【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1504話 ある日の夕暮れ【桔梗side】

 数日後。
 その日の稽古が終了し、タカシが帰途についたあと――

「がっはっは! 良いことが続くのう!!」

 道場の師範が大笑いをしている。
 孫娘である桔梗も上機嫌だ。
 しかし同時に、彼女の表情には少しだけ心配の色があった。

「お爺ちゃん、本当に大丈夫なの? 随分と張り切って稽古していたけど……。怪我の具合は……」

「なぁに、平気じゃよ。高志坊の治療妖術で、すっかり治ったわ! 見てみろ、この右腕を!!」

 師範は右腕をブンブン振り回す。
 どうやら、完治したというのは本当のようだ。

「良かった……。高志くんの治療妖術は本当にすごい。感謝してもしきれないね……」

 桔梗が微笑む。
 タカシは治療魔法の使い手だ。
 このあたりの地域では魔法よりも妖術の方が一般的であるため、治療魔法の使い手はやや珍しい。
 そのため、無闇に目立たないよう『治療妖術』と誤魔化して使っている。

「がっはっは! しかし、ほぼ我流とはいえ実戦的な剣術を会得している上、凄まじい闘気を持ち、さらには『治療妖術』をこれほどの精度で使いこなすとは……。末恐ろしいな、高志坊は……」

「ふふ……! 凄いでしょ……」

 桔梗がペッタンコの胸を張る。
 まだ12歳ということもあり仕方のない面もあるのだが、彼女はあまり胸が成長していない。
 タカシが宿屋で待機させている紅葉と比べると、大きく差をつけられている。
 だが、桔梗はまだその事実を知らないこともあってか、特に焦ってはいないようだ。

「ところで、本当に高志坊とは何もないのか?」

「な、ないよ……! 高志くんは、私の弟子ってだけ!」

「そうか……。それは残念じゃな……」

「残念って……。どこの生まれかも分からない人なのに、いいの?」

「構わん。儂は、強い男が好きなのじゃ! それに、桔梗もベタ惚れじゃろ?」

「べ、別にベタ惚れってわけじゃ……」

 桔梗は顔を真っ赤にする。
 そんな孫を見て、師範の口元が緩んだ。
 そのときだった。

 バァンッ!!
 道場の扉が乱暴に開け放たれた。

「何者じゃ!? こんな夕暮れ時に……」

「おやおや、本当に治ってるじゃありませんか。まさかとは思いましたが、これは驚きですねぇ」

 道場に現れたのは、これまでも桔梗にちょっかいをかけてきていた男たちだった。
 人数は10人以上。
 いつもよりも多い。

「……他流派の奴らか。何の用じゃ?」

「いえね? せっかく道場が潰れる寸前まで追い詰めたのに、師範の復帰が早まったと聞きましてね? これは、私どもとしても看過できませんから」

「はっ! 裏でコソコソ、ご苦労なことじゃのう! 返り討ちにしてやるわい!!」

 師範は鼻を鳴らす。
 だが、次の瞬間――

「きゃあ!?」

 桔梗が悲鳴を上げた。
 彼女が視線を向けると、数人の男たちが彼女を取り押さえている。

「き、貴様ら……!!」

「おっと! 動かないでくださいねぇ?」

 男の一人がナイフをちらつかせる。
 師範は歯ぎしりした。

「卑怯な真似を……!」

「何とでも言いなさい。『裏でコソコソ』、あなたが言ったことでしょう? 長期の療養で、勘が鈍っていたのではありませんか?」

「ぐぬぅ……」

 師範は唇を噛む。
 リーダー格の男が、勝ち誇った笑みを浮かべた。

「さて、あなたにはもう一度大怪我を負っていただきましょうか。……やれ」

 リーダー格の男が、仲間に向かって指示を出す。
 彼らはニヤニヤしながら、師範に襲いかかったのだった。

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