【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

168話 ボフォイの街の餅つき大会 前編

 街の冒険者ギルドでミドルベアと霧蛇竜ヘルザムの討伐を報告した。
その際に、マクセルたちと再会した。

 せっかくなので、いっしょに街を歩きながら情報共有をする。
俺、ミティ、アイリス、モニカ、ニム。
マクセル、ストラス、セリナ、カイル、レベッカ。
同行者はこの10人だ。

 まずは彼らの近況報告をきく。
俺たちがゾルフ砦を離れた後、マクセル、ストラス、カイル、レベッカの4人でパーティを組んで冒険者として活動を始めたそうだ。
パーティ名は疾風迅雷。
ストラスは風のような素早さを持つし、マクセルは雷竜拳を扱う。
彼らのイメージに合う、いいパーティ名だと思う。

 彼らは、しばらくはゾルフ砦周辺で活動していたそうだ。
ある日、ハガ王国への観光客の護衛依頼を受けた。
ハガ王国にてストラスとセリナの間にちょっとした出来事があり、彼女がパーティ加わった。

 セリナの同行目的は、修行。
それに、オーガの代表として人族に友好を広める役目も負っているそうだ。
バルダイン陛下も公認とか。
その後は活動範囲を広げ、このボフォイの街にまで行き着いたというわけだ。

 俺たちの近況報告もしておいた。
俺たちが彼らと行動をともにしていたときは、俺、ミティ、アイリスの3人パーティだった。
その後に加入したモニカとニムとは初対面だ。
彼女たちを紹介しておく。

 また、つい先日にミドルベアとヘルザムを討伐したことも話しておいた。
俺は少しドヤ顔で話したのだが、残念ながら彼らはヘルザムを知らなかったので、反応はイマイチだった。
ミドルベアは知っており、少し驚いた顔をしていた。

