【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1498話 指導【桔梗side】

「……もう少し。せめて、高志くんに縮地ぐらいは伝授してから……」

 タカシとの鍛錬後、武神流の師範代である桔梗はそう呟く。
 彼女は焦りを感じていた。
 その原因は……

「くくく……。武神流も寂れたものですねぇ……」

「っ!!」

 桔梗はハッと顔を上げる。
 いつの間にか、道場の出入り口に5人の男が立っていた。
 5人の中心には、下衆な笑みの男がいる。

「……何しに来たの?」

 桔梗は、その男たちを睨み付ける。
 リーダー格の男がニヤニヤ笑いながら言った。

「いえね? 雑魚の師範代が元気かどうか、見に来てあげたのですよ。先日の『指導』では、ついやり過ぎてしまいましたからねぇ……。子ども相手に、私も大人気なかったと反省しているのです」

「っ!!」

 桔梗の顔が屈辱に歪む。
 数日前、桔梗はこの男と誇りを懸けた決闘を行った。
 そして、完膚なきまでに敗北したのだ。
 それだけでも、武神流にとって屈辱的なことである。
 しかし、このリーダー格の侍はその決闘を『指導』と称した。
 最初から桔梗のことを対等とは思っておらず、完全に見下しているのだ。

「くっ……!」

「ふふ……。悔しそうですね? でも、仕方ありませんねぇ? 私は、あなたよりも強いのですから」

「……」

 桔梗は唇を噛む。
 悔しいが……この男の言う通りだった。
 純粋な剣術で負けているつもりはない。
 しかし、いかんせん大人と子どもでは体格が違う。
 それに、男女の筋肉量の差は大きすぎる。

 一部の女性剣士は、闘気や妖力なるものを使って身体能力を強化しているらしい。
 だが、桔梗はそういった力を使うことができない。
 武神流には『子どもの内は純粋な剣の技術を磨くべし』との鉄則があったからだ。
 年齢的には、そろそろ桔梗も闘気や妖力を教わり始める頃なのだが……。
 師範が大怪我をした今、それは保留となっていた。

「それにしても……。見事なまでに打ちのめしてあげたのに、まだ道場を閉じていないとはねぇ? 道場破り歓迎と言っているようなもの……。あなた、ひょっとして被虐趣味があるのですか?」

 リーダー格の侍は、ニヤニヤと笑いながら言う。
 桔梗の顔は怒りに赤く染まった。

「そんなわけない……。冷やかしなら帰って……」

「確かに、師範代さんのお元気な姿を見れたので帰ってもいいですが……。親切な私としては、どうしても気になってしまってねぇ」

 リーダー格の侍がニヤリと笑う。
 桔梗は嫌な予感を覚えた。

「あなた……何を企んでいるの?」

「おやおや、人聞きの悪いことを……。ただ、今日も『指導』をしてあげようかと思っただけですよぉ。以前と全く同じ『指導』をね?」

「っ!!」

 リーダー格の侍はニヤニヤ笑いながら言う。
 桔梗の背筋に冷たいものが走った。

「……大声を出せば、誰か来てくれる」

「ふ……ふふ……」

 桔梗の呟きに、リーダー格の侍は笑う。
 そして、嘲るような視線を桔梗に向けた。

「確かに、誰かが来てくれるかもしれませんねぇ。しかし、この状況をどう説明するのです?」

「それは当然――」

「まさか、『他流派の剣士に勝負を挑まれて、怖くなって泣いちゃった』とでも説明するのですか? ふふ……。武神流の恥さらしですね?」

「……っ! くっ……!!」

 桔梗は唇を噛む。
 確かに、この男の言う通りだ。
 そこらの一般的な町娘ならともかく、仮にも武神流の師範代が『勝負を挑まれたのに応じず、大声で助けを求めた』という醜態を晒すわけにはいかない。
 それは、武神流の看板に泥を塗るも同然だ。

「さて、おしゃべりは終わりです。今日もまた、たっぷり遊びましょうねぇ。安心しなさい、全快と同じく顔や体に傷は付けませんから。いつか娼婦として活用するためにね。くくく……」

 リーダー格の侍は、下衆な笑い声を上げる。
 そして、桔梗を追い詰めるためにゆっくりと近付いていくのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品