【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1543話 桜花七侍の3人【夜叉丸side】

「お、おい……。あれは桜花七侍の連中じゃ……?」

「ああ、間違いねぇ。だが……桜花七侍が動くってことは……」

「近づかない方がいいな。くそ、せっかく爽やかな朝なのに……」

「前任の七侍がいれば、あんな奴ら……」

 町民たちの間で、不安が広がっていく。
 桜花藩を統べる、桜花景春。
 その直属の配下である武闘派集団の桜花七侍は、一般住民にも広く認知されている。
 もっとも、藩主の代替わりに伴って前任者のほとんどが罷免されており、新任七侍の評判は良くない。

「やれやれ――。ずいぶんと嫌われたものだ――」

「仕方ないんだな。おでたち、好き勝手にやってきたんだな」

「ふぁああ……。眠い……」

 桜花七侍の夜叉丸、巨魁、蒼天が呟く。
 藩主の景春が闇の瘴気に汚染されていた影響で、彼らも少し前までおかしくなっていた。
 住民に嫌われている事実に思うところはあるが、それも仕方のないことだと納得している。
 今はそれより、重要な用件があるのだ。

「まったく、こんな朝っぱらから……。何をすればいいんだっけ?」

「樹影殿の話を聞いていなかったのか――? 俺たちの任務は、平民の小娘どもを拉致することだ――」

「拉致という表現は人聞きが悪いんだな。あくまで重要参考人として城に招待するだけなんだな」

 眠そうに疑問を口にした蒼天。
 その疑問に夜叉丸が間延びした口調で説明し、巨魁が補足する。
 彼らの任務は、高志が親しくしている3人娘……紅葉・流華・桔梗を桜花城に招くことだ。
 闇の瘴気がなくなった今、自らの欲望に従っての無体な行動はしなくなっている。
 強引な拉致など、もってのほかだ。

「だが、似たようなものだ――。言葉で説得できるなら最善だが、抵抗するようなら軽度の暴力までは許可されている――。城には治療妖術使いもいるからな――」

「戦うのは最後の手段なんだな。ちょっと抵抗してきても、おでたちの力を見せればいいだけなんだな。それで、きっと大人しくなってくれるんだな」

 夜叉丸と巨魁が言う。
 彼らは元々の人格に戻っている。
 民を無闇に傷つけたりはしない。

 しかしそれはそれとして、桜花藩幹部としての責任もある。
 藩主の景春から直々に命じられた仕事だ。
 桜花城を中心に起きていた、謎の混乱……。
 その原因究明のためにも、適当にはこなすことはできない。

「んぁ……。平民のガキどもを相手に荒事か……。そういうの苦手だぁ……」

「甘ったれるな――。必要なことなんだ――」

「お、見えてきたんだな。あれが武神流の道場なんだな」

 3人娘との接触を前に、蒼天がやや弱音を吐く。
 だが夜叉丸は厳しくそれをたしなめる。
 巨魁は淡々とした様子だ。

 彼らの視線の先には、武神流の道場がある。
 まだ早朝のためか、稽古の音は聞こえない。
 だが、人の気配は感じられた。

「さて――。本当に荒事になるかは分からんが、できるだけ穏便に済ませたいものだな――」

 夜叉丸が呟く。
 そして、武神流道場の戸を静かに叩いたのだった。

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