【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1631話 叔母と姪

「高志殿……。姪の命を見逃してくれたことには感謝しています。しかし、あまり無体なことは……」

 ある女性が俺に抗議してくる。
 彼女は樹影。
 桜花七侍の古株だ。
 そして、景春の叔母でもある。

「俺に言わないでくれ。俺は何もしていないぞ?」

「それはそうですが……。もう少し配慮があってもいいはずです」

 樹影は景春を溺愛していたらしい。
 先々代藩主は、景春の父であり、樹影の弟でもある。
 彼が病床に伏せったあと、家督を景春が継いだ。
 その際、当主としての重圧に押しつぶされそうだった彼女のメンタルケアをしていたのが樹影だったそうだ。
 無茶な思いつき増税を繰り返して豪遊していたのも、ストレス発散の一環だったのかもしれんな。

 まぁその増税によって紅葉や流華は苦しんでいたわけなので、安易に許せるものではないが……。
 藩主としてのメッキを剥がしてただの少女に引きずり下ろした今、さらなる罰を与えようとも思わない。

「叔母上、いいのです」

「景春様……」

「様付けはやめてください。あたしはもう、ただの平民少女なのですから」

「し、しかし……」

 景春の言葉に、樹影は戸惑っている。
 姪や甥を溺愛する気持ちは分からんでもないし、これと決めた主君に忠誠を誓う気持ちも想像はできる。
 だが、そういった2つの感情が合わさると一気に複雑になってくる。

 今回の場合、そこに『謀反者によって主君が立場を追われた』『しかし命は見逃してもらえた』『なぜか主君が謀反者を気に入っている』など、いくつもの要素が複雑に絡み合っている。
 俺には加護付与というチートスキルがあり、その応用で読心術の真似事が可能だが……。
 さすがにここまで複雑だと、完璧に理解するのは難しいな。

 そんなわけで、樹影の忠義度をガンガン上げていくのは諦めた。
 これでも加護(微)はあるし、十分だろう。
 景春の件での事前根回しで『景春は処刑する予定だが、藩主としてのメッキを剥がせれば命は助けてやるから、一芝居に付き合え』と脅迫――じゃなくて交渉した甲斐があった。

 彼女以外の桜花七侍も、似たようなものだ。
 景春を助命する件や俺の圧倒的な戦闘能力により多少の忠義度は稼げているが、加護(小)以上に至るのは難しい。
 元より社会的地位が高めの者、元より忠誠を強く誓った相手がいる者、俺と同じ男性である者、俺と同年代以上の者……。
 そういった条件を満たす者は、忠義度が上がりにくい傾向があるからな。
 桜花七侍なのに加護(小)の付与まで至った無月は例外的な存在だ。

 ……いや、無月以上にイレギュラーな存在もいたな。
 それは……

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