【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1417話 桜花藩への距離

「かなり遠いな……」

 俺はつぶやく。
 それを聞いたカゲロウが、大きくうなずいた。

「そうなのだ……。ここから桜花城まで、かなりの距離がある。千里とまでは言わぬが、軽く百里以上は離れているだろうな」

「百里以上か……」

 俺は思わずうなる。
 彼女が言う『里』とは、ヤマト連邦における距離の単位だ。
 先ほど聞いた話によると、一里はおよそ4kmだと思われる。
 百里は、おおよそ400kmだな。
 地球の日本において、佐賀県と大阪府の直線距離はおよそ500kmほどだったはず。
 この世界の大和連邦における佐京藩から桜花藩までの距離感も、同じようなイメージになりそうだ。

「百里なら、徒歩で10日間ぐらいの距離か……?」

 俺はつぶやく。
 江戸時代の人は、一日あたり30~40kmを移動したという話を聞いたことがある。
 時速4kmで8~10時間ほど歩くイメージだな。

 この世界においても、一般人の移動速度は同じくらいか少し速い程度だろう。
 少し速い……というのは、この世界には闘気や魔力という不可思議な力があるからだ。
 同じ一般人同士を比較しても、こちらの世界の住人の方が身体能力がやや高く、それに伴って移動速度も向上すると思われる。
 一日あたり50kmぐらい移動できても不思議ではない。

「いえ、十日間での到着は難しいでしょう」

「どうしてだ? イノリ」

「順路の問題です。ここから桜花藩に向かうためには、まずは海を渡る必要があります」

「ふむ……。その通りだな」

 俺はもう一度、先ほどのメモ書きに視線を向ける。


            北北
           北北北北
           北北北北
           北北

           北北
          北北北
          北北北
         中中北北
        中中中漢漢
現九九 重重近近中中中漢漢
九九九 重重近近近中中漢漢
 九九    桜近中中
 九九 四四 近近
 九九 四四

現……現在地
桜……桜花藩


「確かに、海路には危険もあるだろう。だが、それは陸路も同じ。海路だけを過度に危険視する必要はないのでは?」

「油断は禁物です。異国の海は知りませんが、大和連邦の海は危険でいっぱいですので」

「ふむ……。イノリが言うなら、そうなのだろうな。北回りや南回りで『近麗』に直接向かうのは避けた方がいいか……」

「ええ。荒々しい自然が残る『重郷地方』か、四つの聖なる山がそびえ立つ『四神地方』か。そのどちらかを選択せざるを得ません」

 イノリはそう説明しながら、地図を指し示してくれた。
 現代日本で言えば……。
 九州から中国地方を通って近畿地方に向かうか。
 九州から四国を通って近畿地方に向かうか。
 そのどちらを選ぶかという話だ。

「どっちがオススメだ?」

「どっちもお勧めできんな」

 俺の問いに、カゲロウが即答する。
 彼女は地図を睨みつけていた。

「イノリ殿が言った通り、大自然や聖山が待ち受けている。慣れた侍ですら遭難する危険がある。それに……」

「それに?」

「それぞれの藩主が黙っておらん。高志殿は、異国からの侵入者だからな。顔立ちだけで看破されることはないだろうが、少しばかり雑談でもすれば、すぐに怪しまれてしまう」

「まぁ、そうなるな……」

 俺は素直にうなずく。
 黒髪黒目の俺は、ヤマト連邦の住人と近い顔立ちをしている。
 ヤマト連邦には鎖国以前から住んでいるエルフなどもいるし、顔立ちだけで異国人だとバレることはないだろう。
 しかし、ふとした雑談が命取りになったりする可能性は高そうだ。

「どうすればいいんだ……」

「任せろ。私に策がある」

 頭を抱える俺に対して、カゲロウが胸を張ったのだった。

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