【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

196話 1回戦 ミティvsレナウ

 メルビン杯の1回戦の続きだ。
俺とアイリスはそれぞれ1回戦を突破した。

 次は、ミティの試合だ。
対戦相手は、レナウ。
ババンと同じく、俺はこの名前を聞いたことがない。

「続きまして、第3試合を始めます! ミティ選手対、レナウ選手!」

 司会の人がそう叫ぶ。

 ミティがコロシアムのステージに上がる。
対戦相手のレナウと対峙する。
彼は10代前半くらいの少年だ。

「よろしくお願いしますね!」

 ミティが元気よくあいさつをする。
緊張などはほとんどしていないようだ。

「よ、よろしくお願いします。……あの、前回のガルハード杯で優勝されていた方ですよね?」

 レナウが少し緊張した面持ちでそう言う。

「そうですね! まあ、ちょっと出来すぎな結果だったとは思いますが」

 ミティがそう言う。
確かに、出来すぎなところもあった。

 まず、優勝とは言っても実質的にはベスト4だ。
防衛戦などとの兼ね合いでガルハード杯が中止となり、参考記録で同時優勝の扱いになったのである。

 また、対戦相手の油断や心意気のおかげで勝てた面もある。

 1回戦の相手のマーチンは、スピード自慢の選手だった。
うまく彼の油断をついて、ミティがカウンターを決めて勝つことができた。

 2回戦の相手のジルガは、筋肉自慢の選手だった。
彼がミティとの正面勝負に付き合ってくれたこともあり、ミティが勝つことができた。

「む、胸をお借りします。悔いのないように全力を出し切ります!」

 ミティの対戦相手のレナウは、やや緊張しているようだ。
まあ、ガルハード杯優勝という肩書はなかなかのインパクトがあるしな。
もしミティの試合を直に見たことがあるのであれば、彼女の豪腕も知っているはず。
かなりの脅威を感じていることだろう。

「両者構えて、……始め!」

 試合が始まった。
まずはお互いに距離を保ちつつ、様子をうかがっている。
ミティはスキなく構えている。

「……来ないのですか? 骨なしチキンな少年ですね」

 ミティが相手のレナウをそう煽る。
彼女は口撃も駆使するタイプだ。
前回のガルハード杯でのマーチン戦やジルガ戦、それに1か月前のメルビン師範との模擬戦。
それぞれ、口撃を駆使して試合を優位に運ぼうとしていた。

 純粋な武闘の技術ではないので、好ましい戦法とは思わない人もいるだろう。
俺としては、自分がやられるのは嫌だが、自分がやるのはOKな感じだ。
ミティは俺の妻だし、彼女が他人にやるのはもちろんOKだ。

 それに……。
ミティの罵倒。
あれはあれで悪くない気もする。
俺も彼女に言葉責めしてもらいたいかもしれない。
レナウ少年に、変な性癖がつかないことを祈ろう。

「くっ。……せいっ!」

 レナウは、罵られて興奮するタイプではなかったようだ。
彼がミティに攻撃を繰り出す。
しかし、あれは良くないな。

 ガルハード杯でミティと闘ったマーチンやジルガは、彼女の挑発にあまり反応していなかった。
まあ、マーチンは油断して大技を繰り出したし、ジルガは力勝負にこだわったり、少し甘いところもあったが。
少なくとも、真正面から挑発に乗ることはなかった。
身体能力や技量に加えて、こういう精神面でも実力差は出てしまう。

 レナウの攻撃をミティがしっかりと防ぐ。
そして。

「つーかまえた」

 ミティがレナウの腕を掴む。

「ぐっ!」

 レナウが必死に振りほどこうとするが、ムダだ。
もう遅い。
彼女の豪腕からは逃れられない。

 前回のガルハード杯2回戦では、マッスルなジルガが投げ飛ばされていた。
ラーグの街の自宅の風呂場では、俺が身を以て彼女の力を確認した。
ガロル村の淑女相撲大会では、カトレアが投げ飛ばされていた。

 ミティの豪腕に対抗できたのは、今のところは3人ぐらいか。
現ハガ王国王妃のナスタシア。
現ハガ王国六武衆のギュスターヴ。
ゾルフ砦のメルビン師範。

 ただし、ナスタシアやギュスターヴとミティが力比べをしたのは、5か月ほど前のことになる。
あれからミティはかなりの成長をした。
今なら彼女の腕力が勝るのではなかろうか。
そう考えると、ミティに対抗できるのは”侵掠すること火の如し”を発動中のメルビン師範ぐらいとなる。

 そこらの武闘家や冒険者では、ミティの力には対抗できない。
レナウも同じく対抗できないだろう。

「せえぃっ!」

 ミティがレナウを力いっぱい投げ飛ばす。

「うわああぁっ!」

 レナウは為す術もなく、ステージ外へと飛んでいく。
ドガーン!
彼が、ステージと観客席を隔てる壁に激突した。
あれは大ダメージだろう。

「レナウ選手場外! カウントを取ります! 1……2……3……」

 審判が場外カウントを始める。
10カウントがされればミティの勝ちだ。

 とはいえ、さすがにこれだけでは勝負は決まらないかもしれない。
ただ投げ飛ばしただけだしな。
大ダメージは負っているだろうし、ミティが大きく有利になったことは間違いないが。

「さあ、まだまだ勝負はこれからです! 私の奥の手を見せてあげましょう!」

 ミティがそう叫ぶ。
彼女の奥の手とは、メルビン師範のもとで特訓した”あれ”のことだろう。
ミティの超パワーがさらに強化される、恐ろしい技だ。
俺はあの状態の彼女とは闘いたくない。

 良かった………。
壊されるのがレナウで良かった…!!

 いや。
まあ、ミティもさすがに相手が壊れるまでの全力は出さないだろうが。
相手のレベルに応じて出力を調整するはずだ。

 レナウの実力はどの程度のものか。
大ダメージを負ってしまった以上、出し惜しみはできないだろう。
彼の実力を見せてもらおう。
彼がステージへ復帰してくるのを待つ。

「…………?」

 ミティが首をかしげる。

 妙だな。
レナウが起き上がってこない。
ミティも困惑顔だ。
その間にも、審判のカウントは進んでいる。

「……8……9……10! 10カウント! レナウ選手の場外負けです! 勝者ミティ選手!」

 審判がそう宣言する。
マジか。
あれだけであっさりと終わってしまったよ。

 治療魔法士がレナウに駆け寄り、治療魔法をかける。
彼が立ち上がる。
予想以上にダメージは大きかったようだが、重傷というほどでもなかったようだ。

 ミティがレナウに歩み寄る。
手を差し伸べる。

「お疲れ様でした。少し暴れ足りませんでしたが……」

「ひぃっ。……い、いえ。いい経験になりました。ありがとうございました」

 レナウがビビりながらもミティの手を取り、立ち上がる。
一礼をして、足早に去っていった。
今日の試合がトラウマになっていたりしないよな?
少し心配だ。

 ミティがステージからこちらに戻ってくる。
祝福しておこう。

「おめでとう! ミティ!」

「おめでとー」

 俺とアイリス、それにモニカとニムでミティを出迎える。

「ありがとうございます! 少し拍子抜けでしたが、勝てて良かったです!」

 ミティがうれしそうにそう言う。
今の彼女の実力では、やや物足りない相手だったかもしれない。
暴れたりなかった分は、2回戦以降で発散してもらおう。

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