【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1431話 スリの少年 流華

 紅葉が団子のおかわりを食べようとしたときのことだった。

「よ、ようやく見つけたぞ!!」

「ん?」

 そんな声が、俺たちにかけられた。
 声がした方を見る。
 そこには、一人の少年が立っていた。

「お前は、さっきの……」

 俺は少年に話しかける。
 彼は顔を真っ赤にしながら、俺を睨みつけた。

「てめぇ……! よくもやってくれたな!!」

「おやおや……。何の話だね? 心当たりがまるでないな」

 俺はすっとぼける。
 そんな俺に、少年はさらに詰め寄ってきた。

「おちょくってんのか!? 財布の中に……こんなモン、入れやがって!!」

 少年は懐から何かを取り出す。
 それは、彼が俺から盗んだ財布だった。
 その中には、『ハズレ』と書かれた紙切れが入っている。

「ほう? これは驚いたな。俺の財布じゃないか。いやぁ、まるで気付かなかった。いつの間にか、俺の懐から財布が消えていたとは……」

「白々しいぜ! このクソ野郎が!!」

 少年は顔を真っ赤にして怒鳴る。
 そんな彼に、俺は言った。

「スリをしておいて、ハズレを掴まされたと逆ギレか? 盗みは犯罪だ。出るところに出てもいいんだぞ」

「うぐ……!?」

 少年は言葉に詰まる。
 言ってみれば当たり前のことだ。
 犯罪をした方が『盗んだ財布に大したものが入っていなかった』と怒るのは理不尽。
 出るところに出れば、彼は確実に負けるだろう。

「うるせーよ!! てめぇだって、オレの財布をスリ返しただろうが! 誤魔化せると思ったら大間違いだ!!」

「やれやれ……」

 俺は首を振る。
 そんな俺を、紅葉が不安そうに見ていた。

「高志様……」

「大丈夫だ。心配ない」

 俺は紅葉に微笑みかける。
 そして、少年に向き直った。

「まぁ、落ち着けよ。怒ってばかりじゃ、疲れるだろう?」

「はぁ!? てめぇ……! ざけんじゃねぇぞ!!」

「ふざけてなどいない。……そうだ、団子でも食べて落ち着け。うまいぞ」

「なっ……!?」

「遠慮するなって。ちょうど臨時収入があったんだ。金には余裕がある」

「だからっ! そもそもそれはオレの金だっつーの!!」

 少年は怒鳴る。
 そんな彼に、俺はさらに団子を勧めた。

「まぁ、そうカッカするなよ。ほら」

「だからっ!! 人の話を聞け!!!」

「ふむ。……仕方がないな」

 俺はため息をつく。
 いくら言っても、少年は怒鳴るばかり。
 これでは、通行人たちの注目を集めてしまう。

 今の俺はまだお尋ね者などではない。
 だが、鎖国中のヤマト連邦への侵入者ではある。
 それに、近い内に桜花城を攻め落とす予定もある。
 無闇に目立つのは避けたい。

「この流華(るか)様を舐めた報いは、必ず――」

「ごちゃごちゃうるせえ! いいから食え!!」

「むごっ!? んんーっ!!」

 俺は少年の口に団子を突っ込み、強制的に黙らせたのだった。

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