【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1548話 vs巨魁【紅葉side】

 流華や桔梗がそれぞれの相手と戦っている頃――。
 紅葉もまた、桜花七侍の一人と相対していた。

「……それで? くんとうを受けし力……とか言われても、馬鹿なおでにはよく分からないんだな」

「焦らずとも、今から見せてあげますよ」

 紅葉は構え、目の前の巨魁を睨み付ける。
 彼は武器らしいものは何も持っていない。
 徒手空拳で戦うつもりのようだ。
 そしてそれは、紅葉も同じように見えた。

「ふうぅ……」

「? どうした、子ども? 来ないならこっちから行くんだな。【大鬼拳】」

 紅葉が動かないのを見て、巨魁が攻撃を仕掛ける。
 巨体から繰り出される剛腕だ。
 それは、紅葉の目の前の地面をえぐった。

「うっ!? なんて威力……それに、身のこなしも速い……」

「ちゃんと鍛えているんだな。この大きな体は、ぜい肉じゃなくて筋肉なんだな。力こそぱわー、というやつなんだな」

「なるほど……。動けるデブということですか」

「な、なんだと!? おでは、筋肉を落とさないために敢えて痩せないだけなんだな!!」

 巨魁が激昂する。
 彼の煽り耐性は低いようだ。

「やれやれ……。食事を節制できず、相手の言葉を受け流す自制心もない……。こんなデブを構成員にするなんて、桜花七侍の質も落ちたものですね」

「なんだとぉ!?」

 紅葉の言葉を聞き、巨魁がさらに激昂する。
 彼はそのまま、紅葉に攻撃を仕掛けようとするが――

「おやおや、戦いの礼儀作法すら知らないのですか」

「た、戦いの礼儀作法……?」

 紅葉の言葉を受け、動きをピタリと止める。
 相手の話をちゃんと聞く、純朴な性格らしい。

「ええ、そうですよ。上位者は下位者の全力を受け止め、その上で叩き潰す。それが強者の務めというものでしょう?」

「確かにそうだけども……。真剣な勝負に、そんな悠長なことは……」

「そうですか。私のような弱い子ども相手にすら、正面勝負では勝てないと。そう言えば、さっきも先制攻撃をしてきましたね。桜花七侍ともあろう人が、実は自分に自信がない雑魚だったとは……」

 紅葉はにっこりと微笑み、巨魁を煽る。
 彼は、その煽りを受けて体を振るわせた。

「おでは雑魚じゃないんだな! おでは桜花七侍なんだ! 山村のおっとうとおっかあの自慢の息子なんだな!!」

「そうですか。では、私の全力攻撃を、どうぞ受け止めてください」

「ふんだ! おでは強いんだな。お前のような子どもに負けるわけがないんだな!」

 紅葉の挑発に乗り、巨魁はその場で仁王立ちする。
 彼はそのまま、両腕を大きく広げた。

「全力で受け止めてやるんだな! 子どもなんかの大技、怖くもなんともないんだな!」

「そうですか。では……」

 紅葉が全妖力を解放する。
 彼女はタカシに与えられた加護(小)の恩恵を受けている。
 各ステータスが2割向上している上、植物妖術もしっかりと練習し上達中だ。
 そうは言っても、まだまだ未熟で桜花七侍レベルに通用するほどではないのだが……。
 的確な挑発によって詠唱時間を稼げさえすれば……

「くらいなさい! 【吸魂花】!!」

「がっ!? な、なんだ、この蔦と花は……!?」

 巨魁の巨体が宙に浮く。
 中庭に生えていた草木が成長し、彼の体に絡みついたのだ。

「う、うっとおしいんだな……!!」

「ふふ。どうですか? 私の植物妖術は……」

「舐めるな、なんだな! おでの力なら、この程度……!!」

 巨魁は絡みつく蔦を振り払おうとする。
 しかし……

「お、おおぉ……!? 力が……抜けていく……?」

「無駄です。その草花は、あなたの闘気や妖力を吸い取って成長します。足掻けば足掻くほど、拘束力は強くなりますよ」

「ぐ……う……! あ、あえて痩せない系のおでがぁ……!!」

 巨魁の体が少しばかりしぼんでいく。
 植物によって闘気や妖力に加え、余計な脂肪までもが吸われているようだ。

「ふふ、どうやら私の勝ちみたいですね?」

「ぐ……! お、おおおおぉ……」

 巨魁がその場に崩れ落ちる。
 闘気や妖力を吸いつくされた彼は、そのまま深い眠りに落ちたのだった。

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