【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1538話 暗黒結界

「俺は……一体、どうしてしまったんだ……?」

 特殊な『光の精霊石』を捨てたことを後悔する俺と、捨てたことを肯定する俺。
 2つの相反する感情が、俺の中でせめぎ合う。

「…………」

 しばし考え込んだ後、俺は投げ捨てた『光の精霊石』の近くまで歩み寄った。
 やはり、何度見ても嫌な光だ。
 まるで魂が浄化されてしまうような……。
 あれを持っていると、俺が俺でなくなってしまう。
 いや、今の俺こそが紛い物で、『光の精霊石』に浄化された俺こそが本当の俺で……

「ぐぅっ!? あ、あああああぁっ!!」

 俺は頭を掻きむしった。
 気持ち悪い、気持ちが悪い、キモチガワルイ!!
 とにかく、この感情をどうにかせねばならない!!!

「――【暗黒結界】!」

 俺は『光の精霊石』の周囲に結界を展開する。
 闇魔法の一種だ。
 ステータス操作で闇魔法のスキルを取得したわけではないし、自力取得を目指して積極的な練習もしていなかったのだが……。
 いつの間にか、闇魔法がステータス欄に追加されていたのだ。
 うっとおしい光を遮断するのに、闇の結界はもってこいである。

「ふぅっ……。はぁ……」

 俺は大きく息を吐く。
 これで大丈夫だ。
 煩わしい光も遮断されたし、思考もクリアになった。
 最初からこうしておけば良かった。
 俺は何を迷っていたのだろう?
 闇に身を任せれば、全ては上手くいくのだ。

「……こんな石ころ、捨ててしまうか? いや、一応はアイテムボックスに収納しておこう……」

 この『光の精霊石』は特殊な鉱石である。
 暗闇でほんのりと光る……というだけではない。
 空間魔法に収納していても、体や精神に微細な影響を与えてくるようだ。
 先ほどまでの俺は、その微細な影響がとても不快だった。
 しかし、闇魔法『暗黒結界』によってその光を遮断した今、その不快感は消えた。
 アイテムボックスに再収納しておくことに、何の問題もない。

「さぁ、迷いは消えた。俺は俺の信じた道を進むだけだ……」

 俺の中で、何かが吹っ切れたような気がした。
 先ほどまでの俺は、迷いを抱えていた。
 だが、その迷いは消えた。
 もう迷うことはないし、立ち止まらない。

「ふっ……ふふふ……。とても気分がいい! この昂った感情を鎮めるためにも、もうひと働きしておくか!」

 そうと決めたら、行動だ。
 情報収集の優先事項は、桜花城に関するもの。
 夜とはいえ、侵入するのはさすがにリスキーだが……。
 夜は夜で、日中とは違う情報を得られる可能性もある。

「とりあえず桜花城の方面に行ってみよう。ふふ……」

 俺は普段の侍装束を脱ぎ、黒を基調とした装束に着替える。
 この方が闇に紛れることができるだろう。
 それに、闇に身を任せた今の気分にも合っている。

「夜の桜花城……。夜桜を眺めながらの情報収集も悪くない……」

 俺は1人笑いながら、武神流道場を出る。
 そして、夜の闇の中を歩いていくのだった。

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