【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1495話 ある日の朝【桔梗視点】

「ふふ……。昨日はたくさん鍛錬した……。今日も楽しみ……」

 武神流の少女――桔梗は、嬉しそうに呟く。
 今は朝だ。
 もう少ししたら、門下生の高志がここにやってくるはずだ。
 彼女はどんな修行をしようかと、胸を躍らせている。

「入門料……たくさん払ってもらえた。お爺ちゃんの治療費も何とか払える……。私が頑張って道場を守らないと……」

 桔梗は武神流師範代だ。
 師範だった祖父は、2か月前に道場破りに破れて大怪我を負い、今も治療中である。
 その治療費はバカにならない。
 そんな中、追い打ちをかけるように門下生が次々に離れてしまった。

「でも、高志くんはいい人……。きっと強くなれる……」

 高志は、かなりの手練れだ。
 素晴らしい身体能力と、実戦的な剣技を併せ持つ。
 強いて言えば、剣術の大部分が我流で荒削りなことが気になるが……。
 だが、それも武神流の教えを根気強く受ければ、必ず改善されるだろう。

「高志くんと修行するのが楽しみ……」

 桔梗は嬉しそうに呟いた。
 祖父が大怪我をしたというだけでもショックな出来事だったが、落ち込む暇もなく彼女は道場の師範代になった。
 その重圧は、決して軽いものではない。
 そんな彼女にとって、高志の存在は救いだった。
 彼と一緒に修行すれば、自分自身もきっと強くなれる。
 そう思わせてくれる高志が来てくれて……本当に良かったと思う。

「早く来ないかな……」

 桔梗は道場の窓から外を眺める。
 そして、しばらくして――

「……! 来た」

 桔梗は顔を上げる。
 道場の出入り口の方向から、物音が聞こえてくる。
 いつもは無表情な彼女の表情が、わずかに緩んだ。
 彼女は待ちきれず、道場の扉を開ける。

「おはよう、高志くん――えっ……!?」

「おやおや、これはこれは……。お出迎えとは、ご苦労なことですねぇ……」

 道場に、5人ぐらいの男がニヤニヤ笑いながら入ってきた。
 全員、木刀を帯刀している。

「な……何?」

「いえね? 落ちぶれた武神流の見物に参った次第です」

「っ!!」

 桔梗は息を呑む。
 5人の1人――リーダー格の男が、彼女の全身をジロジロと見ながら言う。

「武神流も終わりですねぇ……。師範が大怪我をしているのは知っていますが、その代理がこんな子どもとは……」

「むぐ……!」

 桔梗はムッとする。
 確かに自分はまだ12歳だが、師範の娘として厳しい鍛錬を受けてきた。
 そんな言い方をされると、さすがに腹立たしい。

「師範代は子どもで、しかも女。本来の師範は、大怪我でしばらく戻ってこない。門下生が離れていくのも当然ですよねぇ」

「っ!!」

 桔梗は顔を真っ赤にする。
 自分でも気にしていたことを、改めて他人に言われると……さすがに傷付いた。

「こんな道場の看板、さっさと下ろしてしまえばいいのです。そうだ、娼婦になればいかがです? まだ幼いとはいえあなたも一応は女ですし、もの好きが買ってくれるかもしれませんよ?」

「ふ、ふざけないで……! 武神流の誇りはそんなに安くない……!!」

 桔梗は首を振る。
 先祖代々、必死に守ってきた伝統ある看板なのだ。
 そう簡単に看板を下ろすことなどできない。

「ほう? では、武神流の誇りとやらを懸けて、私と勝負していただきましょう。それとも、尻尾を巻いて逃げますか?」

「……分かった。望むところ……」

 男が、ニヤニヤと笑いながら言う。
 桔梗は覚悟を決めた。
 こんな道場破りたちなど、この武神流の敵ではない。

「ふふふ……。楽しい楽しい、弱いものいじめの時間ですよぉ。安心しなさい、顔や体に傷は付けません。娼婦になる道は残してあげます。ただ、武神流の誇りとやらだけはズタズタにしてあげましょう。ふはははは……!」

「……」

 桔梗は木刀を正眼に構えた。
 5人のリーダー格の男も、木刀を手にする。
 勝負の行く末は――

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