【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1503話 独眼龍【ドラちゃんside】

「ふぁああ……。よく寝たー」

 草原で、一人の少女が大きく伸びをする。
 薄い赤色の髪はボサボサで、全身に小さな擦り傷がある。
 だが、彼女がそれを気にする素振りは一切ない。

 ここは大和連邦北部『北烈地方』の『宮儀藩』。
 一年を通して寒冷な気候だが、今日は天気がいい。
 少女は草原で日向ぼっこをしていたようだ。

「やっぱり太陽はいいなぁ……。龍の姿になりたいけど……タカシが『目立つからダメ』って言ってたもんね。私、ちゃんと約束を守ってるよー……。……あっ!」

 そんな少女の目の前に、多数の兵士たちからなる行列が現れる。
 やがて、行列の中から1人の武将が護衛と共に進み出てきた。
 体つきは少し小さく、右目には眼帯を付けている。
 豪華な鎧を着込んでおり、明らかに集団のトップだ。

「ふむ……。『星読み士』の予言によると、ここらに強力な龍が住み着いたらしいのだが……」

 武将は少女の存在に気付かないまま、周囲を見回す。
 しかし、龍などどこにもいない。

「『星読み士』の予言が外れることなどありえるのか? ……まぁ、あやつもかなりの高齢だ。仕方あるまい」

 武将はため息をつく。
 すると、そんな時――

「ねぇねぇ! そこの人、どうしたのー?」

 少女が武将に声をかけた。

「なっ!?」

 突然声をかけられて驚いたのか、武将は後ずさる。
 すかさず、周囲を固めていた護衛が少女を取り囲んだ。

「無礼者! このお方をどなたと心得る!?」

「え? 誰って……。えーっと……?」

 少女は首をかしげる。
 一方、護衛は激昂した様子で少女に迫った。

「貴様ぁ!! 平民とはいえ、『独眼龍』様を知らぬとは言わせんぞ!? 我らが宮儀藩の主君だろうが!!」

「えっ!? あ、ご、ごめんなさい!!」

 少女は慌てて頭を下げる。
 だが、独眼龍と呼ばれた武将は護衛を制した。

「構わん」

「で、ですが……」

「良いと言っている」

「……はっ」

 護衛は下がる。
 そして、独眼龍は改めて少女に向き直った。

「それで、貴様は何奴だ? なぜこんな草原で一人いる?」

 独眼龍が鋭い眼光で少女を睨む。
 そんな視線をものともせず、少女は答えた。

「私? 私は、ドラちゃんだよ。よろしくー」

 少女――ドラちゃんは屈託のない笑みを浮かべる。
 彼女の本名は『ドラゴヴィフィア=フレイムハート』。
 しかし、異国の地でフルネームを名乗るつもりはなかったようだ。
 そんな少女を見て、独眼龍の目つきがさらに鋭くなる。

「どらちゃん……銅鑼ちゃん? 変わった名前だな。貴様は、『星読み士』の予言にあった龍と知り合いなのか?」

「龍? ううん、この辺に龍の知り合いはいないよー」

「そうか。ま、当然だな」

 独眼龍はため息をつく。
 これまで、予言の精度はかなり高かった。
 そんな場所にいる謎の少女なら、予言内容とも何らかの関係があってもおかしくはない。
 そう思ったのだが、どうやら外れだったようだ。

「今回は収穫なし、か」

「独眼龍様、諦めるのはまだ早いかと……」

「分かっておる。せっかくここまで来たのだ。数日は滞在して、龍の手がかりを探してみよう」

「はっ」

 独眼龍は護衛に指示を出す。
 すると、ドラちゃんが不意に口を開いた。

「ねぇー。食べもの、ないー?」

「……貴様、図々しいな」

「えへへ。お腹すいたんだもん」

 ドラちゃんは笑顔で答える。
 その無邪気な表情に、独眼龍は思わず毒気を抜かれた。

「はぁ……。仕方ない。誰か、食料を分けてやれ」

「はっ!」

 護衛が数人、ドラちゃんの前に出る。
 食べ物を分けてもらえたドラちゃんは、あっさりと餌付けされた。
 しかし、彼女こそが予言にあった『強力な龍』だとは、誰も想像すらしていないのであった。

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