【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

121話 ニムの母親の治療

 モニカの父、ダリウスを治療した翌日。
ニムの案内のもと、彼女の家に向かっている。

 俺、アイリス、ミティ、ニム、そしてナック。
総勢5人だ。
目的は、俺の上級治療魔法でニムの母親を治療すること。
ナックは、俺をニムの母親に紹介するために同行している。
アイリスとミティは付き添いだ。

 ちなみに、モニカは自宅でダリウスに付き添っている。
再び容態が急変する可能性もなくもないし、念のためにだ。

 ニムの家は、ラーグの街で比較的貧しい者が住む区域にある。
いわゆるスラムだ。
……いや、スラムと言うとさすがに言いすぎか。
別に無法地帯というわけでもなさそうだ。

「ママ、ただいま。ナックさんとタカシさんを連れてきたよ!」

 ニムがそう言って、家のドアを開ける。

「おかえりなさい、ニム。それにナックさんも」

 ニムの母親が出迎えてくれる。

「マムさん。体調はいかがですかな?」

 ナックがニムの母親にそう尋ねる。

 ニムの母親はマムという名前らしい。
ニムには兄もいるはずだが、今は外出中のようだ。

「体調は問題ありませんわ。ご覧の通り、立って歩くこともできます」

 逆に言えば、体調が優れないときは歩けないレベルだということか。

「それは良かった。今日は、こちらのタカシ氏をご紹介しようかと、訪問しました」

 ナックがそう言う。

「初めまして。タカシと申します」

「あらあら。これはご丁寧に。私はマムです」

 俺とマムは、お互いに挨拶を交わす。

「タカシ氏は、上級の治癒魔法を使えるのです。マムさんの病も、治せるかもしれません」

「まあ。それはありがたいことですが……。あいにく、謝礼はあまり出せませんの」

 マムが困り顔でそう言う。

「お礼はお気持ちだけでも構いませんよ。ニムさんには、いつもおいしいリンゴをいただいていますから」

 本音を言えば、お礼はあるに越したことはないが。
しかし、無い袖は振れないだろうし、仕方がない。

「まあ。ではあなたが、ニムがよくお世話になっている冒険者なのかしら?」

「そうだよ、ママ」

 ニムがそう言う。

「それはそれは。ニムったら、いつもうれしそうにあなたがたの話をするんですのよ。リンゴをたくさん買ってもらえたとか、おいしいと言ってもらえたとか。最近では畑の修復も手伝っていただけたとか」

「喜んでもらえていたのであれば、こちらもうれしいです」

 本音を言えば、第一の目的は忠義度稼ぎだけどな……。
まあそれは言う必要はない。
ニムの笑顔が見たいという気持ちもあるしな。
いい感じの話のまま進めていこう。

「さて。ではさっそく治療魔法を試してみましょう」

「よろしくお願いします」

 マムに手をかざし、詠唱を開始する。

「……彼の者に安らかなる癒やしを。リカバリー」

 癒やしの光がマムを覆う。

「んっ」

「……どうですか?」

「そうですね……。気分が楽になったような気がします」

 気分が楽になる程度か。
なかなかすぐにわかるような効果は現れないようだ。

 ナックがマムを問診する。

「……ふむ。改善の兆候は見られますが。経過観察が必要ですな」

 ナックがそう言う。

「そうですか。今日のところは失礼させていただこうかと思います。また何かあれば、いつでも呼んでください」

 俺はそう言う。

「ありがとうございました。タカシさん」

「あ、ありがとうございました!」

 マムとニムにお礼を言われる。
無事に治ってくれるといいのだが。


●●●


 数日後。
あれ以降、ナックに連れられていろいろな患者の治療を行った。
冒険者の活動は残念ながら疎かになってしまっているが、仕方がない。
病人を目の前にして放っておけるほど、俺の精神力は高くない。
まあ、治療魔法の練習にもなるし、多少の金銭による報酬も受け取ることができた。
さほど悪いことではない。

 治療魔法レベル4のリカバリーは、上級の治療魔法である。
込める魔力やイメージにより、効果の大小は異なる。
ダリウスやマムと同じような難病を治療しようとすれば、消費MPがかなり大きくなる。
MP関連のスキルを取得している俺でも、1日に数度くらいしか発動できない。
普通の治療魔法師であれば、1日1回か2回ぐらいが限度ではなかろうか。

 治療した病人の忠義度は、それなりに高くなっている。
しかし残念ながら、一気に40や50に達する人はいなかった。
死の淵からの治療などであればともかく、多少の病を治療したぐらいでは忠義度40以上は厳しそうだ。
とはいえ、ほとんどの人は20前後にはすぐに達している。
忠義度稼ぎの1つの手段にはなりそうだ。

