【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

77話 ミティに秘密を打ち明ける

 ミティのスキルポイントの使い道は何がよさそうか。
検討の手順は俺と同じでいいだろう。
武闘会では役に立たないが、防衛戦では有用そうなスキル。
武闘会で役に立ち、防衛戦でも有用そうなスキル。
この2つは分けて考える。

 前者のスキルとしては、槌術、投擲術、風魔法あたりか。
槌術と投擲術は現状のミティのメインスキルだ。
魔物狩りで大活躍している。
風魔法は、現在練習中だ。
ラーグの街からこのゾルフ砦までの道中でも、コツコツ練習していた。
近接物理のハンマー、遠距離物理の投擲に加え、風魔法も扱えるようになれば、戦闘に幅が出る。

 後者のスキルとしては、体力強化、腕力強化、器用強化、闘気術あたりか。
体力強化レベル1を2に上げるには、5ポイント。
腕力強化レベル3を4に上げるには、15ポイント。
器用強化レベル2を3に上げるには、10ポイント。
闘気術レベル3を4に上げるには、15ポイント。

 今はスキルポイントが25もある。
多少は温存しておくとしても、最大15ポイントぐらいまでは使ってしまってもいいだろう。

 ここで考えておくべきは、明日の対戦相手との相性だ。
ミティの明日の対戦相手はわかっている。
ジルガだ。

 ジルガは筋肉ムキムキの、正統派な感じの武闘家だ。
太い腕からの強烈なパンチの他、俊敏性や耐久力も優れており、バランスがいい。
 
 先月の小規模大会では決勝でギルバートといい勝負をしていた。
今日のガルハード杯では、アイリスにも勝っている。
かなりの強敵だ。
ミティからすれば格上と言って間違いないだろう。
 
 そう考えると、体力強化や器用強化は微妙かな。

 ミティとジルガの実力差からして、長期戦になることは考えにくい。
体力強化はあまり意味がない。
また、器用強化のレベルを上げて、攻撃精度を多少上げたところで、通用するかと言われると怪しい。

 ここは長所を伸ばす方向で、腕力強化か闘気術を上げるのが良さそうだ。
闘気術レベル4は俺と同じ理由で却下するとして、腕力強化をレベル4に上げるのが良さそうか。
これで、スキルポイント25のうち15を使い、10余ることになる。
10は防衛戦に向けて保留にしておく方針がいいだろう。

 そうだ。
そろそろ、ミティに加護の件について話したほうがいいかもしれない。
明日も試合だし、微妙なタイミングか?

 しかし、防衛戦が始まってしまうと、話すタイミングがさらに難しくなる。
防衛戦中のスキル強化の意思疎通をスムーズに行うためにも、今のうちに話しておいたほうがいい。
話そう話そうと思って、ずるずると伸ばしてしまった。

「ミティ。大事な話がある。少しいいか?」

 さあ。
秘密を話すぞ。

「はい。なんでしょうか?」

 ミティは俺の顔を見て、少し緊張した面持ちになる。
俺の緊張が移ったか。

「ミティの戦闘能力は、すごい勢いで成長しているよね。そのことについて何か感じることはある?」

「そのことですか……。私も不思議に思っていました」

「不思議に思っていたんだ?」

「そうですね。力は有り余っていますし、ハンマーや投擲の技術も自然とわかる感じです。もしかして、タカシ様と何か関係があるのでしょうか?」

 鋭い。
普通、そんな発想になるか?
俺なら、自分に隠れた才能があったとか自惚れるけどな。

「実はそうなんだ。俺には、人が成長する方向性を示して促す力があるみたいだ」

 レベルとかスキルポイントという単語は伝わらないだろう。
うまく噛み砕いて伝えていかないとな。

「え? ほんとうですか? ……それってものすごいことではないですか?」

「そうなんだよ。他言無用で頼む。このことはミティしか知らない。今まで黙っていてゴメンね」

「わかりました。ことがことですし、仕方がないと思います」

 ミティは俺の話を信じてくれたようだ。

「ありがとう」

「それにしても、その力を使えば、建国……とまではいかなくても、領主などになることも可能では?」

 ミティが思案顔でそう言う。

「そううまくもいかないんだ。この力は、俺とかなり親密な人にしか使えないみたいだ。今のところミティだけだよ」

「……!!! なるほど、そうですか。ふふふ、私だけ……」

 ミティの顔がにやけている。
にやけ顔も可愛い。
天使だ。

「ミティの言う通り、この力を使えば、いろいろと便利だ。単純に俺の利益につながるだけではなく、力を得た本人の利益にもなる」

「そうですね。私も、この得た力には助かっています」

「さらに言えば、俺や本人に加えて、その人の属する集団の利益にも繋がっていくだろう。例えば、ミティが強くなったことにより、ラーグの街やゾルフ砦周辺の魔物の数は若干減ったはずだ。街の人たちからすれば魔物の驚異が若干減ったことになる」

 この辺の話はきれいごとだが。
同業の冒険者は、ライバルが増えて困っている可能性もあるし。

「まあ全体からすれば微々たる変化だろうが。しかしそれも、複数人の力になれば大きくなっていくだろう。俺のためにも、力を与えられる人のためにも、街の人たちのためにも、この力を広めていきたいと思っている」

 なんか胡散臭い宗教の演説みたいになってきた。
こんな説明でだいじょうぶか?

