【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1494話 道場の現状

「それにしても、武神流の技は凄いな……。特に、縮地という技が……」

「ん……。そう言ってくれると嬉しい……」

 桔梗は無表情で頷く。
 だが、よく見ると口元がわずかにほころんでいた。
 まだ数日の付き合いだが、彼女の人となりが少しずつ分かってきたぞ。

「だが、こんなに素晴らしい指導者がいるのに、どうして閑散としているんだ?」

「ん……。それは……」

 桔梗は言い淀む。
 どうやら、あまり言いたくないことらしい。
 俺は静かに待つ。
 少しして、彼女はポツリポツリと話し始めた。

「ここからちょっと離れたところに、別の道場がある……。そこの師範との決闘で武神流の師範が負けて、しかも大怪我までしてしまった。だから……」

「なるほど……。それで門下生が離れてしまったんだな?」

「……ん」

 桔梗はコクリと頷く。
 師範同士の決闘で敗れてしまった……。
 それは武神流にとって、大きな痛手だ。
 道場の看板に傷がつく。

 その上、大怪我をしてしまったという。
 まだ若い桔梗が師範代を務めているのは、本来の師範が大怪我で療養中だからなのだろう。
 これでは、門下生が離れるのも無理はない。

「でも、師範代の桔梗だって強いじゃないか」

「ん……。でも、私は子ども。しかも女だから……」

「そうか……」

 桔梗の技術がかなりの水準にあることは、間違いない。
 だが、闘気や魔力による身体強化はほとんどできていないし、素の身体能力もまだまだ発展途上だ。
 総合的に見て、桔梗の戦闘能力はさほど高くないと言わざるを得ないだろう。
 例えば『技術的には桔梗よりも下だが、体格や身体能力は上』という大人の門下生がいたとして、彼が桔梗を舐めてしまうことだってあるかもしれない。

「でも、俺は桔梗を侮ったりしないぞ? 君の剣術には学ぶところがたくさんある。武神流は本当に奥深い」

「ん……。ありがとう……」

 桔梗はわずかに口元を緩める。
 表情の変化が乏しい彼女にしては珍しく、喜んでいるように見えた。
 この笑顔をもっと見たいな。

「高志くんは、とても筋が良い……。このまま鍛錬を続ければ、きっと強くなれる」

「そうか?」

「ん……」

 桔梗はコクンと頷く。
 俺はこの道場で、魔力や闘気を自主的に封印している。
 だが、『腕力強化』『視力強化』などのスキルは据え置きだ。
 基礎的な能力がしっかりとしている分、俺は純粋に技術の吸収に専念できる。
 桔梗から見て、筋が良く見えるのも当然だろう。
 決してうぬぼれてはいけない。
 うぬぼれてはいけないが……。

「筋が良いと言ってもらえて嬉しいよ。これからもガンガン鍛えてくれ」

「……ん。こっちもそのつもり。入門料の分は、損させない……」

 桔梗が言う。
 この調子で、武神流の技を思う存分に吸収させてもらうことにしよう。

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