 また、全体の傾向として、子どもや若い人は忠義度が上がりやすく、年配の方は忠義度が上がりにくかった。
バルダインやマリアの忠義度の上がり方も同じ傾向だ。
やはり子どもや若い人に狙いを絞って忠義度を稼いでいくのが良さそうか。
加えて言えば、子どもに加護を付与できたとしても、冒険者として連れ回すことには抵抗がある。
となると、10代中盤から後半くらいの若者が一番の狙い目かな。
……俺が若い女の子が好きだからそう言っているのではない。
ホントダヨ。

 いろいろな患者の治療を行う傍ら、ダリウスやマムの治療も継続している。
彼らは比較的重い病だったので、上級の治療魔法とはいえ一度では完治できないようだ。
日を分けて何度も治療魔法を施す必要があるとナックから聞いている。
消費MPが大きい上、長期間継続する必要があるとなると、やはり冒険者活動との兼業は厳しい。
ダリウスとマムの治療が終わり次第、冒険者活動に専念していきたいところだ。

 ダリウスの容態は安定している。
また、マムの病状も明確に改善してきている。

 ダリウスはラビット亭で働き始めている。
病み上がりのため、メインはモニカだが。
様子を見つつ、近いうちにダリウスも本格的に復帰するそうだ。

 ラビット亭の客足は順調に伸びている。
ダリウスの復帰に加え、マヨネーズのインパクトもあるしな。

 マムはニムといっしょに農作業をするようになった。
もともとはマムが管理していた畑らしい。
彼女が病で働けなくなり、娘のニムに管理を頼んでいたそうだ。

 ラビット亭とニムの交流は続いている。
畑で収穫した野菜やリンゴなどをラビット亭に卸しているそうだ。

 ニムの母親のマム、モニカの父親のダリウス。
この2人も知り合いになっている。
マムがニムを連れてラビット亭に野菜などを卸しに行ったとき、応対したのがダリウスだった。
何やらいい感じの雰囲気になっているらしい。

 ちょうど俺たちがラビット亭にいるときに、こんなやり取りを見かけたこともある。

「こんばんは。ダリウスさん。お野菜などをお持ちしました」

 マムとニムが、かごに野菜やリンゴを入れて持ってきた。

「これはこれは。いつもありがとうございます」

 ダリウスがそう言って、野菜やリンゴを受け取る。
マムに買取金を渡す。

「こちらこそ助かっています。ありがとうございます。……では、失礼しますね」

 マムがダリウスにお礼を言う。
無事に売買は済んだので、マムが帰ろうとする。

「ちょ、ちょっと待ってください! マムさん」

「……? まだ何か?」

 ダリウスがマムを呼び止める。

「えーと。……そうだ。どうぞ、食べていってください。ごちそうします! もちろんニムちゃんも」

「いえ、そんな。悪いですわ」

 マムが遠慮する。

「いつも上質な果物や野菜をおろしてもらっているお礼です。どうぞ遠慮なく!」

 マムの遠慮にもかかわらず、ダリウスはぐいぐい押している。

「で、では、お言葉に甘えて。ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます!」

 マムとニムがダリウスにお礼を言い、席に着く。

 この一連のやり取りを少し離れたところから見ていた目が8つある。
俺、ミティ、アイリス、そしてモニカだ。
モニカが小声でつぶやく。

「(お父さん、マムさんにやたら甘いのよね。気があるのかしら)」

 なるほど。
ダリウスはマム狙いか。

 ダリウスとマムがくっつくのも、悪くないもしれない。
彼らは、それぞれ伴侶を亡くしてしまっているそうだ。
俺も詳しくは知らないが。

「(まあ、マムさんはまだまだ若いしな。ダリウスさんとも同年代だし)」

「(うーん。再婚するのかな……)」

 モニカが微妙な顔をしている。

「(ひょっとして、モニカは嫌なのか?)」

 俺は小声でモニカにそう問う。
ちなみに俺からモニカに対して丁寧語は使わないようになった。
他人行儀で嫌だと彼女に言われたからだ。

「(……まあ、嫌ってわけじゃないけどね。何か複雑というか。ニムちゃんと姉妹になるのは悪くないけどね)」

 モニカがそう言う。

 親が再婚する可能性が出てくれば、複雑な心境にもなるか。
ダリウスとマムが再婚すれば、経済的には少し安定性が増すだろう。
しかし、再開したての料理屋と、規模が小さめの栽培業。
軌道に乗るまでは、まだまだ油断できないかもしれない。

 俺たちがさらに援助してもいいが、いつまでもそうするわけにもいかない。
そもそも、俺には金貨270の借金が残っているしな。
今回の援助で、手持ちの金貨も少なくなってきている。
借金返済のために、俺自身も金を稼いでいく必要がある。

 彼らにも、俺にも、金は要る。
この課題をどうするか。
実は、俺はあまり心配していない。
今回いろいろとがんばった結果、良いニュースがあるのだ。

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