【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

51話 激突、クイックマリモ

 次に遭遇したのは、見たことのない魔物だった。
毛の生えたボール型の魔物だ。
10匹ぐらいの群れ。
直径はだいたい10センチぐらいか。
直径20センチ以上の大きい個体もいる。

「見たことがない魔物です。みなさんはご存知ですか?」

「ああ。あれはクイックマリモだね。ちょっとめずらしい魔物だ」

 ハルトマンたちは知っているようだ。

「討伐しますか?」

「危険度は少ないし、クイックマリモの素材はそこそこ高く買い取ってくれる。討伐しよう」

 ハルトマンの判断により、討伐することになった。

「ではまず、私が火魔法で……ごふっ!?」

 討伐の打ち合わせをしようとしたとき、お腹あたりに軽い衝撃があった。
だれかに殴られた?
いや、これは……。

「きたぞ! 散解して各個撃破を狙ってくれ。近くで戦うときは同士撃ちに気をつけろ!」

 ハルトマンの指示により、各人が少し距離を取って戦い始める。

 さっきの体への衝撃は、クイックマリモに体当たり攻撃されたものだったようだ。
結構距離があったのに、反応できなかった。
クイックマリモの動きはかなり速い。
その代わり、攻撃力はさほどでもないようだ。
油断しているところにモロに受けたのに、大きなダメージはなかった。
やや小さめの個体からの攻撃だったのも幸いだった。

 基本的には危険性が低そうな魔物だ。
1人でいるときに数匹に囲まれてボコボコにされれば、さすがに少しやばいかもしれないが。

 こちらの攻撃を当てられるかどうかが大切だ。
動きが速すぎて、対処が難しそうだ。

「せいっ」

 剣で攻撃するが、当たらない。

「てえぃっ!」

 ミティがハンマーで攻撃するが、当たらない。

 ハルトマンたちの様子を見てみる。
彼らは、数回に1回程度は攻撃を当てることができている。

 一方で、俺とミティの攻撃はクイックマリモになかなか当たらない。
厳しい相手だ。

 数分の戦闘の後。
ハルトマンたちの活躍により、1匹を除いて無事に討伐された。
残ったのは少し大きめの個体だ。

「タカシ! 最後の1匹がそっちにいったぞ!」

 俺から少し離れたところで戦闘していたハルトマンがそう言った。
クイックマリモがこっちに向かってくる。

 落ち着け。
Dランクのハルトマンたちにできることが、俺にできないはずがない。
ステータス操作によって得た力を見せてやるんだ。

 クイックマリモが俺に接近したところで軌道を変えた。
地面、木、岩。
そこらにあるものを活かして、立体的な軌道で俺を惑わしてくる。

 超高速移動………!!!
は……速すぎる!!
くっ
マリモの軌道を追いきれないっ…!!

「タカシ!! 後ろ!!!」

 ハルトマンの注意が聞こえる。
後ろ。
反応が間に合わない。

「ご…」

 クイックマリモの強烈な体当たり。
俺の背中と脇腹あたりにクリーンヒットした。

「ごほっ。ゲェッ」

「タカシ様!?」

 思わず倒れ込む。
最初に受けた攻撃よりもダメージは大きい。
大きな個体なので、攻撃力も高いということだ。

 幸い、クイックマリモの追撃はなかった。
奴は、今度はハルトマンたちに向かっていった。
今のうちに自分に治療魔法をかけておく。
ミティが気遣ってくれる。

 クイックマリモのあまりの速さに、ハルトマンたちでもすぐには討伐できない。
しかし、ある程度の対応はできている。
しばらくして、クイックマリモは討伐された。

 ハルトマンたちがこちらに駆け寄ってくる。

「大丈夫か? タカシ」

 かなりのダメージはあったが、骨折や内臓破損レベルではない。
せいぜい内出血ぐらいだ。
自分で治療魔法もかけておいたので、今後の活動に支障はない。

「大丈夫です。役に立てず、申し訳ない」

「いいよいいよ。リトルベアの討伐ではタカシの活躍が大きかったし。大きなケガはなさそうで良かったよ」

 くそ…くそ!!
総合的な戦闘能力ならオレが上のはずっ
しかし…判断力や反応速度は奴等が上…

 やはり、ステータス操作によりスキルを取得しただけでは、限界があるということか。
実戦で経験を積んで、スキルを体に馴染ませないととっさのときにボロが出る。
今後の課題だ。

