【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1512話 闇色のオーラ

「むっ……!」

 俺は振り返る。
 道場の入り口に、一人の影が立っていた。
 金剛も、そちらに視線を向けている。

「無月か……。何用だ?」

「何用だ、ではない。貴様は主の命令を反故にするつもりか?」

「……『武神流を潰せ』という命令に従い、我は行動している」

「もう一つの命令――『命を大事に』という命令はどうした?」

「……それは」

「貴様が死ねば、桜花七侍の序列に乱れが生じる。前任の桜花七侍が師範を務める武神流は、確かに目障りだ。雷轟殿との思惑とも一致するし、潰すに越したことはないが……。貴様の命を懸けてまでやることではない」

「……承知した」

 金剛はそう言って、その場から立ち去ろうとする。
 そんな彼の体を闇色のオーラが包み込んだ。

「む……? がはっ!?」

「金剛!?」

「馬鹿が。一度は戦闘不能直前まで追い込んだ奴を、そう簡単に見逃すとでも思ったか」

 闇色のオーラが金剛の体にまとわりつく。
 そして、彼の肉体を蝕んでいった。
 もちろん、俺の仕業である。

 これで、今度こそ金剛は戦闘不能になった。
 俺は金剛が持っていた桔梗のふんどしを素早く回収する。
 次は雷鳴流道場の中に入って桔梗を救いださないといけないが、その前に……。

「無月とやら……。お前は何者だ?」

 俺は言う。
 この場に現れた男――『無月』という忍者のような見た目をした男の目的は不明だ。
 金剛との会話を聞いた限りでは、おそらく桜花七侍の一人か……?
 ならば、こいつも俺の敵ということになる。

「……凄まじいな。これほどの闇の力を宿していたとは」

 無月が呟く。
 どうやら、俺の力に驚いているようだ。
 だが、『闇』とは妙なことを言う。
 俺は闇魔法を取得していない。
 もちろん、闇妖術や闇闘気といったスキルも持っていない。
 不意に体から湧き上がってきた闇のオーラを攻撃に利用しただけであり、これは俺自身の力ではない。

「この力……。貴様、いったい……?」

「質問しているのはこっちだ。お前は何者だ?」

 俺はもう一度同じ質問をする。
 無月はしばらく考え込んだ後、口を開いた。

「俺は無月。桜花七侍の一人だ。隠密行動を得意としている」

「ふん。まぁそんなところだろうな」

 これまでのやり取りで、無月の立ち位置は推測できていた。
 金剛の同僚といったところか。
 桜花七侍という役職(?)に就いている彼らだが、別に刀を持って戦う『いかにもな侍』というわけではないらしい。
 金剛は力自慢の大男で、侍というよりは『タンク』や『重戦士』に近い感じだった。
 そして、無月はスラッとした体つきの優男であり、隠密行動を得意としている忍者だという。

「それで? お前は何をしに来たんだ?」

「……『武神流を潰せ』というのが主君のご命令だ。師範に重傷を負わせ、孫娘を拉致した今……。障害は貴様だけとなっている」

「なるほど。お前も敵か」

「焦るな。俺としても、貴様ほどの手練れと敵対することは避けたい。お互いの妥協点を探って――」

「必要ない。死ね」

 俺は刀を振るう。
 闇色の斬撃が無月に向かって放たれた。

「っ!?」

 無月は回避する。
 しかし、完全には避けきれなかったようだ。
 彼の忍者装束が切り裂かれる。
 そして、その下から現れたのは……。

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