【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1544話 3人娘の朝【紅葉side】

 武神流道場。
 紅葉たち『謀反衆』は、その敷地内で寝泊まりしている。
 少し前に、桜花七侍の金剛や雷轟とひと悶着あったためだ。
 高志の説得で仲間に引き込んだ無月の『虚影転写の術』により、彼らは『謎の道場破りに敗北した』と思い込んでいるはずだが……。
 そのあたりの細工がいつバレるか分からない。
 また、金剛や雷轟以外のルートで謀反衆の存在が桜花藩上層部に知られる可能性もある。
 そのため、念には念を入れて道場に寝泊まりしているというわけだ。

「うぃーす。おはようさん」

 流華が寝泊まりする部屋から出て、道場の戸を開ける。
 中では、既に桔梗が軽い鍛錬をしていた。

「……遅い。弛んでる……」

「いやいやいや、お前は早すぎだっての。朝飯は食ったか?」

「……まだ」

「しっかり寝て、しっかり食べる。兄貴が言ってたじゃねぇか。そのおかげで、オレの右手もこの通りよ」

 そう言って、流華は右の拳を握る。
 度重なるスリ行為により、刑罰として右手首から先を切断されてしまっていたのだ。
 だが、高志が上級治療魔法を継続的にかけ続けたおかげで、今では元通りになっている。

「……うん。でも、今日は朝ご飯どころじゃないかも。紅葉ちゃんが……」

「紅葉が? おいおい、朝食当番のくせに寝坊でもしたのか? ……って、そこにいるじゃねぇか」

 流華は笑いながら言う。
 彼女の視線の先には確かに紅葉がいた。

「おーい、さっさと朝ご飯をつくっ……て……?」

「…………」

 流華は紅葉に声をかけようとする。
 だが、その途中で言葉を止めた。
 彼女は、紅葉の様子がいつもと違うことに気が付いたのだ。

「お、おい……紅葉?」

「……紅葉ちゃん」

「…………」

 流華と桔梗が呼びかける。
 紅葉は返事をしない。
 しかし、少しして彼女はようやく口を開いた。

「……高志様が……高志様が帰ってこられないのです……」

「は? 何言ってんだ、お前?」

「高志様が……帰ってこられないんです!!」

 紅葉が叫ぶ。
 彼女は目に涙を溜めて震えていた。
 そんな様子に、流華は思わずたじろぐ。

「お、落ち着けよ。兄貴は最強だぜ? 心配要らねぇよ。諜報活動が長引いているだけで……」

「……私もそう言った。けど……」

 流華の言葉を受け、紅葉より先に桔梗が答える。
 どうやら、こうしたやり取りは2度目らしい。

「高志様は……うっかり屋さんなところもあるけど、私たちのことを第一に考えてくれていました! 何の連絡もなく帰ってこられないなんて、ありえません!!」

「そ、そうかもしれねぇが……。でもよ、兄貴だって男だ。諜報活動の息抜きに、たまには夜遊びして朝帰りってことも……」

「はぁ!? あなたねぇ! 高志様のことを侮辱する気なのですか!? 高志様はそんなお人じゃありません!!」

「お、落ち着けよ! 兄貴は割とそういう人だと思うぞ!?」

 流華は紅葉に胸倉を掴まれる。
 そんな2人の間に桔梗が割って入った。

「……落ち着いて」

「「これが落ち着いていられ――」」

「とにかく、落ち着いて」

 桔梗が有無を言わさぬ口調で言う。
 その迫力に、流華と紅葉は気圧された。
 なんだかんだで、3人娘の中の近接最強は桔梗なのだ。

「……お爺ちゃんと無月さんが動いてくれてる。2人なら、きっと何とかしてくれる……」

 桔梗は淡々と言う。
 3人娘は、高志の加護や日々の鍛錬により急成長中だ。
 しかし、武神流師範や女忍者の無月に比べると、やはり大人と子どもの差はある。
 3人が焦ってあれこれ動くより、師範や無月に任せておいた方が確実だろう。
 桔梗の言葉で、流華と紅葉は落ち着きを取り戻した。

「そ、そうですよね。ごめんなさい……」

「ごめん」

「……分かればいい」

 3人娘の間で、仲直りの空気が流れる。
 だが……

「ん……?」

 流華が何かに気付いた様子で道場の外を見る。
 紅葉と桔梗もつられてそちらを見ると……。

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