【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1432話 増税

「うっぷ……。ふ、ふざけやがって……」

 最初の団子を食い終えた少年は、俺を睨みつけた。
 叫びだしそうな雰囲気はそのままである。

「次は白いソースがかかった団子を食うといい」

「あ? 食うわけねぇだろ。そんな得体の知れねぇモン……」

「遠慮するな。お前のために追加で頼んだものだ。残したらもったいないだろうが」

「むぐ!? お、おごっ!!」

 俺は少年の口を無理やり開かせる。
 そして、そこに白いソース付きの団子を突っ込んだ。

「あぐぐ……。んぐ……。んぐ……」

「どうだ? うまいだろう?」

「……団子は悪くはねぇ。だが、この白いやつは……。ちょっと変な味が……」

「好き嫌いは良くないぞ。全てを飲み干せ」

「んぐっ!? ううっ!!」

 俺は少年の口に手を当て、強引に白いソースを飲ませる。
 少年は抵抗しようとするが、俺はそれを許さなかった。

「おごっ……。うげ……」

「よし。全部飲み干せたな」

 俺は少年の口から手を離す。
 そんな俺に、少年は怒鳴った。

「こ、この野郎!! てめぇ、何しやがる!?」

「食べ物を無駄にするわけにはいかないからな。このあたりは不作で困っている人も多いらしい。せっかくの団子を残すなんて、もってのほかだ」

「……ちっ」

 少年は大きく舌打ちをする。
 そして、俺を睨んだ。

「別に……不作なわけじゃねぇ。城下町じゃ、食料に困ってるヤツなんて一人もいやしねぇよ。それに、この街の侍連中もな」

「ふむ? そうなのか?」

「ああ。けど……」

 少年は悔しそうに言う。
 彼は言葉を続けた。

「オレたちみたいな子どもには、まともな食いモンなんて回ってこねぇ」

「ん? どういうことだ?」

「詳しいことは知らねぇ。税がどうとか、年貢がどうとか……。ここ最近、負担が増え始めた。そしてそのしわ寄せは、下っ端のオレたちに回されるわけだ」

「なるほど。そういうことか」

 俺は納得する。
 この少年は、おそらく孤児だったりするのだろう。
 そんな彼が俺の財布を盗んだ理由は……まぁ、想像に難くない。
 生活苦だ。

 おそらくだが、桜花藩の藩主が大幅な増税でもしたのだろう。
 その影響は、まずは侍や大商人などの上級階層に及ぶ。
 だが、彼らはその負担を中級階層に押し付けることが可能だ。
 中流層はそれなりに苦しむことになるが、その負担の一部は下級階層に回される。
 最終的に最も困るのは孤児などの末端層……というわけだな。

「お前に同情する気はない。だが、事情は分かった」

 俺は少年の頭に手を置く。
 そして、ぐしゃぐしゃと頭を撫でた。

「なっ!? て、てめぇ! 何しやがる!!」

「お前みたいなガキは嫌いじゃない。俺の財布を盗んだことは許してやろう」

「はぁ!? お、おい! ふざけんな! オレを子ども扱いすんじゃ……」

「だが、スリは犯罪だ。そのことは忘れるな」

「うぐ……!?」

 少年は言葉に詰まる。
 俺はさらに続けた。

「食うに困って餓死するよりは、マシな選択かもしれない。しかし、いつまでもこんなことを続けられると思うな。……いいな?」

「わ、分かったよ! もうしねぇって!!」

 少年は叫ぶように言う。
 そんな彼の頭を、俺はもう一度くしゃっと撫でた。
 とりあえず、これで一件落着か?
 根本的な解決には至っていないが……。
 これも何かの縁と思って、多少の金銭援助でもしてあげようか。
 俺がそんなことを考え始めたときだった。

「そこまでだ! 大人しくせよ!!」

「ん?」

 突然、そんな声がかけられる。
 声の方を見れば、そこには数人の侍たちがいたのだった。

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