【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1628話 余は…

「言い逃れはできん。お前は処刑だ。その首を晒すことで、お前の罪を償うがいい」

「ま、待て! 余は無実なのだ!」

 景春が叫ぶ。
 四肢を拘束され目隠しまでされている景春に残された手段は、言葉による説得のみだ。
 だが、桜花七侍の面々が動くことはない。
 既に根回しは済んでいる。

 強いて言えば、やはり樹影が怪しいか。
 あまり無駄なことをしている余裕はない。
 さっさと進めてしまおう。
 俺は腰の鞘から刀を抜き、景春の首筋に添えた。

「ほら、この感触が分かるか? 俺の愛刀で、お前の首を刎ねてやる」

「ひ……っ! い、いや……」

 景春が引きつった声を漏らす。
 彼の首筋には、俺の愛刀が触れている。
 そのヒンヤリとした感触が、彼の恐怖心を煽っていることだろう。

「う、嘘だろう? 甘い男の貴様がこんなこと……。それに、叔母上が余を見捨てるなど……」

「……」

「そ、そうだ、これは夢で……。起きたらきっと、父君も壮健のままで……昔のように豊かな桜花藩があるんだ……。家族みんなで楽しく朝ご飯を食べて……それから……」

「残念だったな、これは夢じゃない、現実だ。お前はこれから死ぬのさ」

「う……あ……」

 景春は言葉にならない声を漏らしている。
 もう恐怖心は限界だろう。
 目隠し越しにも号泣しているのが見て取れる。
 拘束された手足は、大いに震えていた。

 戦闘時にはそこそこ勇敢だった景春だが、処刑されるとなるとやはり話は別だな。
 ゆっくりとだが確実に近づいてくる、自らの死。
 そんな状況下で気丈に振る舞える者など、大人でもそうそういないだろう。
 まして、景春は10代中盤だ。
 こんな醜態を晒すのも無理はない。

「さぁ、最後に言い残すことはあるか?」

「……た、助け……。死にたくない……っ」

 景春がはっきりと告げた。
 やはり、明らかにもう限界だ。
 最後のひと押しといこう。

 俺は刀を振り上げる。
 景春にも聞こえるよう、あえて大きな音を立てて……。

「では、さらばだ」

「ま、待て! 待ってください!!」

「待たない」

「嫌だ! 死にたくない……! 余は……私は……あたしは!! 死にたくないっ!! 誰か、誰か助けてぇえええっ!!」

 景春が泣き叫ぶ。
 その声を聞いて、俺は刀を止めたのだった。

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