【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1467話 誰かいる

「うーん、やっぱり妙だよねぇ……」
「うん。なんか、ふんどしの山の下に誰かいる気がするんだよねー」
「えっ? そんなまさか! ただの行李の中に人が入ってるわけないじゃん! やる意味ないし!」
「でもさ、サイズ的には一応入れるし……。それに、このふんどしの山は明らかにおかしいでしょ? まるで、誰かがそこに隠れているみたいな……」

 少女たちは行李の中身を改めて確認する。
 そして、何者かの存在を確信し始めたようだ。

(落ち着け……落ち着くんだ……)

 俺は心臓の鼓動を懸命に抑える。
 こういう時こそ冷静にならなければいけない。
 俺の『インビジブル・インスペクション』は完璧ではないものの、強力だ。
 単に『衣類の山の中に隠れている』という状況と比べれば、見つかる確率は少しだけ低めである。
 諦めたらそこで試合終了……。
 希望を捨てるのはまだ早い。

「どうする? 中を確認しちゃう?」
「そうねぇ……」

 少女たちの会話が不穏な方向に進んでいく。
 このままではまずい。
 だが、今の俺は身動きが取れない状態だ。
 どうする?
 どうすればいい!?

(くっ……! こういうときこそ、深呼吸だ! 深呼吸……!)

 俺は心を落ち着けようと、大きく息を吸う。
 そして……。

(うっ!?)

 その瞬間、ふんどしの甘い香りが鼻腔に広がった。
 ふんどしは、若い女性の下着である。
 つまり、その香りには女性のフェロモンがたっぷりと染み込んでいるのだ。
 そして今、俺はふんどしの山に隠れている。
 その香りを間近で吸い込むことによって、フェロモンが……。

(うぉぉぉぉぉっ!!)

 俺は鼻から大きく息を吸った状態から、しばらく停止していた。
 ふんどしの香りは強烈で、頭がくらくらする。
 そして何より……俺の息子が反応してしまった!!

(静まれぇぇぇぇっ!!)

 俺は息子をなだめる。
 今は緊急事態なのだ。
 そんな余裕はない!
 だが、本能というものは厄介だ。
 一度反応した息子は、なかなか大人しくなってくれない!!

「ねぇ……。やっぱり、この行李の中に誰かいるよ! 間違いない!!」
「確かにそんな気配はするけど……。どうして間違いないの?」
「ほら、あそこ! 山が崩れて……侍装束が少しだけ見えてる!」
「えっ!? ほんとだ!!」

 少女たちが騒ぎ始める。
 なんということだ……!
 身を隠すのに十分な量のふんどしがあったはずなのに、その一部がついに崩れてしまっていたらしい。

(まずい! これは、非常にまずいぞ……!?)

 俺は焦る。
 このままでは、彼女たちに見つかってしまう。
 いや、もうすでに見つかったようなものだ。
 あとは、彼女たちから見えている侍装束のあたりから発掘され、俺という侵入者が白日の下にさらされるだけ……。
 だが、俺はまだ諦めない!
 最後の最後まであがき続けてやる!!

(ワンチャンだ……。『なんだ、侍装束が混じっていただけじゃん』となる可能性がなくもない……! 徹底的に静かにして、気づかれないようにするんだ……!)

 俺は息を潜める。
 ふんどしから発せられる甘い香りに耐えつつ、俺は『インビジブル・インスペクション』を維持し続けるのだった。

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