【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
1456話 美帝【ミティside】
記憶喪失のタカシが桜花城の城下町を目指している頃――
「ぬうううぅっ! どりゃあああっ!!」
ヤマト連邦『中煌地方』にある藩の一つ、暁紅(ぎょうく)藩で、女性が唸り声を上げていた。
外見年齢は10代前半から中ごろといったところだろうか。
やや幼い印象を受ける。
「お、おい嬢ちゃん! 無理するな!!」
「そうだ! やめておけって!!」
周囲の者が声を揃えて言う。
彼らは彼女のことを心配していた。
彼女は今、拳を振り上げていた。
それを振り下ろそうとしている先は、巨大な岩石。
その硬度は鉄にも匹敵するかもしれない。
とても人の手で破壊できるものとは思えないが……。
「これぐらい大丈夫です! はあああぁっ! 【爆砕天穴(ばくさいてんけつ】!!」
彼女は裂帛の気合とともに、岩石に拳を叩きつけた。
ドガンッ!!
爆音が響く。
彼女の拳が砕けたわけではない。
岩石が木っ端微塵に砕けたのだ。
「す、すげぇ……」
「道を塞いでたあの大岩を、一撃で……」
「何者なんだ、あの子……?」
周囲の者たちは思わず目を見張る。
そんな彼らに、彼女は涼やかな笑顔で告げた。
「私の名はミ――いえ、美帝(みてい)です」
「み、みてい……?」
「美しい帝王という意味です。美しく育つようにと、そう名付けられたのです」
彼女は誇らしげに胸を張る。
もちろん、適当な嘘だ。
彼女の本当の名はミティ=ハイブリッジである。
だが、ヤマト連邦で本当の名を名乗ると、異国人であることがバレるかもしれない。
一方、はぐれてしまったタカシたちと合流するためには、完全な偽名を使うのも避けたかった。
そのため、ミティはとっさに思い浮かんだ『美帝』という名前を名乗ることにしたのである。
(タカシ様はご無事でしょうか……。あの謎の記憶が流れてきてからというもの、共鳴水晶の反応もありませんし……)
ミティは内心で気を揉む。
彼女は今、タカシと離れ離れになっていた。
海上で行動していた際に、ジャイアントクラーケンと遭遇してしまったのが直接的な原因だ。
ジャイアントクラーケンを引き付けるため、タカシは一人で囮役を務めてくれた。
ミティは彼を助けに行きたかったのだが、海上では彼女の怪力も活かしづらく……。
結局、その場は彼に任せたのである。
海上で別行動をとることに不安はあったが、魔道具『共鳴水晶』があるためどうにか合流できると思っていた。
実際、タカシはミティたちに少し遅れて『九龍地方』の『佐京藩』に上陸しており、それは確認できている。
だが、『霧隠れの里』のカゲロウの転移妖術により、ミティたちはヤマト連邦中に散り散りにされてしまった。
さらに畳み掛けるように、謎の記憶が流れ込んでくるという事件が起きる。
タカシから発せられる共鳴水晶の反応は、その謎の記憶が流れてからはぱったりと消えてしまった。
おそらく、何かトラブルがあったのだろう。
このままやみくもにタカシを探し続けた方がいいのか?
あるいは、共鳴水晶で方向や距離の分かる他の仲間との合流を優先した方がいいのか?
