【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

106話 湖水浴:水着回 後編

 湖水浴の続きだ。

『よーし。みんな! スイカ割りをするぞ!』

 クラッツがそう叫ぶ。

 彼が用意したのは、スイカのような果物だ。
厳密にはスイカは野菜だが。
まあそこはどうでもいい。

 この果物はスイカに酷似しているが、微妙に異なるものだ。
異世界言語のスキルが、ある程度は融通をきかせて翻訳してくれているのだろう。

 スイカ割りが始まった。

「せえぃっ!」

 ミティの全力の振り下ろしだ。
残念ながら外れてしまった。

『ふっ。僕の鑑定の力を持ってすれば、目隠ししていても楽勝さ。……そこ!』

 ディークが振り下ろした棒がスイカにヒットする。
しかし、スイカは割れていない。

『なんだ? もう終わりか? 俺の結界魔法は、その程度ではビクともせんぞ!』

 六武衆の結界のソルダートが、結界魔法で防いだようだ。
……いや、なんでだよ。
なぜ防いだ。

『悪いが、貴様にスイカを割らせるわけにはいかん。リーダーからの指示なのでな』

『よくやった、ソルダート。では次は我が挑戦しよう』

 黒幕は六武衆の束縛のクレアだったようだ。
彼女が次の挑戦者だ。

 クレアが目隠しをする。
スイカのある方向に歩いていく。

『このあたりか?』

『もう少し右だ。リーダー』

 ソルダートの指示に従い、クレアが向きを調整する。

『ここだな? ……ふんっ!』

 クレアが棒を振り下ろす。
見事にスイカが割れる。
確かな手応えを感じたのか、クレアが目隠しを外す。

『ふふふ。やったぁ!』

『見事だ。リーダー』

 無邪気に喜ぶクレアと、それを見て満足気なソルダート。
何となくいい雰囲気だ。
……スイカ割りを妨害されたディークは不満げな顔をしているが。

 その後もいくつかのスイカが割られていく。
割ったスイカをみんなでおいしく食べる。

 近くにバルダインがいる。
少し話しかけてみよう。

「ところで、陛下は泳がれないのですか?」

『ああ。足を悪くしていてな。かつては疾風と呼ばれた我が不甲斐ないものよ』

 いまさらだが、バルダインの二つ名が疾風だ。
そしてナスタシアの二つ名が豪腕。
俺の勝手なイメージで、豪腕のバルダインと疾風のナスタシアと思い込んでいた。
実際は、疾風のバルダインと豪腕のナスタシアだ。

 ナスタシアはミティに力勝負で勝っていたしな。
豪腕の二つ名も納得だ。

 バルダインは足を悪くしているそうだ。
かつて疾風と呼ばれていた素早さは失われてしまっているということか。
彼が全盛期の実力のままだと、戦いで俺が勝つことは難しかっただろう。

「俺の治療魔法を試してみましょうか?」

 俺の治療魔法はレベル3。
中級だ。

『おそらく無駄だろう。かなり上級の治療魔法でないと治せない見込みだ』

 試すだけなら簡単なので、とりあえず試してみた。
残念ながら効果はなかった。

「お力になれずに申し訳ない」

『気にするな。これでも日常生活に不便はない』

「いつか、もっと上級の治療魔法が使えるようになったら、また試してみましょう」

『ああ。その時はお願いしよう』

 バルダインとそう約束する。

 ちなみに彼の忠義度は40くらいだ。
彼の態度からするとかなり気に入られているように思うが、数字はさほどでもない。

 これは推測だが、年齢や立場が上の人ほど、忠義度は上がりづらいのではなかろうか。
まあ、国王である壮年のバルダインが俺に忠義を誓うのは、少し違和感があるしな。
 
 転移魔法陣がうまく使えれば、この国に戻ってくることも容易にできるかもしれない。
治療魔法がレベル4やレベル5になったときには、戻ってくるようにしよう。


『ビーチバレーをするぞ! ギャハハハ!』

 レオさんがそう叫ぶ。

 異世界でビーチバレーという単語が出てくることに若干の違和感を覚えなくもない。
これも、異世界言語のスキルが融通をきかせて翻訳してくれているのだろう。
そういえば、巨大ゴーレム戦では、ミティが”ミティ・ホームラン”という技を使っていた。
ハンマーをフルスイングして敵にぶつける技だ。
もしかすると、野球に酷似した球技とかもあるかもしれないな。

