【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1474話 ユングフラウ

「必殺技か……」

 紅葉や流華の要望を受けて、俺はつぶやく。
 魔法を発動する際に『ファイアーボール』『エアバースト』などと叫ぶことに、意味はある。
 そうすることでイメージがより鮮明になり、効果の正確性の向上、威力の増強、MP効率の上昇などの恩恵が受けられるのだ。
 発動前の詠唱まで付ければそれらの恩恵はさらに増すが、戦闘中の即応性が失われる。
 一般的に言えば、『習得したばかりの新魔法は詠唱付きで運用し、慣れてきたら魔法名だけで発動させる』というのが常識だ。
 そして、さらなる上級者になれば無詠唱で発動することも可能になる。
 まぁ、無詠唱は威力やMP効率が悪化するので、基本的には使わないが……。

「確かに、俺にはたくさんの必殺技があるな」

 魔法以外にも、いろいろな必殺技が存在する。
 剣術、武闘、忍術、潜入術など……。
 それらを一括りにして『武技』と呼ぶこともある。

 武技を発動する際にその名前を叫ぶことに意味はあるのか?
 もちろん、ある。
 技の名前を発することでイメージの明確化を促し、発動時に必要な闘気や魔力の負担を軽減する効果があるのだ。
 決して、『なんとなく格好良さそうだから』というだけで叫んでいるわけではない。

「はい! 高志様、私に教えて下さい! 『いんびじぶる・いんすぺくしょん』の効果は説明していただきましたが……。脱出時に使われていた『でっどりぃ・みすていく』も気になります! もちろん、他の必殺技も!」

「うん! オレも知りたい!」

 紅葉と流華が目を輝かせる。
 城から逃亡する際に使った技も、彼女たちに聞かれていたようだ。
 苦し紛れの目眩まし技だが、彼女たちからは高評価らしい。
 ここは他の必殺技も披露して、2人からの忠義度を稼ぐチャンスだな。

「いいだろう。ならば、最近編み出したばかりの必殺技を見せよう」

「おおっ! さすがは高志様! どんな必殺技なのですか?」

「楽しみだなぁ! 兄貴、早く見せてくれよ!」

 2人から期待の声が上がる。
 ふっ……。
 そんなに期待されると、ちょっと緊張するな。

「よし、いくぞ! ぬうううぅっ! 【エンプフィントリヒ・ユングフラウ】!!」

 俺は必殺技を発動する。
 俺の身体が、神々しく輝く!

「わぁ……! 高志様、なんてお美しい……!!」

「す、すごい……! 兄貴、めちゃくちゃ格好良いよ!」

 紅葉と流華から感嘆の声が漏れる。
 2人とも目を輝かせて、俺を見ていた。

「ふふふ……。どうだ、俺の必殺技は? この『エンプフィントリヒ・ユングフラウ』は、自己強化系の魔法だ。防御力が下がる代わりに、他者の魔力や闘気の動きに対する反応性が良くなる。慣れれば、戦闘中に敵の動きを先読みすることも可能になるだろうな」

「なるほど……! 高志様、さすがです!!」

「あれ? でも……」

 紅葉が感心する。
 一方で、流華は首を傾げた。

「ん? どうした――あっ」

「兄貴の光が……消えた」

 そう。
 新武技『エンプフィントリヒ・ユングフラウ』の効果時間は短い。
 いや、俺が発動した場合の効果時間は短い……と言った方が正確か。

「この必殺技は、実験的に開発していた魔法なんだ。効果を引き上げるため、とある制約を組み込んである。だから、俺が発動した場合の効果や発動時間はイマイチでな」

「そうだったのですか……。ちょっと残念です。……ちなみに、その『制約』とは?」

「ああ、それは……」

 紅葉の質問を受け、俺はすぐに答えようとする。
 だが、思い直した。
 いたずらごころがムクムクと湧き上がってきたからだ。

「紅葉、それに流華。お前たちにこの技を伝授しよう。頑張って習得してみないか?」

「え? わ、私たちが……ですか?」

「兄貴みたいな必殺技をオレが……?」

 俺の問いかけに、紅葉と流華は戸惑った表情を浮かべたのだった。

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