【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1605話 流華のスキル検討

「兄貴、どうして『窃盗術』を伸ばしちゃ駄目なんだよ?」

「どうしてって……犯罪だからに決まっているだろ」

「でもよぉ、兄貴。例えば野盗の類が山の中に潜んでて、そいつらから物資を盗むのはどうなんだ? それか、敵の藩から機密書類を盗み出すとか」

「ど、どうって……」

 俺は言葉に詰まる。
 そうか。
 窃盗と言っても、その形は多岐にわたるのか。

 善良な一般民衆から盗むのは言語道断だが、野盗相手ならばアリだ。
 資金や物資を失った野盗たちの力は弱まる。
 行き詰まった彼らが近隣の村を襲うリスクにだけは備える必要があるが、そのあたりに配慮するならば有効な作戦だ。

 また、敵対している藩から機密書類を盗むという作戦も、十分に検討の余地がある。
 彼は忍者志望だし、『窃盗術』はあくまで任務の成功率を高めるスキルということか。
 決して、私利私欲のために弱い一般民衆からモノを盗むためではないのだろう。

「……分かった。『窃盗術』を伸ばそう。流華がそこまで考えていたとは、恐れいった」

「へへっ! やったぜ!! 兄貴に褒められた!!」

 流華が無邪気に喜ぶ。
 とても可愛い。
 男とは思えないぐらいの可愛さだ。

「……あ。でもよ、兄貴」

「なんだ?」

「それなら、さっきのは俺の叩かれ損だったんじゃねーか?」

「う……」

 俺は閉口する。
 流華の尻を叩いたことについて、一度は謝罪した。
 しかしあれは、あくまで『やり過ぎたこと』に対する謝罪だ。
 尻叩き自体は指導として必要な行為だった……というのは大前提としたままだった。

「……本当にすまなかった。重ねて謝罪する。俺は考えなしの早とちり勘違い男だ……」

 俺は再度、頭を下げる。
 すると、流華が慌て始めた。

「お、おいおい! そんな本気で謝るなよ!!」

「いや、しかしだな……。本当に反省しているんだ。二度としないと誓おう……」

「い、いいって! 気にすんなよ!! つーか、兄貴になら毎日だって叩いてほしいぐらい――あっ!!」

 流華が慌てて口を押さえる。
 ……ん?
 今、こいつは何を言った?
 俺の聞き間違いでなければ、『毎日だって叩いてほしい』とか聞こえたんだが……。

 そんなはずないか。
 どうやら、俺は耳までおかしくなってしまったらしい。
 スキル『聴覚強化』を伸ばした一時的な副作用だったらいいのだが……。

「な、何でもねぇよ! 今のは忘れてくれ!!」

「お、おう……」

 流華の剣幕に圧され、俺は頷く。
 なんか納得できないが……まぁいいか。
 尻叩きの件を忘れたいのは、俺も同じだ。

「で、『窃盗術』以外のスキルだけどよ……。『忍術』は当然として、何か他にいい感じのやつはねぇか? 兄貴に助言してもらいたくてさ」

「ふむ、そうだな……」

 流華の質問を受け、俺は考え込む。
 先ほどはちょっと失敗してしまったし、ここは真面目に考えなければ……。

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