『ボール遊びなら其れがしが付き合おう! 力だけならナスタシア様に次ぐ其れがしの力を見よ!』

 ギュスターヴが張り切っている。

 試合が行われていく。

『ぬうぅっ! 鬼王会心撃!』

 バルダインの強烈なサーブだ。

『エアバースト!』

 ナスタシアの風魔法により、ボールが軌道を変える。
魔法は反則じゃないか?

「視線で狙いがバレバレですよ。雷迅レシーブ!」

 マクセルがうまく回り込み、ボールをレシーブする。

「ナイス! マクセル君! ……豪・裂空脚!」 

 アイリスがオーバーヘッドキックでボールを相手コートに叩き込む。
足を使うのは反則ではないが。
聖闘気を使うのは半分反則みたいなものじゃないか?

 みんなやりたい放題だ。


『次はビーチフラッグをするぞ!』

 クラッツがそう叫ぶ。

 ビーチフラッグのルール説明をきいておく。
まず、フラッグを砂浜に差しておく。
複数名の選手がフラッグから50mほど離れた位置でうつ伏せに寝転んだ状態で待機する。
合図とともに起き上がり、ビーチフラッグに向かって走り出す。
そして、ビーチフラッグを掴んだ者の勝利となる。

 なるほど。
細かいルールは地球のものと少し違うようだが、概ねのルールは同じだ。
厳密にはビーチフラッグとは異なるが、異世界言語のスキルがいい感じに訳してくれているわけか。

