【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1583話 不死鳥伝説【マリアside】

「……お主、その翼は」

「あ、うん。マリアはね、回復能力がすごいらしくて――」

「炎と共に再生したぞ!? まさか……不死鳥!?」

「不死川に伝わる数々の伝承……。その中でも特に有名な不死鳥伝説! あれは本当だったのか!?」

 老人と少女――マリアの会話に割り込むようにして、若者たちが騒ぎ出す。
 実際には、回復したのは自前の驚異的な自己治癒能力であり、火を纏ったのは火魔法のアレンジだ。
 基本的には別個の能力である。
 ただ、どちらも『不死鳥』の伝説と合致するため、若者たちの勘違いも無理からぬことではあった。

「……若造たちが騒がしいの。ところでお主、行く宛はあるのか? 中州なんかで居眠りしておったようじゃが……」

「えっとね。南の方に行きたいんだけど……もうちょっと元気になってからかなっ。なんか、上手く飛べなくなっちゃって……」

 マリアが告げる。
 大和連邦の各藩は、多かれ少なかれ結界妖術で守られている。
 桜花藩に降り立ったタカシの重力魔法が不調だったように、不死川藩にいる彼女の重力魔法もまた不調だった。
 また、生来の飛行能力も阻害されている。
 ハーピィとオーガのハーフである彼女にとって、飛行ではなく徒歩で遠路を行くのは現実的な選択ではなかった。

「そうか。ならば、村へ来られるか?」

「えっ!? いいの!?」

「うむ。儂の命の恩人じゃし、若造の怪我を治療してもらった恩もあるからの」

「ありがとうっ!」

 マリアは満面の笑みを浮かべた。
 彼女や老人たちは川の中州から、村へと向けて移動を始める。
 空を飛ばずとも、数分から数十分ぐらいの徒歩移動ならば今の彼女にも可能だ。

「む? そういえば、まだお主の名をちゃんとは聞いとらんかったの。確か、まりあ……とか言ったか。漢字は……」

「マリアの名前は漢字じゃないよ?」

「漢字ではない?」

「あっ! 違った! ええっと……漢字では……そう、こう書くの!!」

 マリアはそう言いつつ、地面を指でなぞる。
 サザリアナ王国から大和連邦までの移動中やそれ以前に、彼女は蓮華などから漢字を習っていた。
 簡単な漢字はマスター済み。
 その他、自分や仲間の名前に当てる漢字も読み書きできる。
 彼女が地面に書いた漢字は……『舞燐亜』だ。

「なるほど、舞燐亜……か。まりあという名前はたまに聞くが、少し珍しい当て字じゃな。ま、火を纏って空を舞うお主にはぴったりの名前じゃが」

「ありがとうっ! それで、お爺ちゃんの名前は?」

「そうじゃな。では、こちらも自己紹介しておこうか。儂は――」

 マリア改め舞燐亜は、老人たちの案内に従って村へと向かっていく。

 ――その後、彼女は村人たちの傷や病を治療して回り、大いに感謝された。
 元『不死武士隊』の老人の古傷も、例外ではない。
 マリアは全盛期の力をいくらか取り戻した老人と共に、近場の妖獣を討伐して回り……。
 不死鳥伝説を体現した少女として名を馳せるのだが、それはもう少し先の話である。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品