【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1562話 血統妖術・散り桜

「っ……!!」

「なんだ?」

 景春が首筋を手で押さえる。
 薄くとはいえ、俺が刀で斬りつけたのだ。
 当然と言えば当然の行為。
 だが……。

「血が出ていない? それは……桜の花びら? なぜ……」

 俺はそう呟いた。
 首筋から桜の花びらが散ったのだ。

「見たな? 余の『血統妖術』を」

「『血統妖術』だと……?」

 景春の首筋に、傷はない。
 しかし、彼の首筋から桜の花びらが散っている。
 それらの花びらはしばらく宙を舞ったあと……景春の体に吸い込まれるように消えた。

「見られてしまっては仕方ない……。この桜の花びらが、余の力だ。『血統妖術・散り桜』という」

 景春が言う。
 その体からは、先ほどよりも強い妖力が感じられる。
 俺が少しばかり動揺している隙を突き、彼は俺から距離をとった。

「『散り桜』……。それがお前の力か」

「そうだ。桜花家は、代々『桜系の血統妖術』を受け継いでいる。藩主たる余は、とりわけ強い力を持っているのだ」

「ほう? だが、強いとは言っても――」

 言葉の途中で、俺は素早く景春の懐に潜り込む。
 そして、彼の太ももを斬りつけた。

「この程度か」

 俺は景春に言う。
 太ももは深々と斬れている。
 放っておけば、出血多量で命を落とすだろう。
 そういうレベルで斬りつけた。
 偉そうなこいつも、命の危機を感じれば従順になるはず。
 さっさと紅葉たちの居場所を吐いてもらおう。

「クソガキめ、実力の差が分かったか?」

「なっ……!? い、今の速度は……?」

 俺が刀を納めると、景春は信じられないと言わんばかりに目を剥いた。
 そして、呆然とした表情を浮かべる。

「紅葉たちを返し、桜花城を明け渡せ。そうすれば、俺の治療妖術で止血ぐらいはしてやる」

「……一つ目の条件はともかく、二つ目の条件は飲めん。余は桜花藩の藩主だ。藩を明け渡すなど、できるはずがない」

「現実が見えていないらしいな。そのままだと、お前は死ぬぞ?」

「死にはしない。余は傷を負っておらぬ」

 景春が言う。
 そして、切り裂かれた太ももを見せてきた。
 かなり深めに斬りつけたはずだが……。
 そこには傷がなかった。
 代わりに、その周囲に桜の花びらが舞っている。

「余には、一切の攻撃が通じぬ。桜花家に伝わる血統妖術……いや、大和の地に伝わる血統妖術の中でも、とりわけ防御性能に優れた妖術。それが……」

「それが『血統妖術・散り桜』……というわけか。なるほどな」

 俺は呟く。
 攻撃に対する絶対防御。
 いや、防御というよりは『受け流し』に近いか?
 単に強固な鎧なら、いつかは耐久力を超える攻撃で破壊される。
 だが、肉体そのものを桜の花びらに変えられれば、斬撃や打撃で突破するのは難しい。
 宙を舞う花びらは、捉えどころがないからだ。

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