 さっそく試合が行われていく。

「邪魔だぜ、ギルバート!」

「何を! お前こそ邪魔だ、ジルガ!」

 ジルガとギルバートが、お互いに足を引っ張りながら走っている。

『おほほ。まだまだ若い奴らには負けないわよ』

『お先に失礼するわね』

 六天衆のタニアとラトラだ。
オーガの女性だ。
彼女たちはそう言って彼らを抜き去っていく。
なかなかのスピードだ。

「ウス。みんな、速すぎるど」

 ウッディは置いてけぼりだ。
彼は足が遅い。
耐久力やパワーはかなりのものなんだけどな。
種目との相性が悪い。

 そんな感じで、順調に試合が消化されていく。
とうとう次が決勝戦だ。

「俺様のスピードに酔いな」

 兎獣人のストラスがそう言う。

『自分も負けないの』

 六武衆の敏捷のセリナ。
オーガの少女である。

「へっへっへ。せっかくだし手は抜かねえぜ」

 アドルフの兄貴だ。

「ボクだって全力で走るよ!」

 こちらはアイリス。

「なぜか俺も勝ち残ってしまった……」

 そして俺である。

 決勝戦の出場者は、ストラス、セリナ、アドルフの兄貴、アイリス、俺の5名で行われる。
スタート位置に移動し、うつ伏せになり待機する。

『ようい……どん!』

 スタートの号令はマリアの合図だ。

「全力で行かせてもらう! 鳴神!」

 俺は鳴神を発動する。
この4人が相手なら、手を抜いている余裕はない。
全力でダッシュする。

「モノマネに負けてられるかよ! 鳴神!」

 ストラスも同じ技を発動し、追いついてくる。
彼のほうが本家なので、やはり練度が違う。

「へっへっへ。やるじゃねえか」

 アドルフの兄貴も、俺やストラスに負けず劣らずのスピードだ。

『自分を忘れてもらっては困るの』

 セリナも追いついてくる。
彼女は鬼族鬼化の技を使っている。
本気だ。

「聖闘気、迅雷の型」

 アイリスのスピードはさらに速い。

「こ、こいつら。速すぎんだろ……!」

 ストラスが驚いた顔でそう言う。

 そのまま、アイリスがビーチフラッグを掴み、優勝した。
アイリス、セリナ、アドルフの兄貴、ストラス、俺の順番だった。
この4人にスピードで挑むのはさすがに無謀過ぎたか。
とはいえ、20人以上の参加者からベスト5に残っているので、俺のスピードも悪くはない。
相手が速すぎただけだ。

「くっ。アドルフさんはともかく、俺が女どもにスピードで負けるとは……!」

 ストラスが悔しがっている。

『遅くはなかったの。人族にしては見どころががあるの』

「セリナとかいったか。もう一度勝負だ!」

『何度やっても同じなの。でも、仕方ないから付き合ってあげるの』

 試合は終わり、みんなはまた違う遊びにシフトしていく。
一方で、ストラスとセリナは2人でまだビーチフラッグをしている。

 横目で様子をうかがう。
また、セリナの勝ちだ。
ストラスはこれで5連敗ぐらいしている。

「ちくしょう。俺に何が足りないんだ」

 ストラスがフラッグを取りそこねたうつ伏せの状態のまま、悔しがる。

『気合と根性が足りないの』

「もう一度だ!」

『やれやれなの』

 セリナは口では面倒くさそうなことを言っているが、顔や雰囲気からするとまんざらでもなさそうだ。

 セリナがフラッグを取ったうつ伏せの状態から、体を起こす。
……ん?
ストラスが驚いた顔をしている。

「お、お前、それ……」

『ん? 何かあるなの?』

「水着が取れてる! 前を隠せ、ばかっ!」

 セリナの胸の水着がはだけていたようだ。
ちょうど俺の位置からは死角となっていて、見えなかったが。
ストラスはばっちり見たようだ。

『……っ! み、見るななのーっ!』

 セリナが顔を紅くし、胸を隠しながら走り去っていった。

『ふふふ。私の娘にも、とうとう春がやってきたのかしら。訓練にしか興味がなかったあの娘にねえ……』

 六天衆のセルマがそう言う。

 くそっ。
くそっ!
俺も見たかった。
どうして俺があそこにいない。
ラッキースケベを体験してみたかった!

「あの……、タカシ様。わ、私でよければ、いつでもお見せしますよ。なんならその先だって……」

 ミティが顔を紅くしながらそう言う。

「あ、ああ。落ち着いたらぜひお願いするよ。ありがとう、ミティ」

 そんなに顔に出ていたか。 
ミティに気を遣われてしまった。

 ミティとそういうことをするのは、借金を完済し、彼女を奴隷身分から解放してからにしたい。
”奴隷だから仕方なくいっしょにいてあげてるだけ”とかはないとは思うが。
俺の気分の問題だ。

 今後、ゾルフ砦に戻って、ラーグの街に戻って、借金を返済する。
まだ足りなければ、その後も稼いでいく必要があるだろう。
彼女とそういうことをするのは、その先の話だ。

「ん? 何か妙な雰囲気だね。お邪魔だったかな?」

 アイリスがやってきた。

「いや、そんなことはないよ。どうした? アイリス」

「そろそろ帰るみたいだよ。みんな、帰り支度を始めてる」

「わかった。俺たちも帰り支度をしよう」

 みんなのいるところに戻る。

『やーだー! まだ遊ぶのっ!』

『わがまま言うんじゃありません、マリア』

 駄々をこねるマリアを、ナスタシアがなだめている。
マリアはしばらく駄々をこねていたが、気がつくと静かになっていた。
どうやら疲れて眠ってしまったようだ。

 寝顔もかわいい。
……変な意味ではない。

 こんな感じで、この日はゆっくりと休日を満喫することができた。

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