ミティは決めあぐねていた。
「……ところで、このあたりはヤマト連邦の中心付近ということでしたね?」
「ああ、地理的にはそのはずだぜ。ま、歴史や経済の中心は別の地方だけどな」
ミティの問いに、周囲の一人が答える。
ヤマト連邦は、ざっくり言えば地球の日本列島に近い形をしている。
中煌地方は中部地方にあたり、暁紅藩は岐阜県のあたりだと認識して大きな問題はないだろう。
地理的には真ん中付近に位置していると言える。
「では、このまま私の名声を高めていくとしましょう。この美帝の名が、いずれは列島全体に轟くように」
「お、おう……」
ミティが宣言すると、周囲の者たちはやや困惑気味に頷いたのだった。
「ぬうううぅっ! どりゃあああっ!!」
ヤマト連邦『中煌地方』にある藩の一つ、暁紅(ぎょうく)藩で、女性が唸り声を上げていた。
外見年齢は10代前半から中ごろといったところだろうか。
やや幼い印象を受ける。
「お、おい嬢ちゃん! 無理するな!!」
「そうだ! やめておけって!!」
周囲の者が声を揃えて言う。
彼らは彼女のことを心配していた。
彼女は今、拳を振り上げていた。
それを振り下ろそうとしている先は、巨大な岩石。
その硬度は鉄にも匹敵するかもしれない。
とても人の手で破壊できるものとは思えないが……。
「これぐらい大丈夫です! はあああぁっ! 【爆砕天穴(ばくさいてんけつ】!!」
彼女は裂帛の気合とともに、岩石に拳を叩きつけた。
ドガンッ!!
爆音が響く。
彼女の拳が砕けたわけではない。
岩石が木っ端微塵に砕けたのだ。
「す、すげぇ……」
「道を塞いでたあの大岩を、一撃で……」
「何者なんだ、あの子……?」
周囲の者たちは思わず目を見張る。
そんな彼らに、彼女は涼やかな笑顔で告げた。
「私の名はミ――いえ、美帝(みてい)です」
「み、みてい……?」
「美しい帝王という意味です。美しく育つようにと、そう名付けられたのです」
彼女は誇らしげに胸を張る。
もちろん、適当な嘘だ。
彼女の本当の名はミティ=ハイブリッジである。
だが、ヤマト連邦で本当の名を名乗ると、異国人であることがバレるかもしれない。
一方、はぐれてしまったタカシたちと合流するためには、完全な偽名を使うのも避けたかった。
そのため、ミティはとっさに思い浮かんだ『美帝』という名前を名乗ることにしたのである。
(タカシ様はご無事でしょうか……。あの謎の記憶が流れてきてからというもの、共鳴水晶の反応もありませんし……)
ミティは内心で気を揉む。
彼女は今、タカシと離れ離れになっていた。
海上で行動していた際に、ジャイアントクラーケンと遭遇してしまったのが直接的な原因だ。
ジャイアントクラーケンを引き付けるため、タカシは一人で囮役を務めてくれた。
ミティは彼を助けに行きたかったのだが、海上では彼女の怪力も活かしづらく……。
結局、その場は彼に任せたのである。
海上で別行動をとることに不安はあったが、魔道具『共鳴水晶』があるためどうにか合流できると思っていた。
実際、タカシはミティたちに少し遅れて『九龍地方』の『佐京藩』に上陸しており、それは確認できている。
だが、『霧隠れの里』のカゲロウの転移妖術により、ミティたちはヤマト連邦中に散り散りにされてしまった。
さらに畳み掛けるように、謎の記憶が流れ込んでくるという事件が起きる。
タカシから発せられる共鳴水晶の反応は、その謎の記憶が流れてからはぱったりと消えてしまった。
おそらく、何かトラブルがあったのだろう。
このままやみくもにタカシを探し続けた方がいいのか?
あるいは、共鳴水晶で方向や距離の分かる他の仲間との合流を優先した方がいいのか?
ミティは決めあぐねていた。
「……ところで、このあたりはヤマト連邦の中心付近ということでしたね?」
「ああ、地理的にはそのはずだぜ。ま、歴史や経済の中心は別の地方だけどな」
ミティの問いに、周囲の一人が答える。
ヤマト連邦は、ざっくり言えば地球の日本列島に近い形をしている。
中煌地方は中部地方にあたり、暁紅藩は岐阜県のあたりだと認識して大きな問題はないだろう。
地理的には真ん中付近に位置していると言える。
「では、このまま私の名声を高めていくとしましょう。この美帝の名が、いずれは列島全体に轟くように」
「お、おう……」
ミティが宣言すると、周囲の者たちはやや困惑気味に頷いたのだった。
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