【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1554話 討ち入り、桜花城!

「……あそこだ。あそこに紅葉たちが……」

 俺は、とある建物の前に来ていた。
 紅葉・桔梗・流華が捕らわれていると思しき場所。
 それはもちろん、桜花城である。

「芽によって形作られた矢印は、桜花城方面に向いていたからな。そして、その芽は『七つ草』のもの……。桜花七侍が絡んでいると考えて、間違いない」

 俺は考えを再整理しつつ、目の前の桜花城を見る。
 昨日の深夜、俺は桜花城の瘴気を全て吸収した。
 今の俺にとって、桜花城はさしたる魅力も美しさも感じない。

「だが、そんなことを言っている場合ではない。紅葉たちを助け出さなければ……。それに、ミッションの件もある」

 俺は桜花城に向かってひっそりと歩き始める。
 闇に満たされた俺は、全能感でいっぱいだ。
 正面突破でも、桜花城の全てを滅ぼせるはず。
 しかしそれはそれとして、全能感に振り回されない理性も少しは残っている。
 最終的には大立ち回りになるかもしれないが、せめて最初だけは静かに潜入したい。

「……どうやら、桜花城内部や周辺は少しばかり混乱しているようだな。城門前を警備する『侍所』に人がいない。そして、門も開けっ放しだ……」

 俺は『気配隠匿』スキルを活用し、大胆かつ慎重に桜花城へと繋がる橋を渡っていく。
 今の俺は、いつもの日中活動で着用している侍装束だ。
 特に目立ったり、怪しまれたりすることはない。

「ん? おい、そこの――んぎっ!?」

「……」

 門を通り桜花城敷地内に入ったところで、男が話しかけてきた。
 混乱気味の桜花城でも、さすがに敷地内を全スルーとはいかないか。
 だが、彼の言葉は最後まで続かなかった。
 俺が首をトンッとやって、気絶させたのだ。

「悪いな。急いでいるんだ」

 俺は倒れた男に謝る。
 だが、反省も後悔もない。
 紅葉たちを一刻も早く助け出さなければならないのだ。

 俺はそのまま、やや早足で桜花城1階を進んでいく。
 すると、上へと続く階段前に数人の侍が立っているのを見つけた。
 これはさすがに、こっそりと通過はできないか……。

「見ない顔だな、新人か?」

「ああ、そうだ。上階の警備を任されたのだが……」

 侍の一人が、俺に話しかけてくる。
 城内勤務の侍同士は、ほとんどが顔見知りなのだろう。
 少しばかり警戒されている。

 しかし同時に、不審者として強く警戒されているわけでもなさそうだ。
 彼の言葉の通り、新人の侍だとでも思っているのだろう。
 他の侍たちは、俺に特段の関心を示していない。

「なるほど。だが、今は少し立て込んでいてな。今日のところは、一階で待機していてくれ」

「ああ、分かった。ただ……せめて少しだけでも、上階の様子を見ておきたい。今後の警備の参考になるのでな」

 俺はそう告げ、侍の横を通り過ぎようとする。
 ちょっと無理がある理由なのは分かっている。
 だが、通り抜けてしまえばこっちのもの。
 うやむやにする感じで通り過ぎたい。

「おい、待て――がっ!?」

「……」

 侍が俺を引き止めるべく、肩を掴もうとする。
 その手を軽く躱し、腹パンを一発。
 侍が崩れ落ちるより早く、俺は上階への階段を上り始める。

「え?」

「ん? おい……」

 俺と問答していた以外の侍たちが、ようやく異変に気付いたようだ。
 しかし、もう遅い。
 俺は1階から2階への階段を上り終えた。

「く、曲者だ! であえ、であえー!!」

 背後から声が聞こえる。
 俺はそれに構わず、2階を進み始めたのだった。

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