【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

132話 いわくつきの中古住宅をもらう

 パーティ登録をしてから、数日が経過した。
モニカとニムの冒険者活動は順調だ。
ステータス操作の恩恵もあり、単独でファイティングドッグを問題なく狩れるようになっている。

 この数日でレベルは上がっていない。
パーティで行動しているため、1人あたりのレベリング効率が悪くなるのは仕方ない。

 そろそろ次の段階に進みたい。
モニカとニムのレベルがあと1ずつ上がれば、考えてみよう。
二手に分かれてファイティングドッグを狩るか。
西の森などに狩場を移すか。
他の街に行ってみるか。
要検討だ。

 パーティ登録を行った日に、新たなミッションを受け取った。
ガロル村を訪れよう、という内容だった。
このガロル村とやらの情報収集を行う必要がある。
距離や安全性によっては、その村まで遠征することを検討しよう。

 さて。
そのあたりの話は一旦置いておこう。
今日は冒険者として以外の大きなイベントがある。
例の中古住宅を引き渡してもらえる日が、今日なのである。

 他の村を訪れるミッションが出たばかりだ。
少しタイミングが悪い。
とはいえ、もらって困るものでもないだろうしな。
ありがたくもらうつもりだ。

 家の贈り主は、とある資産家だ。
以前、難病に苦しむ女の子を治療魔法レベル4で治療したことがある。
無事に病状が改善し、その女の子と両親からとても感謝された。
その女の子の親が資産家で、治療のお礼として中古の一戸建ての家をもらえることになったのである。
やはり、良いことはするものだ。

 その資産家の人はロダンという名前だ。
彼に案内され、家にやってきた。
ミティ、アイリス、モニカ、ニムもいっしょだ。

「こちらが、今回お譲りする家でございます」

 かなり大きな家だ。
2階建て。
各階に10部屋ぐらいあるだろう。
庭もそれなりに大きい。
立派な門もある。
敷地面積は、坪数で言えば200坪以上はあるか。

「すごく……大きいです」

 ミティがそう言う。

「本当にいただいてもよろしいのですか?」

 俺はそう言う。

 治療魔法レベル4の”リカバリー”を使える人が希少とはいえ、破格の報酬ではなかろうか。
ロダンの娘は、確かに難病だった。
ダリウスやマムより少しマシではあったが。

 ロダンの娘の治療のために、何度も通って治療魔法レベル4を施した。
俺はMP関連のスキルを取得しているから、1日に数度くらいは発動できる。
普通の治療魔法師であれば、治療魔法レベル4は1日1回か2回ぐらいが限度だろう。
そう考えると、治療魔法レベル4に対する報酬は、治療魔法士1人の1日分の人件費と考えることができる。

 初級の治療魔法を使えるようになるには、専門の学校や教会で数年間学ぶのが一般的だと聞いている。
初級であれば、少し珍しいが使える人は使えるという感じだあろう。
一方で、上級の治療魔法であるレベル4”リカバリー”を使える人は、相当珍しい。
地球で言えば、高難度の手術を行える腕を持つ優秀な医者といったところだろうか。
日当で数十万円以上もらっていても不思議ではない。

 そう考えていくと、治療魔法レベル4の1回の発動に対する報酬は、金貨数十枚以上が相場である可能性がある。
ロダンの娘には何度も治療魔法を施したので、本来の相場なら金貨200枚以上もらうべきだったとも考えられる。
その金貨の代わりに、この中古の家をもらえることになったわけだ。

 中古とはいえ、大きな家だ。
やはりちょっとお得な感覚はある。
まあ、治療魔法の相場は推測だし、この世界の不動産の相場も全然知らない。
あまり深く考えてもさほど意味はないか。
もともと、金銭目的で治療をしていたわけでもないしな。

「もちろん、お譲りすることに二言はありません。ただ……1つだけ、条件がございます」

 ロダンが意味深な顔でそう言う。
やはり、うまい話には裏があるか。

「この家には、ゴーストが住みついているのです。浄化させる必要があります。そちらのアイリス殿は、聖魔法を使えるとお聞きしましたので、問題ないだろうと思いますが……」

