さて。
気を取り直して、俺とアイリスは試合開始に備える。
審判の目つきが変わる。

「両者構えて、……始め!」

 試合が始まった。

「聖闘気を使う時間は与えない! 先手必勝だ!」

 俺はそう言って、アイリスに駆け寄る。

「くらえ! 砲撃連拳!」

 俺がアイリスに教えてもらった聖ミリアリア流の技だ。
パンチの連撃がアイリスを襲う。

「甘いよ! ほいっと」

 俺の連撃を、アイリスが軽くいなす。
彼女の技量はかなりの水準だ。
格闘術レベル4に加えて、器用強化のスキルも伸ばしているしな。

 まだまだ。
次の攻撃だ。

「ワン・エイト・マシンガン!」

 俺はさらに蹴りの連撃を放つ。
この1か月の鍛錬により、数を増やすことに成功している。

「……そこ!」

 アイリスが俺の蹴りを見切った。
彼女が俺の足を掴む。

「せえいっ!」

 アイリスが俺をステージの端まで投げ飛ばす。
俺は受け身を取り、体勢を立て直す。
ダメージは少ない。
しかし。

「聖闘気、迅雷の型」

 アイリスの聖闘気の発動を許してしまった。
マズイぞ。
俺も急いで、闘気を高める。

「剛拳流、疾きこと風の如し」

 メルビン師範から教わった、風林火山の”風”の型だ。

「スピード勝負だね。いくよ、タカシ」

「こい! アイリス!」

 シュッ。
シュバババッ。

 お互いが超高速移動で攻防を繰り広げる。
俺もアイリスも視力強化レベル1を取得済みなので、お互いの動きも捉えることができる。

「な、なんだあの2人の動きは!」

「動きが見えないぞ! すげえスピードだ!」

「ガルハード杯……。いや、ゾルフ杯でも上位を狙えるレベルじゃないか!?」

 観客席からそういった声が聞こえてくる。
確かに、今の俺たちの武闘戦闘能力はかなりの水準だと思う。
ガルハード杯でも安定して上位を狙えるだろう。
ゾルフ杯のレベルはよく知らないが。

「やっぱり、迅雷の型だけではタカシは倒せないね。こっちも発動するよ。聖闘気、豪の型」

 アイリスがそう言って、聖闘気の型を追加で発動する。
これで、彼女はスピードに加えて攻撃力も高まった。

「はあっ!」

 アイリスが掛け声とともに仕掛けてくる。
速い。
それに、フェイントを織り交ぜてくる。

 右。
いや左。
やっぱり右か!

「ぐっ」

 アイリスの高速のフェイントに、俺は対応し切れない。
有効打をもらってしまった。
重い攻撃だ。

 アイリスの器用さを活かしたフェイント。
加えて、スピードとパワーも高水準。

「……強いな、アイリスは。俺に勝ち目はないかもしれない」

「ま、タカシのおかげでもあるけどね。それで、降参してくれるの?」

 アイリスがそう言う。
彼女が強いのは俺のステータス操作の恩恵もあるが、彼女自身の努力も大きい。

「降参する前に、俺の全力を出し切りたい。俺の最強の防御をアイリスが貫けるか、勝負しないか?」

「いいよ。それでタカシの悔いが残らないのなら」

 アイリスの了承を得ることができた。
俺はさっそく、防御のために闘気を集中させていく。

「剛拳流、動かざること山の如し。”鉄心”」

 これが、今の俺の最強の防御だ。
風林火山の”山”の中でも、少し上位の型である。

「それでいいんだね? タカシ」

「ああ。全力できてくれ。アイリス」

「もちろん。ボクの全力をぶつけるよ。聖ミリアリア流奥義……」

 アイリスがこちらに駆け寄ってくる。

「豪・爆撃正拳!」

「…………!!!」

 アイリスのパンチが俺にヒットする。
俺の闘気の防御により威力は減退しているはずだ。
しかし、それでも十分に重い打撃だ。

 痛い!!
いやこれは………。
かなり痛い!!

 パンチの衝撃で、俺はステージ上を滑るように吹き飛ばされる。
何とか、足はステージについている。
まだ俺は立っているぞ。
耐えきった。

 試合には負けるだろうが、この攻防の勝負は俺の勝ちと言っていいだろう。
男としての最後の意地を見せることができた。

「アイリス。俺の勝……」

 俺は勝利宣言をしようとするが。
途中で口が回らなくなる。
そのまま、俺はステージに倒れ込み、意識を失った。

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