【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1511話 死屍累々

「ぬうううううううう!!」

 金剛が棍を振り下ろす。
 俺はそれを刀で受け止めた。

「ぐ……!」

 重い一撃だ。
 だが、今度は吹き飛ばされない。

「……!?」

 金剛は驚いた顔をする。
 彼は大男であり、鋼の肉体や剛力を活かした戦い方が得意なようだ。
 だが、チートによって強化された俺ならば、それに真っ向から対抗することができる。

「馬鹿な……! こんなことはありえん……!!」

 金剛が動揺している。
 このまま一気に勝負を決めたい。
 しかし、そう上手くはいかないようだ。
 彼はまだ勝負を諦めていなかった。

「この手は使いたくなかったが……」

 金剛は呟く。
 そして、懐から布切れを取り出した。

「それは……?」

「これは例の娘っ子のふんどしだ。雷轟殿の刀で切り裂かれた、な……」

「……!」

 俺は動揺する。
 娘っ子――つまりは桔梗のふんどし……!?

「さらわれた武神流の跡取り……。まさか、無事だとでも思っていたのか?」

「な、何だと……?」

「雷鳴流師範の雷轟殿が武神流の跡取りを孕ませれば、二派は完全に融合する。融合せざるを得ない。雷鳴流は武神流の技術を取り込み、勢力を拡大する。雷轟殿は、桜花七侍としてより一層の貢献をしていくことができる」

「……」

「雷轟殿は、武神流を潰すことによる利益を景春様に説明した。それを受け、景春様は我に命じられた。武神流を潰せとな……!」

「くっ……! どこまでも腐った真似を!!」

 俺は怒りに震える。
 桜花藩の政治事情について、まだ理解しきれていないことも多い。
 だが、多少の事情は把握している。

 桜花七侍だった武神流師範は、代替わりした藩主に疎まれてしまったのだろう。
 武神流師範は桜花七侍の任を解かれ、代わりに雷鳴流師範が桜花七侍に任じられた。
 雷鳴流師範の方は、武神流師範とは違って新藩主である景春に気に入られている。
 そのような事情があり、結託して武神流を潰そうとしているのだと思われる。

「理解したか? 貴様が我を打ち倒したところで、手遅れなのだ。娘っ子を孕ませてしまえば、それで終わりだからな。既成事実というやつだ」

「……っ!」

 俺は歯ぎしりする。
 桔梗は責任感のある頑張り屋さんだ。
 そんな彼女の心を、この卑怯者たちは気にもとめていない。

「……そうか。お前は、ここで死ね」

「なんだと?」

 俺は刀を構える。
 心の底から、何か黒い感情が溢れてくる。
 この気持ちはなんだろう?
 視界に映らないドス黒いオーラの流れが、マグマのように煮えたぎっている。

 ひどく危うい感情だが……今はそれに身を任せよう。
 俺は大きく深呼吸し、刀に闇のオーラをまとわせる。
 そして、居合の構えを取った。

「一刀流居合――」

「さっきも見せた居合術か? 無駄だ。同じ技は我に……」

「――死屍累々!!」

 俺は刀を振り抜く。
 すると、黒い斬撃が金剛に向かって放たれた。

「……っ! ぐはっ……!!」

 俺の放った斬撃は金剛に命中する。
 そして、その肉体に深い傷を刻んだ。

「お、おのれ……!」

 金剛は出血する傷口を押さえる。
 かなりの深手だが、致命傷ではない。
 俺は追い打ちをかけるべく、再び居合の構えを取るが――

「そこまでにしておけ、金剛よ」

 突如として、その場に第三者の声が響き渡ったのだった。

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