 ゴースト。
幽霊か。
アイリスの聖魔法が有効らしい。
物理攻撃は無効だったりするのだろうか。

「ゴーストね。ボクも浄化させたことはある。だいじょうぶだと思うよ」

 アイリスがそう言う。

「やはりそうですか。それは良かった。ゴーストは夜に出現します。気をつけてください。もっとも、今までの被害はイタズラレベルのものばかりでしたので、大きな心配はないでしょうが」

 ロダンがそう言う。

 イタズラレベルか。
浄化がうまくできなかったとしても、最悪はイタズラを我慢すれば住めるわけだ。

「わかりました。気をつけます」

「今は昼ですので、イタズラの心配はありません。今のうちに家の中をご案内しましょう」

 ロダンが門を開ける。
ロダンの案内に従い、みんなで中に入る。

「こちらが庭です。放置されていたため荒れています。手入れは必要ですな」

 ロダンがそう言う。

 確かに、雑草は伸びているし、地面も一部ひび割れている。
まあ、とりあえず住む分には、庭はあまり関係ない。
少しずつ手入れしていけばいいだろう。

「土が……泣いています」

 ニムがそう嘆く。
彼女は今まで畑仕事を行なってきただけあって、こういう土関係の手入れにはこだわりがあるのかもしれない。
ニムは栽培術を持っているし、彼女に手入れを依頼するのもありかもしれない。

 ロダンの案内に従い、家の中に入る。
大きな玄関だ。
さらに中に入る。

「こちらがリビングです」

 リビングも広い。
ソファやテーブルが置いてある。
みんなでくつろげそうだ。

「家具の一部は前の持ち主が置いていきました。特にいわくつきのものではありませんので、そのまま使っていただいて結構です。ただ……」

「いえーい!」

 ロダンの説明を最後まで聞かず、アイリスがソファにダイブする。

 ボフン。
ソファがほこりをたてる。

「うっ。げほっ」

 アイリスがむせる。

「……ご覧の通り、掃除は必要です。注意してください。少し遅かったようですが」

 ロダンの注意の前に、アイリスが被害を受けてしまった。
まあこれは彼女の自業自得ではあるが。

「……そうみたいだね。掃除しがいがあるよ」

 アイリスが苦い顔をしてそう言う。

 次に案内されたのはキッチンだ。

「へえ。悪くないね。さすがにうちのよりは小さいけど」

 モニカがそう言う。
なかなか立派なキッチンだ。
料理屋のラビット亭より見劣りするのは仕方がない。

「タカシがよければ、今度ここで魚料理をつくってあげるよ」

 そうだ。
魚料理だ。
以前、肉料理ばかりを食べる俺とミティを見かねて、モニカがおいしい魚料理をごちそうしてくれるという約束をしたのだった。

「うん。ぜひお願いするよ。まあその前に、掃除をしないといけないけどね」

 キッチンも、他のところと同じく汚れたりしている。
手入れが必要だ。

「そうだね。掃除は私も手伝うよ。いっしょにがんばろう」

 料理人のモニカが手伝ってくれるのであれば、より適切にキッチンの掃除ができるだろう。
ありがたい。

 ロダンの案内に従い、次の部屋に向かう。

「こちらが、風呂場でございます」

「へえ。お風呂もあるんだ。しかも広いし」

 アイリスがそう言う。

 確かに、かなり広い風呂だ。
その気になれば、10人ぐらいいっしょに入れるかもしれない。

「広い分、お湯はりも大変なのが難点でございます。前の住人は、水の魔石と火の魔石を用いていたと聞いています。消費量が多いので、1か月に1回程度の使用頻度だったようです。そのさらに前の住人は、奴隷に井戸から水を汲み上げさせ、薪を燃やして加熱させていたそうです」

 ロダンがそう言う。
水道やガスなどが発達していないこの世界、この街では、風呂にお湯をはるだけでも一苦労するわけか。
魔石を使うか、人力を使うか。
いずれにせよ、気軽にはこの大きな風呂に入れない。

