【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
1581話 中煌地方・不死川藩【???side】
時は少しだけ遡る。
タカシが桜花藩で暗躍している頃――
大和連邦『中煌地方』の『不死川藩(ふしかわはん)』のとある村は、苦境に立たされていた。
「くそっ! 妖獣どもめ……!!」
「最近は特に数が増えてきたな……」
「ああ。俺たちみたいな小村は、奴らにとっていい餌場ってわけさ」
「今回は何とか撃退できたが、いつまで耐え凌げるか……」
村人たちが不安を口にする。
大和連邦における『妖獣』は、サザリアナ王国などにおける『魔物』とほぼ同義語である。
低級少数の妖獣が相手ならば、そこらの村人でも撃退することは難しくない。
しかし、数が増えてくると脅威だ。
「すまんのぅ……。儂が現役だったら、あんな奴らは……」
「爺さん、もう気にするな。確かに爺さんは元侍だが……戦で負った傷が原因で引退したんだろ?」
「そうさな……。まったく、『不死武士隊』の名が聞いて呆れるわい……」
老人が自嘲気味に笑う。
彼はかつて、不死川藩で最強と謳われた武士集団『不死武士隊』に所属していた。
しかし、ある日の戦いで膝に矢を受け、現役を退き小村で余生を過ごしているのだ。
「お、おーい! 大変だ!」
「ん? どうしたんじゃ?」
村の若者が慌てた様子で走り寄ってくる。
老人は怪訝な表情を浮かべて聞き返す。
「か、川だ! 妖獣にやられた傷を洗いにいったら……川に……!!」
不死川藩の特色は、その中心を縦に流れる大きな川があることだ。
川の名前は不死川。
数多くの伝承が残る、有名な川である。
その支流にもそれぞれ名前が存在するのだが、住民たちは支流も含めて広い意味で不死川と呼ぶことが多かった。
この村の近くにも、不死川が流れているらしい。
「なんじゃ? また別の妖獣でも出おったか?」
一口に妖獣とは言ったが、様々な種類がある。
大きさも種類もバラバラで、弱いものから強いものまで様々だ。
「違うんだ! 川の中洲に……人みたいな鳥? いや、鳥みたいな人……? とにかく、見慣れない奴がいるんだ!」
「ははぁ、なるほどの」
興奮する若者に対し、老人が納得したように頷く。
彼は若者よりも広い世界を知っていた。
「それは、おそらく獣人の一種じゃろうな」
「獣人? 話には聞いたことがあるが……主な違いは耳とかだろ? そんな小さな違いじゃなかったぞ!」
「獣人とは言っても、いろいろあるんじゃ。鳥系の獣人には、儂も遭ったことはないがの」
大和連邦は鎖国国家である。
藩という小国家の集合体でもあるため、それぞれの施策に様々な差異はあるが……。
他国からの人の出入りを厳しく制限している、という点は共通している。
獣人やエルフといった種族が新たに流入してくることはない。
そういった種族は、同族で固まった辺境の村、あるいは大きな城下町に少数いる程度である。
「物珍しい種族を見た……。話はそれだけで終わりかの?」
「ち、違う! それだけじゃない! 俺の……この手を見てくれ!」
若者は手を前に突き出し、腕を見せる。
そこには、妖獣の爪痕がくっきりと残っているはずだったが……。
「む? 傷が消えておる……?」
「ど、どういうことだ!?」
老人が首を傾げる。
周囲の村人たちも困惑した。
「その獣人のおかげだよ! ほら、噂に聞く……治療妖術ってやつだと思うぜ!」
「ほう? お前さんの傷は、決して浅くはなさそうじゃったが……」
「ああ。でも、その獣人の妖術のおかげで、もうほとんど治っているんだ!! 治療妖術って凄ぇんだな!!」
「…………」
老人が押し黙る。
だが、その表情は険しかった。
「どうしたんだよ? そんな顔をして……」
「いや……」
治療妖術といっても、万能ではない。
かつて『不死武士隊』に所属していた彼は、そのことをよく理解していた。
「一度、その獣人とやらに会ってみるかの」
「ああ。みんなで行こうぜ! 優しそうな子だから、きっと歓迎してくれるさ!」
「……子? ……まぁよい。会ってみれば分かるじゃろう」
「ああ。行こう!」
村人たちが頷く。
