【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1560話 死になさい

「お鎮まりください。動くと斬ります」

「…………」

 樹影の刀が、俺の首筋に添えられている。
 少しでも動いたら……斬られるだろう。

「待て、樹影! 早まるな!! 余の命令に背くつもりか?」

「申し訳ございません。しかし、この者は……危険です」

「余の客だ!」

 景春が慌てて言う。
 樹影は厳しい顔で俺に刀を押し当てている。
 そして、そのまま動かない。

 藩主と桜花七侍最古参。
 つまり、桜花藩のトップとその右腕だ。
 そんな2人の間でも、意見が割れているようだ。

「高志殿、戦闘態勢を解いてくれぬか?」

「断る。お前らは俺の敵だ。それに、刃を首筋に当てられて、戦闘態勢を解くバカはいない」

「……」

 樹影は無言だ。
 だが、刀に込める力が強くなった気がする。

「待て! 高志殿を斬るな!!」

「お叱りは後で受けます。この者は、景春様に斬りかかろうとしていました。これは反逆罪に該当する行為です。危険人物の排除は、私の最優先任務です」

「……高志殿、もう一度言う。戦闘態勢を解いてくれぬか?」

 景春が懇願するように言ってくる。
 しかし……。

「断る」

「ならば……死になさい」

 樹影の刀が動く。
 刃によって傷つけられた俺の首から、大量の血が吹き出す……ことはなかった。

「なっ!? なんと……!」

「刀が……溶けている……?」

 景春と樹影が、驚愕の表情で俺の首筋を見ている。
 そう。
 俺は、天守閣への突入前に『術式纏装・獄炎滅心』を発動していたのだ。
 その効果により、俺の全身は超高温となっている。
 体が高温になることの恩恵はいくつかあるが、その内の一つが『刀剣類による斬撃の無効化』だ。
 斬られるよりも先に刃を溶かせば、その攻撃は俺に届かない。

「ふん……。覚悟はできているんだろうな? 樹影とやら」

「何?」

「俺を殺すつもりで刃を振るったんだ……。殺されても文句は言えんぞ?」

「くっ……!!」

 樹影が溶けた刀を投げ捨てる。
 そして、素早く俺から距離を取った。
 その動きは悪くない。

「報告は聞いていましたが……。まさかこれほどまでに出鱈目な力とは……」

「樹影! 余は、高志殿に手を出すなと命じたはずだぞ!!」

 景春が叫ぶ。
 いつまで日和ったことを言っているのか。
 ギリギリで話が通じる奴なのかとも思ったが、見込み違いらしい。
 こいつはただ、現実が見えていないだけだな。
 手を出す・出さないなどという局面はとうに通り過ぎている。

「景春様! これ以上の譲歩は無用にございます!! あの男を生かしておいては……桜花藩が滅びます!!」

「滅ぶ? 人聞きが悪いな……。お前らの行為が招いた結果だ。それに、お前らにとって一つだけ良い知らせはあるぞ」

「何……?」

「お前らを排除して俺が藩主になった後も、桜花藩の名前は残してやる。感謝しろ」

「なっ!?」

 俺の宣告に、景春が驚愕の表情を浮かべた。
 そして、樹影が一歩前に出る。

「戯言を……。刀による攻撃が通じないことには驚きましたが、私には『血統妖術』がございます」

「ほう? 『血統妖術』か……」

 俺は興味深げに、樹影を見る。
 紅葉から、そういったものの存在だけは聞いたことがある。
 習得難易度が高く、実質的に限られた血筋の者にしか扱えない特殊な妖術だ。
 樹影はそれを使えるらしい。
 桜花七侍の実質的な筆頭を務めているその力、見せてもらおうか。

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