「そうですね。すばらしいことだと思います。他の人にもその御力を使っていきましょう」

「ああ。だがそのためには、その人と親しくなる必要がある」

「親しく……。ちなみに、私にその御力を使えるようになったのは、どのタイミングでしょうか?」

「初日の夜にいっしょに弁当を食べて、いろいろと話した後ぐらいだったよ」

「なるほど……。そのレベルの親密度だと、なかなか他の人には難しいかもしれませんね。あのときの私は、タカシ様に対してかなり大きな感情をいだきました。感謝・依存・崇拝・愛情など……。自分で言うのは少し照れますが」

 うれしいことを言ってくれる。

「ありがとう。俺もミティのことは大好きだよ」

「……ありがとうございます。大好きです。タカシ様」

 お互いに見つめ合う。
天使だ。

 もうミティと2人で暮らしていけばいいんじゃないかな。
うん。
2人で末永く幸せに暮らしていこう。

 …………。
いや、そういうわけにもいかないか。
ミッションによると、30年後に世界が滅亡するらしいからな。
やれることはやっておかないと。

「他の人に力を使うために、親密になっていく件だけど。ミティはそれでもいいの? 相手が女性なら、浮気みたいになっちゃうけど」

「わがままを言わせていただくと、私を1番に愛していただきたいとは思っています。ただ、わがままを言い過ぎて、タカシ様に捨てられてしまうのがこわいのです」

「ミティを捨てたりなんかしないよ!」

 天使のミティと別れるなんて、とんでもない。

「もちろん、そう信じています。ただ、タカシ様は世界に名を残される英雄になるでしょう。もともとそう思っていましたが、今のお話をお聞きして確信に変わりました。英雄の妻が私1人で務まると考えるほど、自惚れてはいません」

「そうか」

「正直、女性の仲間が増えていくことは不安です。女性が増えても、今まで通りに愛してもらえますか?」

「もちろんだよ! ミティとはずっといっしょだ!」

「ずっと、ずーっと、いっしょにいましょうね」

 ミティとしばらく見つめ合う。
天使だ。

 …………。
おっと。
本題を忘れるところだった。

「話を戻そう。ラーグの街で食事会をしたときのメンバーは覚えてる?」

「ユナさんや、リーゼさんたちですね」

「その2人とは、特に親密になれてきているね。他にも、モニカ、ドレッドさん、アドルフの兄貴たちも、いい感じだよ」

「では、あのままラーグの街にいたほうがよかったのでは?」

「それは他にも事情があってね。ゾルフ砦に用事があったんだ」

 用事とはミッションの防衛戦のことだ。
ミッションのことはまだ伏せておくか。

「それに、親密になれてきているとはいっても、まだまだ時間はかかりそうだったよ」

「まあそれもそうですか。あのときに私がいだいていた感情と同程度となると、短期間では難しいでしょうね」

「食事会の人以外にも、何人か候補はいるよ。ニムとか」

「ニム? どなたでしょう?」

「ああ、ミティは名前を知らなかったか。あのリンゴを売っていた犬獣人の子どもだよ」

「あの子ですか。あの子は経済的に困窮していそうでした。私たちにお金の余裕ができれば、支援してあげるのもいいかもしれません」

「そうだね。そのためにはもっと稼がないと。がんばっていこう」

「がんばります!」

 ミティがぐっと握り拳をつくり、意気込む。

「あとは……。このゾルフ砦に来てからだと、あんまりいないな。アイリスとギルバートさんぐらいかな。メルビン師範とビスカチオ師匠もちょっとだけ」

「アイリスさんはいいかもしれません。冒険者として行動をともにしているときに、タカシ様のことをほめてましたよ」

「そうだったの? 照れるなあ」

 脈アリか?

「今日の試合でタカシ様が負けてしまわれたのは、少しマイナスかもしれません」

「だよね」

 現実は甘くない。
もっとがんばらないと。

「明日の試合で挽回しましょう。アイリスさん本人と当たる可能性もありますし」

「本人と闘って勝ったりしたら、好感度が下がらないかな」

「わかりません。アイリスさんは、むしろ好感度があがりそうなタイプのように見えます」

「そうかな?」

「自分より弱い男性よりは、強い男性のほうがいいと思うのは、自然なことでしょうし」

「それはそうかもしれないな。明日の試合でアイリスと当たれば、がんばって勝つよ」

「応援しています!」

 ミティの激励を受ける。
明日の試合は全力を出し切ろう。

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