こうして、彼らは不死川に向けて歩き始めたのだった。
タカシが桜花藩で暗躍している頃――
大和連邦『中煌地方』の『不死川藩(ふしかわはん)』のとある村は、苦境に立たされていた。
「くそっ! 妖獣どもめ……!!」
「最近は特に数が増えてきたな……」
「ああ。俺たちみたいな小村は、奴らにとっていい餌場ってわけさ」
「今回は何とか撃退できたが、いつまで耐え凌げるか……」
村人たちが不安を口にする。
大和連邦における『妖獣』は、サザリアナ王国などにおける『魔物』とほぼ同義語である。
低級少数の妖獣が相手ならば、そこらの村人でも撃退することは難しくない。
しかし、数が増えてくると脅威だ。
「すまんのぅ……。儂が現役だったら、あんな奴らは……」
「爺さん、もう気にするな。確かに爺さんは元侍だが……戦で負った傷が原因で引退したんだろ?」
「そうさな……。まったく、『不死武士隊』の名が聞いて呆れるわい……」
老人が自嘲気味に笑う。
彼はかつて、不死川藩で最強と謳われた武士集団『不死武士隊』に所属していた。
しかし、ある日の戦いで膝に矢を受け、現役を退き小村で余生を過ごしているのだ。
「お、おーい! 大変だ!」
「ん? どうしたんじゃ?」
村の若者が慌てた様子で走り寄ってくる。
老人は怪訝な表情を浮かべて聞き返す。
「か、川だ! 妖獣にやられた傷を洗いにいったら……川に……!!」
不死川藩の特色は、その中心を縦に流れる大きな川があることだ。
川の名前は不死川。
数多くの伝承が残る、有名な川である。
その支流にもそれぞれ名前が存在するのだが、住民たちは支流も含めて広い意味で不死川と呼ぶことが多かった。
この村の近くにも、不死川が流れているらしい。
「なんじゃ? また別の妖獣でも出おったか?」
一口に妖獣とは言ったが、様々な種類がある。
大きさも種類もバラバラで、弱いものから強いものまで様々だ。
「違うんだ! 川の中洲に……人みたいな鳥? いや、鳥みたいな人……? とにかく、見慣れない奴がいるんだ!」
「ははぁ、なるほどの」
興奮する若者に対し、老人が納得したように頷く。
彼は若者よりも広い世界を知っていた。
「それは、おそらく獣人の一種じゃろうな」
「獣人? 話には聞いたことがあるが……主な違いは耳とかだろ? そんな小さな違いじゃなかったぞ!」
「獣人とは言っても、いろいろあるんじゃ。鳥系の獣人には、儂も遭ったことはないがの」
大和連邦は鎖国国家である。
藩という小国家の集合体でもあるため、それぞれの施策に様々な差異はあるが……。
他国からの人の出入りを厳しく制限している、という点は共通している。
獣人やエルフといった種族が新たに流入してくることはない。
そういった種族は、同族で固まった辺境の村、あるいは大きな城下町に少数いる程度である。
「物珍しい種族を見た……。話はそれだけで終わりかの?」
「ち、違う! それだけじゃない! 俺の……この手を見てくれ!」
若者は手を前に突き出し、腕を見せる。
そこには、妖獣の爪痕がくっきりと残っているはずだったが……。
「む? 傷が消えておる……?」
「ど、どういうことだ!?」
老人が首を傾げる。
周囲の村人たちも困惑した。
「その獣人のおかげだよ! ほら、噂に聞く……治療妖術ってやつだと思うぜ!」
「ほう? お前さんの傷は、決して浅くはなさそうじゃったが……」
「ああ。でも、その獣人の妖術のおかげで、もうほとんど治っているんだ!! 治療妖術って凄ぇんだな!!」
「…………」
老人が押し黙る。
だが、その表情は険しかった。
「どうしたんだよ? そんな顔をして……」
「いや……」
治療妖術といっても、万能ではない。
かつて『不死武士隊』に所属していた彼は、そのことをよく理解していた。
「一度、その獣人とやらに会ってみるかの」
「ああ。みんなで行こうぜ! 優しそうな子だから、きっと歓迎してくれるさ!」
「……子? ……まぁよい。会ってみれば分かるじゃろう」
「ああ。行こう!」
村人たちが頷く。
こうして、彼らは不死川に向けて歩き始めたのだった。
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