 クイックマリモの討伐に少し時間がかかったので、リトルベアの2匹目の討伐は中止になった。
おとなしく村へ向かう。


●●●


 村へ向かう途中、三日月の舞がリトルベアと戦闘しているところに出くわした。
後衛の魔法使いの女が3人に、前衛の剣士の男が2人のパーティだ。

「あんたたち、いつも通りに時間を稼ぎなさい!」

「「承知!」」

 エレナの指示に、前衛の男2人が返事をする。
リトルベアを牽制しつつ、慎重に攻撃を加えていく。
前衛の2人はDランクぐらいか。
本来は2人だけでリトルベアを相手にできるレベルではない。
防御寄りで慎重に戦っているため、何とかなっているようだ。

「ルリイ! テナ! 準備はいい!?」

「オーケー!」

「いつでもいいよ!」

「いくわよおっ! 三位一体!」

 エレナ、ルリイ、テナ。
三日月の舞の魔法使いの女3人が、同時に詠唱を開始する。
タイミングを見て、前衛の2人が退避する。

「我が敵を滅せよ! ファイアトルネード!」

「我が敵を撃て! ライトニングブラスト!」

「我が敵を砕け! ストーンレイン!」

 エレナが火魔法を、ルリイが雷魔法を、テナが土魔法を発動させる。
ファイアートルネードは火魔法レベル3だ。
レベル1から5まである内の3なので、中級といったところだ。
とはいえ、一般的には十分に強力な魔法ではある。
やはりCランクだけあって、なかなかの魔法を扱えるようだ。

 ライトニングブラストとストーンレインは聞いたことがない。
おそらく、レベル2か3あたりの魔法だろう。

 ファイアートルネードの炎がリトルベアを燃やす。
ライトニングブラストの電撃がリトルベアを貫く。
ストーンレインの石つぶてがリトルベアを襲う。
これではひとたまりもない。
リトルベアに大ダメージだ。

「ひえー。やっぱり高ランクの魔法使いはすごいなあ」

 ハルトマンが感嘆したように言う。

「すごいですね。私も、早くあのレベルに達したいものです」

「タカシの火魔法も十分にすごいよ! 俺も使えたらなあ……」

 ハルトマンは魔法を使えないようだ。

 リトルベアの様子を改めて確認する。
かろうじてリトルベアはまだ立っているが、もはや戦闘は不可能だろう。
前衛の2人が再度近づき、とどめを刺した。

 やはり、他のパーティと合同で活動したり、高ランクパーティの戦闘を見学したりすると、学ぶことが多い。
俺はステータス操作によりスキルだけはかなり優秀だが、明らかに経験不足だしな。
さきほどのクイックマリモ戦でもそれを痛感したところだ。
いろんな人からスキル外の技術や戦術を吸収していきたい。

 見学を切り上げ、村に戻る。
村長に報告し、報奨金をもらう。
クイックマリモの素材も買い取ってもらう。
街まで持っていけばやや高くなるようだが、少し面倒なのでここで現金化しておく。
報奨金と買取金を9人で山分けした。

 クイックマリモ戦で予想外の苦戦はあったものの、護衛依頼は概ね順調だ。
ラーグの街からゾルフ砦まで、半分は来ている。
後数日で着くだろう。
防衛戦の不安はあるが、見知らぬ土地を訪れるのは楽しみでもある。

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