 ……いや、待てよ?
俺には、水魔法と火魔法がある。
MP関連のスキルも取得している。
水魔法と火魔法を活用すれば、毎日のように風呂に入ることも可能かもしれない。
後日試してみよう。

「水汲みなら、私に任せてくださいね。むんっ」

 ミティが張り切っている。
確かに、力仕事ならミティの出番だ。

「ありがとう。俺の水魔法で足りなければ、お願いするよ」

 俺の水魔法はレベル1。
ウォーターボールだ。
水の球をつくることができる。

 水球の大きさは、取得した当初は最大で野球ボールぐらいまでだった。
その後、基礎ステータスの向上や慣れにより、少し大きな水球をつくれるようになってきた。
とは言っても、せいぜいドッジボールくらいの大きさだ。
この広い風呂に水をはるには、かなりの回数発動する必要があるだろう。

「(タカシ様といっしょに入りたいな……。あんなことやこんなことをしたりして。キャーっ)」

 ミティが小声で何かを言い、顔を赤くしている。
なんだろう?
気になる。

 気軽に風呂に入れる環境が整えば、生活が豊かになるだろう。
ぜひとも前向きに考えていきたい。
性活のほうも豊かになるかもしれない。
女性との混浴は男のロマンだ。

 混浴の妄想をしつつ、風呂場を後にする。

 次は2階だ。
ロダンの案内に従い、2階へ向かう。

 幅の広い階段をのぼる。
踊り場に、大きな絵が飾ってある。

「なんだか……不気味な絵ですね」

「そうだね。何となく嫌な感じがする」

 ミティとアイリスがそう言う。

 絵には、10台前半ぐらいの少女の姿が描かれている。
目を閉じた状態で、椅子に座っている。
なかなかの美人だ。
だが、ミティとアイリスの言う通り、何となく不気味な感じだ。
今にも動き出しそうな気がする。

 そのまま2階へ上がる。
2階には、個人用の部屋が配置されているようだ。

 1つ1つの部屋が大きい。
日本で言えば、20畳以上はあるか。
同じような間取りの部屋が5つ以上ある。

 さらに、少し大きめの部屋もある。
おそらく、家の主人用の部屋だろう。

 その部屋の奥にはまた別の部屋がある。
寝室だ。
ダブルベッドがある。

 思わず飛び込みたくなるが、必死でこらえる。
今飛び込んだら、ほこりまみれになるだろう。
アイリスの二の舞になる、
飛び込むのは掃除してからだ。

 2階の案内が終わる。
みんなで1階に戻る。

「さて。ご案内は以上で終わりとなります。鍵をお渡ししておきます。書類上は既にタカシ殿の所有物件となっておりますので、ご都合の良い日にご引っ越しください」

「わかりました。すばらしい家をいただき、本当にありがとうございます」

 俺はロダンにそうお礼を言う。
彼から鍵を受け取る。

「いえいえ。娘を救ってくれたお返しです。本当に感謝しています」

 ロダンの娘は、ダリウスやマムに次ぐレベルの難病だった。
すぐさま命が失われるような病ではないが、そのままでは天寿を全うするのは難しかっただろう。

「夜に出現するゴーストのイタズラにだけは気をつけてくださいね。……では、私はこれで」

 ロダンはそう言って去っていった。

 書類上はもう俺の所有物件になっている。
宿代の節約のためにも、1日でも早くこの家に引っ越してきたいところだ。

 引っ越すために必要なことは、大きく2つ。

 1つは、ゴーストの浄化だ。
このままだと、夜にイタズラされてしまうらしい。
命に関わるレベルのイタズラはしないらしいので、最悪は放置でもいいが。
できれば浄化しておきたい。
アイリスに聖魔法で浄化してもらおう。

 もう1つは、掃除だ。
庭や風呂の掃除は後回しでもいいとして、寝室やリビングの掃除は必須だ。

 なかなか骨の折れそうな作業が待っている。
しかし、この大きな家が自分たちのものだと思うと、やる気も出る。
新たな家での生活が楽しみだ。

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