 そして、ミティとの結婚も知らせておいた。
意外にも、セリナが興味津々だった。
ミティに根掘り葉掘り詳細を聞いていた。

 せっかくなので、マクセルたちを結婚式に誘っておく。
新郎側の友人席にだれもいないというのは寂しいしな。
丁度いい。

 そのように近況報告をお互いにしながら、街を歩く。
何やら騒がしい一帯がある。
何かのイベントをやっているようだ。

「へい! らっしゃい、らっしゃい! 餅つき大会だよ! 参加費無料! 優勝者にはお餅1か月分と金一封だ!」

 餅つき大会?
何を競う大会なのだろう。

「へえ。餅つきですか。私も村で何度かやったことがあります。なつかしいです」

 ミティがそう言う。

「お餅かー。マインさんたちのお餅はおいしかったな。私も料理人として、レパートリーの1つに加えたいところではあるけど」

 モニカがそう言う。

「そうだな。せっかくだし参加してみるか? 参加費は無料みたいだしな」

 どうやら、3人1組で参加できるようだ。

「そうですね。私の力ならうまくつけるかもしれませんし。道具も、ハンマーと同じような形状ですし」

 俺の提案に、ミティがそう答える。

 確かに、餅つきはハンマーのような形状の道具で餅をつく。
ミティの槌術を応用すれば、うまく餅をつくことも可能だろう。

 あの餅つきの道具の正式名称は何だったか。
えーと、……そうだ。
確か、杵だ。
きね。

 ちなみに入れ物のほうは、臼という名前だったはず。
うす。

「私もやってみようと思う」

 モニカがそう言う。

 参加は3人1組。 
あと1人はどうするか。

「アイリス、ニム。参加してみるか?」

「うーん。ボクはいいかな。ニムちゃんは?」

「わ、わたしはうまくできるか不安なので……。タカシさん、どうぞ」

 アイリスとニムはあまり参加に前向きではないようだ。

「わかった。それなら、俺が出ることにしよう」

 俺たちの参加メンバーは決まった。
俺、ミティ、モニカだ。

「ところで、マクセルさんたちは出ないのですか?」

 俺は隣にいるマクセルにそう問う。

「そうだな。せっかくだし、出てみるか。進化した雷竜拳を見せてあげよう」

 マクセルがそう言う。
いや、餅つきで雷竜拳は関係ないような気もするが。


●●●


 餅つき大会が進んでいく。

 基本的にはのほほんとした大会だ。
参加者がついた餅を、10人の審査員が試食して採点する方式だ。
また、余った餅は見学者も少し試食することができる。

 素人の参加者が多い。
これなら、俺たちの優勝もワンチャンあるかもしれない。

 順調に大会が進行していく。
いよいよマクセルたちの出番になった。

「次はチーム疾風迅雷のみなさま! ステージに上がってください!」

 餅つき大会の司会がそう言う。

 今回の参加者は、マクセル、カイル、レベッカの3人。
ストラスとセリナは見学だ。

 マクセルが杵を持つ。
大きく闘気を集中させたマクセルが餅つきの構えを取る。
子分のカイルとレベッカは手でこねる役目のようだ。

「いくぞ、お前ら!」

「兄ぃ! いつでもオーケーだぜ!」

「任せて!」

 マクセル、カイル、レベッカが闘気を開放する。

「俺に合わせろ!」

「ほっ!」

「はっ!」

「ふっ!」

 3人の息の合った餅つきだ。

「せぇい!」

「どりゃあ!」

 絶え間のない餅つき。
お餅がいい感じにこねられていく。

「これで仕上げだ! ……ぬうう! 雷竜拳奥義! 雷竜咆哮餅つき!」

 マクセルが勢いよく杵を振り下ろす。
腕だけでなく、体の各部に闘気を分散させ、すべての筋肉の動きをうまく腕に乗せている。
筋力や闘気だけでなく、技術も伴ったすばらしい餅つきだ。

 餅が強烈な衝撃を受け止める。
餅だけでは衝撃を受け止めきれず、臼にも衝撃が伝わる。
臼にひびが入る。
臼のひびが広がっていき。
粉々に砕け散った。

 ダメじゃねえか。

「ピピーッ! チーム疾風迅雷、失格です!」

 係員が、マクセルたちに失格を言い渡す。

「くっ。やってしまったな……」

 マクセルたちが舞台からトボトボと撤収する。

「おいおい。マクセル。張り切りすぎだぜ」

「やれやれなの。ポンコツはストラス君だけで十分なの」

 ストラスとセリナがマクセルたちを迎える。

「お疲れ様でした。マクセルさん」

 俺はそう言って彼をねぎらう。

「かっこ悪いところを見せてしまったな……。君たちは、力を入れすぎないように注意したほうがいいよ」

 ストラスとマクセルがそう言う。

「アドバイス、ありがとうございます。……ミティ。力を入れすぎないように気をつけような」

「わかりました! むんっ!」

 ミティがそう意気込む。
だから力んだらダメなんだって。


 その後も大会は進行していく。
何やら強者の風格があるごつい男たちがステージ前で待機している。

「次はチームまんぷく亭のみなさま! ステージに上がってください!」

 餅つき大会の司会がそう言う。

「ういい。やっと俺たちの出番か」

「素人ばかりでレベルの低い大会だぜ」

「優勝はいただいたも同然だな」

 ごつい男が3人、ステージに上がる。
自信があるようだ。

「いくぜ! てめえら!」

「「おうよ!」」

 男たちが餅つきを始める。
かなり息のあったコンビネーションだ。

「おらあ!」

「せいやっ!」

「そおぃっ!」

 力加減も絶妙。
力強く振り下ろしている。
臼が壊れないギリギリの力加減だろう。

 餅つきが終わる。
審査員たちと観客たちに餅が配られる。

 俺たちにも餅が配られた。
食べてみる。
うん。
なかなかおいしい。
以前食べたマインたちの餅に引けを取らない。

 審査員たちが餅を食べ終える。
採点の時間だ。

「さあ! まんぷく亭の餅つきの評価は……?」

「10点!」「10点!」「9点!」「10点!」「10点!」

 審査員たちが10点満点で点数をつけていく。

「10点!」「9点!」「9点!」「10点!」「10点!」

 10人の審査員が点数をつけ終わる。

「合計、97点です! これは良い記録が出ました。暫定トップです!」

 かなり高スコアだ。
さすが、自信満々で臨んだだけはある。

「満点には3点足りなかったか。ま、優勝には十分だろ!」

「「ガハハハハ!」」

 まんぷく亭の男たちは満足気な様子だ。

 この点数を俺たちが超えるのは厳しいか。
まあ、どうせ参加費は無料だし気楽にやればいいのだが。
少し気後れするな。

「どうしましょう……。私、あれに勝てる自信はありません」

 ミティが弱音を吐く。

「オレもだな。到底勝てる気がしねえ」

「確かにね。でも、料理を極めていくためには黙って引き下がるわけにはいかない……!!」

 モニカがそう言う。

「しかしよォ」

 ポン。
なおも躊躇している俺の肩を、だれかが叩いた。

「やあ。タカシ君たち。君たちもここにいたんだね。顔色が少し悪いけど、どうしたの?」

 マインだ。
マーシーとフィルもいる。

「マインさん。俺たちは餅つき大会にエントリーしていたのですが。強敵を前に、尻込みしているところです」

「お餅1か月分が……」

 ミティがしょんぼりしている。

「なるほど……。君たちは身体能力が高いし、いい線はいけるのだろうけど。相手が悪い。あいつらは、ただの一般参加者じゃない」

「餅つきが生活の一部になってるな。いわば餅つきのプロだな。うんうん」

「餅は餅屋」

 マイン、マーシー、フィルがそう言う。

「私たちに任せときな」

 マインたちがさっそうと餅つきのステージに向かう。
非常に頼りになる人たちの参戦だ。
自信がある様子だったし、勝ちはもらったな!

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